第23話 新しい武器は使えるのを選びたいですね
「得意だった剣が両手剣だから、そろそろ新しい剣が欲しいね」
「あ~ニャマはずっと短剣のままだしね。私は良い小剣見つけたから買っちゃったよ」
冒険者ギルドの報酬から返済金を引かれた余りの金は、この三ヵ月で大分貯まっていたが、必要経費で返済金に上乗せされている金額は最初より多くなっている。
ニャマとサリーナは暫くは派遣冒険者として生活する心算なので、最低限の返済金を返していくだけで良いと思っている。
「じゃあ、今日は鍛冶屋通りを回ってみるからね」
「わかったわ。いってらっしゃい」
今日は、サリーナは指定依頼でダンジョンへ日帰りで行くことになっているし、リシェルも数日かかる指定依頼で外出中だった。なのでニャマは、一日中手が空いていたので鍛冶屋巡りに行くことにしたのだ。
行くのは鍛冶屋なので着飾ることもなく、冒険者の装いで鍛冶屋通りに向かう途中で見知った人物が声をかけてきた。
「にゃ? ニャマじゃにゃいかな? こんなことろに今日はどうしたのかにゃ? 武器の修理かにゃ? それとも、武器を新調するのかにゃ?」
「ミリム、こんにちは。今日は武器を新調しようかと見に来たのです」
「なるほどにゃ。あたしも今日は空いてて暇だからにゃ、付き合うにゃ」
「ええ、かまいせんよ。色々鍛冶屋を巡ってみるつもりです」
「わかったにゃ。じゃ一緒に行くにゃ」
今日も三毛髪が目立っているミリムと連れ立って鍛冶屋通りに入ると、今までの街の雰囲気が一変し、武骨な石の家に金槌で金床を叩く音が聞こえてきた。
猫人族は耳がいいので、カンカンと叩く音が耳に響いてくる。その音はニャマにとって慣れない音だった。それはミリムも同じようで
「いつ来てもやかましいにゃ。耳が良いのも考えものだにゃ」
「そうですね。うるさいですよね」
「耳が馬鹿になりそうだけどにゃ、生活を支える人たちだからにゃ、我慢するにゃ」
そう言ってミリムは帽子を被る、その帽子は耳穴が開いていなくて猫耳をすっぽりとかぶせる形の帽子だった。
「街中だしにゃ。こういう帽子があれば便利だにゃ」
「あ、いいですね、その帽子。後で売ってる店教えてください」
「いいにゃ。でもまずはニャマの武器さがしにゃ」
「ええ」
そうして、二人で鍛冶屋の商品を見て回ることにした。
鍛冶屋通りを歩きながら、ミリムが訪ねて来た
「にゃ? そういえばにゃ、ニャマは何お武器を探しているのにゃ?」
「両手剣ですね。村の方ではそれを使ってましたよ」
「両手剣にゃ? 猫人族じゃ珍しいにゃ。大体、片手剣か短剣だにゃ。わたしみたいに二刀流も多いにゃ」
「そうなんですか? お父さんの剣技を真似していたからかな」
「お父さんも冒険者なんにゃ」
「お母さんもそうらしいです。もう引退して、村で畑耕したり、狩りに行ったりしていますね」
「おお~結婚して冒険者引退したのにゃ。憧れるにゃ~」
「ミリムさんの親はなにしていたのです?」
「あたしの両親は港町の漁師だったにゃ。今も元気にしていると思うにゃ」
「よかった、元気そうなのね。魚師かぁ。お魚は美味しいけど、なかなか食べられないのよね」
「うんうん。ここは良い街だけどにゃ、それだけは頂けないにゃ」
「「お魚食べたいなぁ」にゃ~」
ニャマとミリムは同時につぶやいた。
そんな風に駄弁りながら武器を探しながら歩いていると、ニャマはある武器に注目する。
「あれ? この武器?」
ニャマが気になった武器は鍛冶屋の片隅に置かれている片手剣で、ニャマが欲しい剣ではなかったが、ふと自分の持っている短剣を見比べてみる。
「あ、この片手剣と短剣を作った人は一緒かな?」
さらに見比べてみると、剣の柄に同じ文様が掘られているのを見つけた。
