第24話 魔法の修業の仕方が他の人と違うみたいでしたね
時は、ニャマとサリーナが魔法球を買った日の夜まで遡ることになる。
彼女の買った魔法球は[創水][送風][風弾][水弾][収納]の5個、すなわち今ニャマが使える魔法はこの5種類となる。
その日の夜は、魔法を覚えていたためテンションが上がり、サリーナと一緒に攻撃魔法ではない魔法を寮で使って色々試していた。
ニャマは[収納]の魔法を使ってみた。手から無の属性である灰色の魔方陣が現れて、掌の先に灰色の球体が浮かび上がると、頭の中に[収納]の中に何が入っているのか分かるようになる。
そして、取り出したい物と掴む場所を選んで、灰色の球体に手を入れて引き抜くと選んだものが出てくるという仕組みだ。
「サリーナは[収納]どれ位入った? わたしは10kgぐらいだったよ」
「私も一緒位だよ。これなら、サブ武器に旅の小道具は入れられそうだと」
「うん。それだけでも随分助かりそうだね」
ニャマは、続いて[創水]の魔法を使ってみる。掌から水の属性である青色の魔方陣が現れて、掌の先に直径30cm程の水の球体が現れた。
その球体は、魔力を入れ続ける限り存在し、魔力を切ると下に落ちることなく霧散してしまうので、飲料水には出来ない。
「う~ん。買ってみたは良いけど、この魔法何に役立つのかな」
「相手を窒息させるとか?」
「出来るけど、斬った方が早いと思うね」
「ニャマならそっちの方が早いか」
「でも、水出すだけでも面白いからいいかな」
そうして、その日は限界まで[創水]を使ってからベットに潜った。次の日思ったより快眠していたことに気が付いた。それから、その日以降は寮で寝る際に[創水]を限界まで使ってから寝ることが日課になった。
それから暫くして、ただ[創水]を使うだけではつまらなくなってきた。[創水]を使っている間は暇つぶしも出来ないので、ただ水の球を眺めているだけなのだ。
「水の球見てるのも飽きたなぁ。他の形に出来ないかな?」
それから、ニャマの試行錯誤が始まった。
「[創水]の形を変えるには【制魔】の技能を覚えると宜しいですわ。【制魔】は魔法の効力を変えることが出来る技能なのですが、実践向きではありませんわ」
まずリシェルに聞くとそう答えてくれた。【制魔】が実践向きではないのは、効力を変えることによって変わる魔方陣の展開の遅さが致命的であるからだ。少し射程を長くするだけで普通に撃つより十倍の以上の時間がかかってしまう。
「まあ。使うのは[創水]だから、気にしないわ」
「[創水]でなにをしておられるのですか?」
リシェルは、あまり使わない魔法なので、何に使っているのか興味を持った。
「それを限界まで使って寝ると安眠できるの。魔法は何でも良いと思うけど、わたしは創水を使っているの」
「魔力を限界まで使うと安眠できるですか。あの系統の魔法にそんな効果があったのかしら? わたくしも[創土]を持っておりますから試してみますわ」
翌朝。朝から元気なリシェルがニャマの元に来て開口一番
「本当に安眠出来ましたわ! これは素晴らしい事を聞きました、ありがとうございますですわ」
「よかったね。だけど、ずっと水玉を見てるのは暇だから何か形を変えられないかと思ってね」
「成程、だから機能の質問でしたのね。行くり形が変わっていくのを見るのも面白そうですわね。わたくしも暇があればやってみますわ」
「うん。お互い頑張ろうね」
形を変えるのに必要な【制魔】は魔法ではなく技能だ。魔法は自力で覚える事例は数例しかなく、魔法球から覚えるのが通例だ。
しかし、技能に関しては、自力で覚えることが出来し、技能球と呼ばれる物でも覚えることが出来る。
技能球における【制魔】は、最上級ダンジョンの激レアで、中々でない上に使い道が少ない大外れドロップだったりする。
ニャマとリシェルは寮で寝る日は毎晩、限界まで[創水]や[創土]を使いながら形を変えようと苦労していた。
「う~ん。うねうねと動くようにはなったけどそれだけだったね」
「わたくしも同じ感じですわね。思ったより難しいですわね」
「後分かったけれど、うねうね動くと発動中の魔方陣も少し変わった気がするのね」
「え? それは気が付きませんでしたわ。今日の夜にも確認しておきますわ」
「でも、ゆっくりだけど、動かすことが出来たから楽しくなって来たね」
「ええ、魔法学院でも安眠に良いなんてそんなことは教えていませんから、魔法を使うのが面白くなってきましたわ」
実際、何処の魔法学院でもこんなことは教えていない。教えていたのは【制魔】の難しさや実験や研究向きで、実戦向けではないという事で、覚えると魔法に変な挙動や魔方陣構成の時間が増えるなどのデメリットが多いので、安易に覚えるなと教えられていた。
また、【制魔】は、発動前に魔方陣を変更してから魔法を放つ技能であると教えられていて、決して発動中の魔方陣の構成を変える技能ではないという事に二人は気が付いていなかった。
彼女達の試行錯誤は、秋冬と超え勇者が召喚される春先まで続いた。その成果は、魔法の常識が変わる物だったが当時の二人は知る由もなかった。
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