第9話 冒険者ギルドにお出かけしますね
早朝。ニャマとサリーナは、奴隷ギルド内の受付に来ていた。今のニャマ達は、指定業務が入っていない寮待機状態なので、義務として一日一回は受付に行き、本日の業務の有無を確認しなければならない。
受付は五か所ほど並んでいて、既に全ての受付に数人が並んでいた。二人は人数の少ない列に並んで
「結構並んでるね。何時くらいが空いてるのかな」
「もっと早く来ればいいのかな」
実際早朝は一番混雑している時間帯だ。
そして、ニャマは、周りの列を作っている人たちを見て
「あれ? 青い首輪していない人も居るね?」
「ほんとだ。 何しに来ているのかな?」
奴隷ギルドでは、寮待機状態の奴隷にも働いて稼げるように、日雇い業務の求人も斡旋している。日雇い業務に関しては、求人が多くなってきて奴隷以外の人も受け入れるようになった事を、後から聞かされた。
受付の列は問題なく進んでいき、ニャマの番になった。
「いらっしゃい。あら? 初めて見る顔かしら?」
「はい。ニャマです。今日、初めて来ました」
「ニャマさんね。えっと…… 今日は貴方に指名業務は来ていないわね」
「ですよね~。えっと、派遣冒険者があると聞いたのですが」
「あら、派遣冒険者希望ですか? 分かりました。紹介状を作りますので少々お待ちください」
「はい、それと、後ろのサリーナも同じですので」
「分かったわ。ありがとうね」
少し待つと、受付のお姉さんはニャマに封書を手渡して
「これが紹介状ね。冒険者ギルドの受付に渡してね。後は派遣冒険者になっても、指定が無ければ寮待機なので、明日も確認に来てくださいね」
「はい、わかったわ。それじゃあ、行ってきますね」
「行ってらっしゃい。 では、次の方どうぞ」
受付嬢は次のサリーナの応対を始めたので、ニャマは受付から離れサリーナの受付が終わるのを待った。
しばらくして、サリーナの受付が終わったらしく、ニャマ居る所に戻って来た
「ニャマ、私も終わったよ。早速冒険者ギルド行こうよ」
「うん。確か冒険者ギルドは二軒隣だったね」
王都トトリアでは、各種ギルドが都市中央の近い位置に集中している、ギルド通りとなっていた。
これは、アスファルト大通りを引くための区画整理時に大通りに面した元貴族街の場所を各ギルドが買い取ったのが理由だ。
なので、奴隷ギルドから2分ほどの時間を歩いて、まだ新しい冒険者ギルドの建物に着いた。
「へ~。冒険者ギルドの建物も新しいんだね。もう少し古めかしいと思ってた」
「私も思ったよ。なんでだろうね?」
そんな事情を知らない二人は不思議に思いながら、冒険者ギルドの自動ドアを潜って中に入ると、そこは食堂兼酒場だった。
奥にカウンター席と厨房へ続くドアの無い扉、テーブル席が幾つもあり、席には冒険者らしき装備を着けた者たちが、自由に食事をしていたり、談話をしていた。
「あれ? 食堂? 場所間違えたのかな?」
「看板あったし、そんなことないと思う」
入口でぼーっと立っていると、後ろから声を掛けられた
「お~い。入口でぼぉっとしてると危ないぞ」
振り向くと、冒険者パーティらしい数人の男女が居たので、二人は慌てて脇に退いた。ニャマは脇に退いたついでにその集団に声をかけた
「あの。すみません。ここ冒険者ギルドですよね」
「そうだけど、君たち初めて?」
「はい」
「なら、受付は向うだ」
と指さす方向を見ると、奥の方に待合所と受付カウンターが見える。
「ありがとうございます」
「いや。良いって事よ」
二人は、冒険者パーティにお礼を言ってから、受付に向かった。
「青い首輪、あの子達派遣奴隷だよな? 何しに来たんだろ?」
「冒険者登録をしに来たにしては、丸腰だしね?」
「う~にゃ~。そんな事よりお腹空いたにゃ~。空いた席座ろうにゃ」
後ろで、そんな彼らの話声が聞こえた。
受付前にくると、すでにピークは越えたのか。受付目的の冒険者は少なく、受付カウンターにも空きがあった。
ニャマとサリーナは二人そろって手が空いて暇そうにしている受付嬢の受付に向かうと、受付嬢はすぐに気が付いて、襟を正した。
「いらっしゃい。今日は、何の御用ですか?」
「派遣冒険者登録をしに来ました」
そう言って二人は紹介状を受付に渡すと、受付嬢はすぐに封を切って中身を確認する。
「……なるほど。この時間で良かったわ。ニャマさん、サリーナさん。じゃあ。冒険者ギルドの説明を私、ミネルバがするね」
「「よろしくです」お願いします」
「まず始めに、冒険者ギルドの仕事は、魔獣の討伐及び素材収集、ダンジョンに居る魔物のドロップ収集、未到達ダンジョンの踏破、素材採集、商隊の護衛が主な仕事になるわ」
「はーい。魔獣と魔物の違いって何ですか?」
「基本的には、ダンジョに居るのが魔物で、倒すと光になって消えて素材が残るのが特徴ね。
また、ダンジョン外に居るのが魔獣で、倒しても消えずにそのまま残るのが特徴ね」
魔獣だが後に、ゴブリンやオーク・オーガ等、知性があり集落を作る属性の有る魔獣は、蛮人族と分けられることになる。
「次は、冒険者の階級ね、初級から始まって、下級、中級、上級と昇進していくわ。階級が上がるにつれ依頼の難易度も上がっていくのよ。
ただ、今は上級が一番上なのだけれども、上級の一番下と上の力差が大きくなってきてね。最上級って階級が増えるかもしれないわ」
「私達は、初級からになるのですね」
「そうね。派遣冒険者の場合も普通と変わらないわ。
最後に、派遣冒険者と冒険者の違いね。掲示板から依頼を受けて、依頼をた制して報告する流れは、変わらないわ。
ただ、派遣冒険者には、冒険者ギルドから推奨依頼が出る事が有るわ。これは、依頼料が倒す魔獣の相場より安くて焦げ付いてしまった依頼等を指名するわ」
「ん~、無理な依頼も受けないといけないの?」
「まあ、強いのは、騎士か貴族が出て来るので、無謀な推奨依頼は来ないと思って良いわよ」
「わかりました、なら大丈夫だね」
「うん」
その後、冒険者のマナーや諸注意を受けた後
「じゃあ、ちょっと私に付いてきて。貴方達に最低限の武器を渡すように紹介状に書いてあったからね」
そう言って、受付嬢ミネルバは、停止中と書かれた札を置いてから、席を外した。そして、ニャマ達を手招きして、ギルドの奥へと二人を導いた。
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