第11話 冒険者パーティとの邂逅なのですね
イズルは、時間までに野兎を狩ることは出来なかった。しかし、子供らしく動きは良かったので、もう少し鍛錬すれば野兎を狩れそうだから、教えた動きを忘れない様にと伝えて、門からトトリアに戻って来た。
二人は、冒険者ギルドに向かうのだが、イズルは孤児院の子らしく、狩った丸兎は夕食するらしく、嬉しそうに帰路についていた。
イズルと別れた後、冒険者ギルドに戻った二人は、丁度空いていたミネルバの居る受付カウンターに向かった。
「あら、結構長くいたのね。もう夕方よ。野兎は取れたのかしら?」
「ええ、五匹取れましたけど、肉は何処に出せばいいのかな?」
「ああそうね、ここは、依頼を受注や報告する為の受付だから、素材を買い取りや確認したりする所は別にあるのよ付いてきて」
そうして、奥の壁際に並んでいるカウンターテーブルに向かった。カウンターの奥には扉があり、解体場と繋がっているそうだ。
「素材の納品クエや、素材買取等は受付で報告した後、こちらで処理します。なので、書類が汚れるから、向うの受付で素材を出さないでくださいね」
「はーい。素材はこっちで渡すの覚えました」
ミネルバはカウンターの上に多きめの木の取り皿を置いて。
「じゃあ、ここに取って来た野兎を乗せてね」
ニャマとサリーナはそれぞれ狩って来た合計十匹の野兎をトレイに乗せた。
「あれ。十匹も? ああ、一人五匹と勘違いしたのね。ごめんね私の言い方がまずかったみたいで、それに、引き締まった身体つきだし、丸く太った野兎居なかった?」
「あ、狩ってくるの丸兎で良かったのですね」
「丸兎?」
ここで、ニャマが自分の村に居た時の常識を語った。ミネルバはその話を聞いて
「なるほどねぇ。村の安全を守る知恵ってことね。勉強になったわ、ありがとう。それなら今後も、丸兎じゃなくて野兎を狩って来たら色を付けてあげるわ」
実際、この王都トトリアでは、野兎は楽に狩れる分太った丸兎が多く出回るが、味はいまいち。引き締まった野兎は、味は良いので少し高値で取引されている。
「じゃあ、査定を行うわね。では…… 質は良いし、血抜きもちゃんとできているのね。これなら全部で銅貨50枚になるから、貴方達には銅貨5枚の報酬になるわね」
「やっぱり報酬の八割は奴隷ギルドに行くんですね」
「あなた方のレンタル料と返済分で八割ですね」
「説明の時に聞いていますから大丈夫よ」
「じゃあ、はい。今日はありがとうね」
ミネルバは、二人に銅貨五枚ずつ渡した。このお金は、ニャマが自由にして良いお金である。何か買うのも良し、返済にあてるも良しだ。
「そうだ、貴方達なら、冒険者パーティから指名が来るかもしれないから、向うの酒場に行ってみるのも良いかもね」
知り合いの冒険者パーティから人数合わせや戦力で指名依頼が来ることもあるので、早いうちから知り合いを作るのは良い事でもある。
冒険者ギルド内の食堂は、夜には酒場に様変わりする。店は変わらないのだが、客層が夜は依頼が終わった打上で酒盛りしている冒険者が多いからだ。
「じゃあ、少し寄ってみますね」
そうして、冒険者ギルドの食堂によると直ぐにニャマ達に声をかける者が居た。
「お? あれって今朝に見た派遣の子だよな」
「そうですにゃ 私と同じ猫人族の子にゃ お~にゃ! そこの桃色の子にゃ!」
声に気が付いたニャマは、声のした方に向かうと、今朝、ここの入口で注意された冒険者パーティの人達だった。
「こんばんは、今朝は、立ち止まってしまってごめんなさい」
二人で改めて謝罪したら
「まあ、初めてでこっち側に入ったなら仕方ないよ」