その様子に、その鍛冶屋の主人らしき小人族でひげ面の親父が口を開いた。小人族は、別名ドワーフとも言われている。
「おう、その武器に興味あんのか? 出来は良いが、まだ見習が作った武器だぞ」
「あ、まだ見習なんですね」
そう言ってニャマは、その見習の短剣を見せて手に入れた経緯を説明した。
「おおう、最初の支給品で貰ったとか珍しいこともあるんだな。それにあいつの作品を見抜いた目といい気に入ったぞ」
「それで、この人が作った両手剣って無いですか?」
「む? いや、両手剣は素材を多く使うからまだ作らせていないが」
「あら? 残念ですね。あれば、購入してみようと思ったのに」
「その片手剣良い物なのかにゃ? あたしには良く分からにゃいにゃ」
「それより質の良い剣は、幾らでもあるぞ」
「う~ん。この短剣が私にすごく合ってるので、両手剣も合ってくれるかなと。その…… 見習に両手剣作ってもらえませんか?」
「ああ、そう言うなら、そいつに会ってみるか? 返事次第では作ってやらんこともない。そろそろあいつも大きい物を作らせても良いだろう」
「会います、会わせてください」
「そうか、ならこっちだ」
小人族の親父に付いて工房に行くと、何人かが鍛冶をしている風景が見られた。その内の一人に親父は呼びかける
「おい、ガーライヤ、お前に客だ」
「うえっ? 客? なんで? 見習いなのに?」
ガーライヤと呼ばれた小人族は、まだ若く髭が生えていなかった。髭が生えないのは小人族では珍しい部類に入る。親父に言われて驚いた後に慌てながら親父とニャマ達の元に来た。
「うちで鍛冶見習いのガーライヤだ。おい交渉が決まったら俺に伝えろ」
親父はガーライヤをニャマに引き合わせると、直ぐに自分の店の方に戻っていった。
「こんにちは、ガーライヤさんでしたか、ニャマと言います」
「えと、ガーライヤです。ところで私に何か用なのでしょうか?」
「はい! ガーライヤさんに私の剣を作って欲しいのです」
「はい? 私の作った剣なら店頭にありますが」
「違うのです。私の欲しいのは両手剣なのです」
「あ~。両手剣ですか、それはまだ無いですね」
ガーライヤは、これは店内の事だと思い、まだ作っても良い許可が下りていない事を黙っていた。
「それは大丈夫ですよ。さっきの親父さんが「返答次第で作らないこともない」といってましたので、あなたの気持ち次第だと思いますよ」
「え! その言葉、本当ですか! それならば打ちます作らせてください」
「おお、やる気に満ちた目にゃ」
「それでは、お願いします」
「あ、すみません、ニャマさん両手を見せて頂けませんか?」
「ん? 両手?」
「ええ、柄の形状もちゃんとしたいのです。初めてのオーダーメイドで両手剣、これは燃えます!」
「わ、わかりました。どうじょ」
少し噛んだニャマは、両手を見せると、ガーライヤは真剣なまなざしで両手を見ている。
「ん? ここ最近は短剣か小剣辺りを使っていたのですか?」
「良く分かったね。短剣を使っていたよ」
「はい、大丈夫です。貴方に合った両手剣を必ず作って見せます」
「楽しみに待ってるね。これからもよろしくね」
「では、私は親方の所に行って許可貰ってきます!」
「まって、わたし達も行くから」
テンション上がって、直ぐに店の方に歩き始めたガーライヤを二人は追いながら店の方に戻って行った。
そして、数日後出来あがった両手剣は、ニャマにとって素晴らしい剣になったが、同時に渡された請求書は、思っていた予算を超えていて返済金が増えたのは予想外だった。
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