第20話 ニャマ達の休日1 服飾店に行くのですね

 オーガ討伐の依頼が終わってからは、ニャマの指定依頼の数が多くなった。日帰りの依頼から、数日かかる依頼まで色々だ。特にキース達との依頼が多い。ニャマが空いていたら依頼を頼んでいる様だ。


 そんなわけで、リシェルとサリーナにまともに会えない日が続いていたが、その日は幸いにも三人宛の依頼は無かったために、三人一緒に一日を過ごすことが出来る。


「ふふ、こうして三人が空くのは久しぶりですわ」


 リシェルは奴隷ギルドを出た所で嬉しそうに口元に手をあてていた。

 サリーナもそれに同意して、頷いてから


「うん。確かに二週間ぶりだったよね」


「だね。でも今日はどうする? ダンジョン行く?」


 ニャマは、今日もダンジョン辺りで魔物を狩ろうと提案しようとしたが、リシェルは別の提案をしたい様だ


「そうですわね、この先三人一緒になる事は少なくなっていくと思いますわ。なので、今日はトトリアの散策をいたしませんか?」


「お休みってこと?」


「ええ、今は三人とも順調に稼げていますわ。なので今日は休日にしても良いと思いますわ」


 ニャマは、確かにこれからは偶にしか会えないなら、その時は一緒に楽しむのも良いかも知れないと思い


「毎日休むのは駄目だけど、偶にならいいかな。自由になるお金も貯まって来たからね」


「私も良いよ。トトリアで何して遊ぶの?」


 サリーナとしても、友達と遊びたいのは変わらないが、その町での遊び方が分からない。村だと子供の遊び位しかないし、着飾ることもお祭りの日くらいしかなかったからだ。ニャマもそのことに気が付いて


「あ~。確かに村の遊びとここの遊びは全然違うと思うね」


「なるほど、なら、わたくしがお二人をエスコートして差し上げますわ」


「うん。よろしくね」


(魔法学院の生徒と一緒に街で一日過ごした時は、お買い物と、軽食位でしたから、其れで良いですわ。確かあそこの服飾店と装飾店、軽食はあのとき行った喫茶店にいたしましょう)


 リシェルは軽く今日の計画を建てていた。しかし、元貴族のリシェルの価値観で選んだ店が、今の自分たちに合っているかについて考えが抜け落ちていた。




「今日は街を見てまわるのですから、お買い物を中心に致しますわ」


「わかった。どんなお店にいくのかな」


 リシェルは、ニャマとサリーナの服装を見る。普段は依頼をするのでシャツとズボンなのだが、今日は二人とも初日に支給されたワンピースを着ている。そのワンピースは何回も着ているために痛みが目立ち始めている。それに少し二人に似合ってないと思っていたので


「そろそろ支給された貴方達の服も傷んできたようですから服飾店に行きますわ」


「まだ着れるよ?」


「ほら、此処とか解れていますわよ。それに、支給された物ではなくて、お二人にお似合いの服を着て欲しいのですわ」


「綺麗な服かぁ。お金が勿体ない気がするけど良いのかな」


 ニャマとしては、お洒落よりも装備を充実させたいと思っていたのだが


「それも必要ですけど、今日の様な日に綺麗な服で着飾った方が楽しいですわ」


「そういうものなの?」


「そういうものですわ。貴族の様に何着も買うわけでは在りませんし、一着位は外出着を買うのも良いですわ」


「わかった、リシェル似合うの選んでね」


 ニャマのリシェル任せに同意するように頷いたサリーナは


「それでは、その服飾店に早く行きましょうよ」


「わかっていますわ。こちらに行きますわよ」


 そう言って歩き出すリシェルの後を二人は付いていった。




 リシェルが選んだ服飾店は、以前魔法学院に入学するときに私服を買った店で、確かに貴族御用達の格式の高い店ではないが、それでも、元村民のニャマ達には入るのを躊躇う位豪華な店だった。