「はい。いきなり食堂みたいで驚きました」
「ははは、他の冒険者ギルドもこんな感じだし、小さい街だと酒場がメインな所も在るしな」
「なるほど。あわたしはニャマと言います」
「あ、私はサリーナです」
「お? そうだな、俺はキースだ」
剣士風の皮鎧を着こんだキースは、茶髪に年齢は10台後半位の見た目をしている。腰に剣を差し、背中に盾を背負っている。
「僕はガイルです」
キースと同じような革鎧を着たガイルは、キースと同年代位で、顔が整っている。腰にメイスを下げて、盾も持っている。
「あたしは、ミリムにゃ。同じ猫人族同士にゃ。よろしくにゃ」
ミリムも同じ革鎧のいで立ちで、黒と茶のメッシュになっている三毛猫みたいな髪色だ。ちょっときつめの目じりをした女性だ。
ぱっと見丸腰の様だが、短剣を隠し持っているので、斥候の役割の人物だろう。
「俺は、ハロルドだ」
小さく一言で挨拶をすませたハロルドは、魔法使いらしくローブに杖の恰好をしている。フードを目深にかぶっているため顔をよく見ることは出来ない。
「それにしても、派遣奴隷で冒険者やるのは最近では珍しいな」
「そうなのですか? ギルドではそれなりに居ると聞きましたが」
「そうなのか? 冒険者ギルド内では、あまり見ないからな。ほれ、あそこみたいに一般奴隷を連れてるパーティが多いぞ」
そうキースが指さす冒険者パーティの一人が橙色の首輪をしていた。その娘は荷物を持ち粗末な服を着て、談笑している冒険者パーティの側で黙って立っている。
指につられて、その冒険者パーティを見ていたら。その一般奴隷の娘と目が合った。
名前も知らないその娘も気が付いたようで、一瞬驚いた後に「何で私ばかり」と、うらめしそうな表情を見せていた。ニャマは目をキースに向き直して
「あ~。やっぱり、ホットタートルの影響ですか?」
「そうだな。あの魔獣の影響で、一般奴隷の数が飽和し始めて、扱いが惨くなって来ているそうだ」
「そうなのですね。わたし達も、その影響で奴隷になりましたから」
「そうか、もし俺達が冒険者になった年にあの魔獣が来ていたらと思うとな」
「私達は同じ村の出身なんだにゃ」
「でも…… ニャマはともかく、私は何事も無ければ冒険者にはならなかったかも」
「うん。そうなるのかな? 誘うとは思うけど無理やり誘うことはしなかったよ」
「俺は無理やりだった」
ハロルドがぼそりというと、キースはバツが悪い様に
「お前は、魔法の才能あるのに引き籠りがちだったからだ。俺は悪くない」
「キース。悪いとは言って無い」
「そうにゃ。結果オーライだから大丈夫にゃ」
「そうそう、僕もキース達に誘われて良かったよ」
「仲いいんですね」
「君たちも仲良さそうじゃないか?」
「ええ、仲良いですよ。だけど、一緒のパーティで依頼するのは難しいですからね」
「うん。でも寮が一緒だからね」
「そうか。 ……そうだ、折角知り合ったんだ、一緒に飯でも食わないか?」
一呼吸おいてキースが夕食に誘うが
「どうする、ニャマ? 私は、今日は早めに寮に帰った方が良いと思う」
「だね。キースさん、ごめんなさい今日は早めに帰ります。今度ご一緒しましょう」
「分かった、じゃあまた今度な、俺達はもうすぐ、中級冒険者試験を受けるんだ。もし中級冒険者になったら、依頼するかもしれないからその時はよろしくな」
「はい! それでは、またね」
「また、さようなら」
そう言って、冒険者ギルドから去るニャマ達を、立たされていた奴隷はジッと見つめ続けていた。
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