第17話 オーガ?の住処に向かうのですね

 目的地のサテナ村に着いたキース一行は、夕刻ごろ問題なく村に入り村長と面会することが出来た。

 村長から話を聞いて直ぐに目撃者の狩人に話を聞きに行くと、狩人はひどく怯えていてこう話した。


「毎日の仕事で動物を狩ろうと森に入ると、いつもと違う動物の痕跡を見つけたんです」


「どんな痕跡だった?」


 キースは尋ねると


「人の目の高さの枝が折れていたり、人の様な二足歩行で歩いている様な足跡を発見したんです。最初はゴブリンにしては大きい痕跡だなと思ったのです」


 狩人は普段ははぐれゴブリン程度は自力で討伐していたそうだ。


「痕跡を追って行ったら…… 遠目に巨人が見えたのです。木の大きさから3m近くは有ったと思います」


「大きさからオーガと判断されたわけか。男性だったか?」


「はい、遠目でしたが、腰ミノしか着ていませんでした」


「んにゃ? そいつ牛のような角は無かったかにゃ?」


 ミリムは、両手で握りこぶしを作って左右のこめかみに当ててから、牛の角の形になる様に両手を移動させる


「こんな感じのだニャ」


「わかりません、後姿しか見ていないので、ですがそんな角は生えていないと思います」


「一瞬ミノタウロスかと思ったけどにゃ、やはりにゃオーガなのかにゃ」


「二本脚の男性という事で、ラミアやアラクネの線は消えているか」


 キースが狩人に続きを話すように伺うと


「その姿を見てビビってしまって、その場で隠密してその巨人が居なくなる迄隠れていました」


「その判断は正しいですよ。無理に狩ろうとするのは蛮勇だからな」


「ありがとうございます。それで、気配が無くなるのを確認してから、村にすぐ戻って村長に連絡したのです」


「ふむふむ、それで、その巨人を見た後、この村に異変は在りませんでしたか」


 村長からは異変は無いと聞いてい居たが、あえて狩人にも聞いてみた。


「……その後も、森の浅い所でびくびくしながら狩りをしていたのですが、獲物が少なくなっている様に思えました」


「ありがとう。後は、その巨人が去った方向に入口の大きな洞窟か洞はありませんか」


「……ありますね。自然の大きな横穴が開いている場所があります。たまに休憩したりしていましたから、雨露はしのげると思います」


「その場所を教えていただけませんか? そこを根城にしている可能性もありますから」


「ええ、わかりました。地図で言うとこの辺りになります」


 狩人は、村周辺の地図に丸印を付けてキースに渡した。


「どうも、ありがとうございました」


「どうか、巨人の討伐お願いします。このままじゃあ村に肉が取れなくなってしまいます」


「全力を尽くしますよ。それでは失礼します」



 キース一行は、宿泊先としてあてがわれた空き家に戻ると、テーブルを囲んでまずは、夕食を用意して食べ始めながら


「当然だが、今日はここで一泊して横穴に行くのは明日の朝からだからな」


「当然だよね。ミリムやニャマはともかく、僕らには暗闇を見通すことはできなし」


 ガイルは、野兎と野菜のスープの野兎の肉をスプーンに乗せながら言い、肉を口に運んだ。


「ニャマちゃんと二人でオーガなんて倒せないにゃ」


「うん。得意な武器ならともかく、短剣じゃ無理ですね」


「行くなよ」

 

 ハロルドが念を押すように一言つぶやいた。


「わかってるにゃ。大人しくしてるにゃ」


「まあ、相手ははぐれオーガ、俺達ならさほど手ごわい相手ではないし、今回はニャマもいる油断せずに討伐しよう」


 キースのその言葉に全員が頷いた。

 討伐の話はここ迄という感じで、パンと手を叩いたミリムが


「さってと、お仕事のお話はお終いにゃ。ニャマちゃんはリシェルちゃんと同期なんだったてにゃ?」


「はい。同じ日に奴隷になりましたね」


「ならなんで、彼女だけ来る日が遅れたのにゃ?」


「ああ、リシェルは子爵令嬢ですから、強制依頼の問題で遅れたみたいですね」


「にゃ! 子爵令嬢にゃ! ちゃんづけで呼んでしまっていたにゃ」


「まじか、全然そんな風には。いや言葉遣いはそう言われれば」


「まあ、リシェルは少し変わってますからね。気にしないと思いますよ」


「でも、珍しいですね。貴族が冒険者って」


「ん? リシェルは、結構実例あるって言ってましたよ。貴族の三男以降とか結構冒険者している様です。けど、派遣奴隷冒険者はリシェルが初めてだそうですよ」


「そうなのか? 」


「そうらしいです。派遣奴隷になる貴族の子息は、返済金を返せれば貴族に戻れますから、他の方々は侍女や給仕の仕事をしているか、寮にはいったままとかですね。

 派遣冒険者の問題は、貴族に戻れる者が平民の冒険者に強制的に従わされるのが理由だったらしいですね」


「そりゃ問題だわ。で、結局どうなったんだ」


「貴族の場合、強制依頼は拒否できるように変更されたようですよ」


「なるほどな、普通の依頼の様な仕様にしたのか」


「そそ、リシェルは「郷に入れば郷に従えなのですわ。拒否できるとしてもどんな依頼でも受けますわ」って言ってわ。リシェルらしいけどね」


「うん、リシェルちゃんなら言いそうだにゃ。それにしてもにゃ、冒険者の素性ってあまり聞かないからにゃ。そうなのにゃ~。今まであった冒険者の中にも貴族様いたのかもにゃ~」


「そうかもしれないね」


「まあ、冒険者の中に貴族って意外といるものだんだな。まあ王族なんかは居ないだろうけどな」


「さすがにそれは居ないでしょうね」


「まったくだ、あははは」


 そんな話をしながら夕食の時は過ぎて行き、食事の後も他愛のない会話をしながら過ごした。

 そして翌日の朝、全員で森に入る事となる。

 目標は推定オーガの討伐。まずは、怪しいと思われる横穴の探索からになった。


 森に入って暫く歩き、村と横穴の中間地点辺りで、オーガと思しき痕跡を発見した。


「あ、ここに足跡があるにゃ。素足っぽいにゃあ」


 ミリムは、手帳を取り出して、足跡と手帳を交互に見て


「うん。オーガの足跡で間違いにゃいにゃ。時間は一日たって無いと思うにゃ。進行方向は横穴の方に向かっているにゃ」


 足跡から推測される情報をリーダーのキースに伝える。

 ニャマも思いついたことを報告する。


「後、こんな森の奥に来ているのに大型の動物の気配が無いみたいね。逃げたかな」


「二人ともありがとう。じゃあ不意打ち防止に警戒を密にして横穴に向かおう」


 そうキースは言い、横穴へと道を進めていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る