「リシェル、本当にここに入るの。凄く服高そうだよ」


「そんな事有りませんわ。あなた方の所持金でも十分買えますわ」


 事前に使える金額は言っておいたので、意を決して三人は店内に入る。中もきちんと整理整頓されており、様々な服が陳列されていた。

 リシェルは店員に声を掛けようとする前に店員のお姉さん方から声をかけてきた。


「いらっしゃいませ。おや? リシェル様ではありませんか?」


「あら? わたくしのことを覚えていてくださったのですか?」


「はい! 貴族様がこの店に来る事はめったにありませんのでよく覚えていますよ」


 そこ迄言った後、お姉さんは息を飲みこむ。リシェルの首輪に気が付いたのだ。


「え、青の首輪? リシェル様まさか」


「ええ、ホットタートルの影響ですわね」


「え? マリーカ子爵領はそれ程被害は無かったと聞いて安心していたのですが」


「まあ、色々ありましたわ」


「あ、申しわけありません。これ以上は聞きませんので、どうぞゆっくりと選んでください」


「ええ、ゆっくり選ばせていただきますわ。それと、連れの二人に似合いそうな服を見繕ってくださいですわ」


 そう言ってリシェルは今日の予算の額を店員に教え


「この額まででお願いしますわ」


「はい。この額なら十分にお似合いの服を見繕えそうです」


「店員さん、よろしくお願しますね」


「可愛い服お願いします」


 リシェルは一人でニャマとサリーナは店員に連れられて服を見に行くことにした。

 

 二人にとって、この店の服は村で着ていた無地のワンピースや平凡なデザインな服とは全く違い、色の多彩で、デザインも凝ったものが多かった。


「首都だとこんなにきれいな服が有るんだね。街中見れば分かるけれど、この店に来たらすごく実感したよ」


「うん。あ! あの青い服サリーナに似合いそう」


 ニャマが、正面に飾ってある水色の服を指差していた。


「そうですね。サリーナ様でしたら、こちらの服もお似合いですよ。もうすぐ冬に入りますし、この服の上にこちらの上着を羽織ってみては?」


 店員は、棚からリシェルの言った予算の範囲内で収まる服を選んで持ってきていた。店側としても、予算よりはるかに高い服を進める訳にはいかなかった。


「わあ、ありがとう店員さん、ニャマこれ似合うかな?」


 サリーナは服を広げて首元と腰に持っていく、水色が主で、白のフリルがアクセントになっている服で、スカートは上より少し濃い水色だ。


「うん。よく似合ってるよ」


「それならば、ニャマ様も色違いの服にしてみてはどうでしょうか?」


 ニャマにはピンクと白が主でサリーナと同じデザインの服を勧めていた。


「サリーナとお揃いだね。結局私達じゃ何が良いか分らないから店員さんに居て貰って助かったね」


「じゃあ、この服に決める?」


「それでは、この服は取っておきますね。それじゃあ次のお勧めはこれなんてどうかしら」


(いや~。思ったより可愛くなる素質のある子だわ。派遣奴隷になる子だもの当然かもしれないけど質高いわ~。リシェル様は、暫く店内で見繕ってるから、この二人も時間まで着せ替えちゃおう)

 ニャマとサリーナが店員から解放されたのは其れから二時間も後だった。


 店員から解放されて、幾分か疲れた表情の二人と、久しぶりに服飾店での買い物を楽しんだリシェルは、それぞれ欲しい服を選んで購入した。


 二人は、最初に選んだ服と上着を、リシェルも「そういう事なら私も色違いの服を買いますわ。これで皆お揃いですわ」と赤色の色違いで二人と同じデザインの服を買っていた。


「わぁ、着心地も良いよね。こんな服初めて着たよ」


 話し合た結果。買った服は、その場で着替えて店から出た、今まで着ていた服は[収納]の中だ。


「うん。何の生地なのかな。麻じゃないと思うけど」


「これは、魔物の素材でクロウラーシルクですわ。『ジベ六』の四階層から取れる素材ですわね」


「服も魔物の素材で作られているのね」


「ちなみに、最初にニャマが指さしていた服の素材はスパイダーシルクですわ。クロウラーシルクより少し質が良いし、トアル王国では取れないので、スパーダーシルクの服はお高いのですわ」


「そうなんだ、わたし達の狩った魔物の素材がこんな風に使われているのね」


「クロウラーシルクはまだ狩ってないよ」


「いつか三人で行けると良いよね」


「そうですわね。さあ、次は装飾店へ行きますわ。その服に相応しい装飾品を買いますわよ」


「「おー」」

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