第21話 ニャマ達の休日2 装飾品なんて木彫り位だと思っていたのね
服飾店を出て次にニャマ達が向かったのは、服飾店と同じ通りにある装飾店だった。
リシェルが言うには、同じ通りには同レベルの店が並んでいるものらしい。
「貴族御用達の店の間に平民用の品ぞろえの店が有ってもだれも買わないでしょ。逆もそうですわね」
「でも、貴族の屋敷にも使用人がいるけど」
「使用人が買うような品ぞろえの店が集まっている所がありますわよ」
「必要な場所にちゃんと店があるって事ね。村だと行商人が来ないと物が中々買えなかったね」
「うんうん、だからここにきて最初は買い物って感覚が中々湧かなかったわ」
「そうなのね。逆に公爵の様な位の高い貴族も買い物はしないそうですわ。欲しい物は全部取り寄せるのですわ」
「へ~、お店の方が来ちゃうのね」
ニャマはうんうんと頷いた後、何かを思い出したように
「ねえ、そういえば、村には装飾品ってなかったよね。精々手作りした木彫りの細工位だよね」
「お母さんがそこそこ上手かったから、木彫りのブローチ一つ作ってもらって、いつも懐に入れているけど、勿体なくてつけられないのよ」
「あら? 親愛の証に手作りの品を送るのは良いですわね。少々サリーナが羨ましいですわ」
「うぇ! そうなのかな。私にとってはお守りみたいなものだから」
「何時か、お二人にもわたくしの手作りをお贈りしたいですわ」
ある意味この一言がリシェルの人生に多大な影響を及ぼすとは今のだれにも分からなかった。
リシェルが選んだ装飾店はやはり服飾店と同じ感じの店だった。店内は落ち着いた雰囲気になっており。ガラスケースには、小さな宝石をあつらった銀細工や指輪などが展示されていた。
「このお店は、値段はそこそこでも、わたくしの好きな細工のお店ですわ。お二人に合うと良いのですが」
リシェルもそこ迄王都の店に詳しくはない。服飾店もそうだがリシェル個人が気に入っている店を紹介しているが、二人は王都の買い物は初めてなので、これから店を回って気にいった所を見つけていけばいいだろうと思っていた。
「わあ、細かいし綺麗だね。銀みたいだけどこんな風になる物なんだね」
「うんうん。こういう装飾品って村では村長のお母さんがお祭りの時にしてたのを見た気がするよ」
「本当に、わたくしの領から中立地帯を北に抜けた所は何もないのですね」
「ん、改めて地図を見ると、殆ど魔の領域に取り囲まれているもの、交通も便も悪よね」
「南に行くにも西に行くにも、中立地帯があるのでしたわね」
「北と東は魔獣の領域だしね」
ニャマの住んで居た村を含む一帯を治める貴族は居ない。トアル王家直轄地だった。
理由としては、十数年前にこの一帯を支配していた魔の宝珠を生命の宝珠に浄化した召喚勇者は、この地をトアル王家に返上した。
普通ならば、領地を持っていない貴族に返上された領地を与えるのだが、完全に飛び地になっていて何が在るのか不明な領地を欲しがる貴族は皆無だった。
ゆえに王家はこの地を直轄地として代官を置き、入植者を募集したのだ。ニャマの両親は冒険者引退を考えていた時にその募集を見て参加したのだった。
今年の様な事が起きなければ、自給自足が出来る平和なド田舎という風景が広がっている。
「そういうことは置いておきまして、装飾品を見ていきますわ」
「どんな感じの物がいいのかな」
「そうですわね…… イヤリングはニャマには無理ですわね」
「あはは、二人の様な耳無いものね。この猫耳に合うものなら良いかも知れないけど」
ニャマは見本のイヤリングを見ている。サリーナはその脇でそれを見ているが、形からどうやって耳に付けるのか分からなかった。
「イヤリングってどうやって着けるか分からないよ」
「それならサリーナさんは、付け方を覚得るためにもイヤリングにしてみては如何かしら?」
「う~ん。折角だしイヤリングにしてみるよ。ならニャマは髪留めとかどうかな? それなら耳の位置に付けられると思うよ」
「そうだね、ペンダントやブローチよりもそっちの方が良いかな」
「値段見ていると、そっちは高いしね」
「じゃあ、イヤリングと髪染めで探して似ようね」
「うん」
色々な装飾品を見て一時間程、それぞれ欲しいものが見つかった様だ。
「わたしはこれだよ、銀細工に小さな宝石がはめ込まれた髪留め!」
ニャマが選んだのは、銀細工で花をあしらった髪留めで花の細工の中央に小さなトパーズが光っている物だ。
「ニャマの髪と一緒のローズクオーツのイヤリングにしたよ。綺麗なピンク色で可愛いの」
「あら、考えることは一緒なのですわね。わたくしもローズクオーツとトパーズのイヤリングにしましたのですわ」
二人のイヤリングも銀細工に小さな宝石が埋め込まれた物だった。
宝石が小さいためそれ程の値段ではないが、彼女達の今までの生活からしてみれば十分に贅沢品と言える。
嬉しそうに、自分たちの買った装飾品を見せ合っている二人を見て、リシェルは連れてきてよかったと思ったのであった。
三人が装飾店を出る頃には昼過ぎごろになっていた。
「お腹もすいてきましたしわ。なので、そろそろ軽食でもどうでしょうか?」
「もう昼過ぎだもん、お腹減るよね」
「では、何処に行きます?」
リシェルが喫茶店に効果と提案する前に、サリーナが
「私、食べ歩きと言うものをしてみたい」
「きっちゃ…… 食べ歩きですか? 屋台を回るのです?」
「そうそう、ああいうのって楽しそうだよ」
「そうですわね。わたくしは、屋台周りは行ったことはありませんわね」
「なら、一緒に行こうよ」
「う~ん。ニャマはどう思われますか?」
「わたし? わたしは、屋台でも良いよ」
「そうですか。なら、今日は屋台巡りを致しますわ。わたくしも初めてなので何だか楽しくなってきましたわ」
「じゃあ、屋台通りへ行きましょう!」
「「おー」」
サリーナが音頭を取り二人が相槌を打ってから、三人は屋台通りへと足を運んだ。
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