第7話 技能測定なのですね

「おお~。サリーナいい部屋だね」


「うん。広いし家具もちゃんと用意されているね」


 二人にあてがわれた203号室は、中央に扉があり奥に3枚小さな窓がる奥に広い長方形で十二畳程の広さの有る部屋だった。

 家具は二人部屋なので、左右対称に置かれている。

 奥隅にベッド、中央に収納棚が二つ並んでいる。ベッドの手前側からクロゼットと化粧台、机が並んでいる。

 収納棚と化粧台には何も入っていないが、クローゼットには寝間着用だろうか、無地のワンピースが掛かっていた。


 ニャマは、そのワンピースを手に持って自分に合わせてみる。


「新品のワンピースがあるね。丈は脛ぐらいかな?」


「私も一緒くらいだよ。皆着れるくらいの丈だよね」


「これって、この服を着て寝ろってことだよね」


「だね。もう疲れたから寝るだけだし、早速着替えようよ」


「だね~。平気かと思ったけど、結構疲れてたみたいだね。早く寝ちゃおうよ」


 二人は寝間着に着替えてベットに入ると、すぐに寝息が聞こえてきた。





 翌日、ニャマ達五人は、最初に入った会議室に集まっていた。既にリッドも部屋に入っており、全員が集まって席に着いてから話し始める。


「皆おはよう。早速だが今日の予定は、まずは、ここの技能室に行って技能測定をするぞ。その後は、派遣奴隷の仕事と寮での諸注意などの説明になる」


「いよいよですね。楽しみです」


「おいおい、そんな期待してると、駄目だった時の負担は大きいぞ。まあ、お前は心配することは無さそうだけどな」


 三日目の魔獣狼の件で、ニャマに関してはがっかりするような結果にはならないと思い、後半は小声でつぶやいているが、


「心配しなくていいのね。やっぱり楽しみですよ。お父さんも狩りしているとき筋が良いって言ってくれたし」


「もう、ニャマったら。他の人も居るし余りはしゃいじゃ」


「ふふ、初めての技能測定ですもの、わたくしも初めての時は期待で胸を膨らませたものですわ」


「どうでもいいわ。どんな技能があってもね」


 カリナがやさぐれた表情でつぶやいている。その辺りでリッドが


「さあ、おしゃべりはその位にして、技能室に行くぞ」


 そうしてリッドを先頭に技能室へと向かった。


 

 技能室と呼ばれている部屋の前は、そこだけ壁が取り払われていて待合室のようになていた。そして、奥の中央に、扉の付いた天井に届く位で人が一人は入れるくらいの大きな箱が置かれていた。これが技能室なのだろう。


「技能室の使い方だが、部屋の入ると目の前に黒い画面が、そして床に円が書かれている。まずは、その円の中に入り黒い画面を見据えてくれ。そうすると、全体が光ったあと光の板が下から上がり始めるから、板が消えるまで円の外に出ない様に気をつけてくれ

 測定が終わると、黒い画面に白字で測定結果が出るぞ。基本、技能室の測定結果は自分しか見れないものなのだが、派遣を決めるのに技能も必要なので、子機で俺にもわかるようになっている」


「はい、なぜ見れるようにしたのですか?」


「それは、最初は自己申告だったのだが、虚偽申告が多くてな。奴隷の技能は職員が確認することになったんだよ」


「なんで、そんなに多かったのかな」


「そりゃ、希望した職に行きたいから、取得していた技能の職に行きたくないとかでな。本来、技能ってのは真剣にやれば取得できるものなのにな」


 リッドがため息をつきながらボヤいていた。


「さてと、そろそろ始めるか。まずは…… そこでうずうずしているニャマからいってこい」


「ありがとう。リッドさん」


 ニャマは、そう言って扉に入って、リッドの言った通りの手順を守って測定を待っている。

 光の板が床から天井まで登ると、今度は床に降りてくる。板が床に消えると、画面に測定結果が写っていた。


 種族 猫人族

 身長 151cm

 体重/サイズ 46kg 81/58/80

 魔法適正 【無】【風】【水】

 種族技能 【軽業】【暗視】【聴覚】

 一般技能 【農耕】

 身体技能

 戦闘技能 【剣技】【弓技】【索敵】【見切】【集中】【疾風】

 魔法技能


 この結果にまずニャマが驚いたのは、魔法適正の欄であった。自分に無以外の魔法適正が有るとは夢にも思っていなかったからだ。

 戦闘能力についても前の三種は予想はしていたが、後の三種は予想していなかった。

 思った以上の結果に満足しながら測定室から出ると、リッドが憮然とした表情で、手元にある板を見ていた。


「はあ、どうすんだよこれ。【体力】【筋力】等の身体強化系の技能は無いが戦闘技能だけなら十分通用するじゃねーか」


「リッドさん。終わりましたよ?」


 ぶつぶつ言っているリッドにそう促した。ぶつぶつ言ってる内容も聞こえてはいたが聞こえないふりをしている。


「あ。ああ次はサリーナで」


「わかりました。いてきます」


 緊張か少しかみ気味で技能室に入り、問題なく測定を済ませた。


 種族 人間族

 身長 153cm

 体重/サイズ 48kg 75/59/76

 魔法適正 【無】

 種族技能 【味覚】【信仰】【繁殖】

 一般技能 【農耕】【料理】【暗算】

 戦闘技能 【剣技】【弓技】

 身体技能 

 魔法技能


 この技能室だと、名前と年齢は表示されない。あくまで技能と身体特徴が表示されている。

 ちなみに、彼女の生まれ持っていた技能は【暗算】になる。しかし、村の生活では殆ど計算はする必要は無いため宝の持ち腐れになっていた。商店から引っ張りだこになる技能でもある。


「なんか、【剣技】と【弓技】もってたよ。これならニャマと一緒に冒険者やれそうだよ」


 リッドは心の中で「そっちじゃねえ」と叫んでいた。


「まあ、冒険者でやっていけることもないが、【暗算】があるから少し勉強すれば、どこの商会でもやっていけるぞ」


「……へ~ そうなんだ~」


 明らかに興味無さそうにサリーナは答えていた。



 続いて、不安でしょうがないカリナが技能測定をした。


 種族 人間族

 身長 158cm

 体重/サイズ 53kg 82/63/86

 魔法適正 【無】

 種族技能 【味覚】【信仰】【繁殖】

 一般技能 【農耕】【奉仕】【社交】

 戦闘技能 【斧技】

 身体技能 【筋力】【体力】

 魔法技能


 当人もすごく意外そうな顔をして技能室から出てきた。


「なにこれ? 頑張って掃除や料理をしてたのに、一番効果が有ったのは、毎日の薪割りなの?」


「あ、いや、結構いい技能群だぞ、【奉仕】【社交】は、貴族令嬢が侍女をする時の必須技能だから、少し訓練すれば、侍女の依頼が出来るからな」


「そうですか。それなら侍女の訓練をお願いします…… 力勝りの女って需要有るのかなぁ」


「さ、さあ次だ次、リリの番だ」


 リリも問題なく技能測定を行った。


 種族 犬人族

 身長 164cm

 体重/サイズ 57kg 96/66/90

 魔法適正 【無】

 種族技能 【忠義】【聴覚】【嗅覚】

 一般技能 【農耕】【料理】【清掃】【整理】【指導】

 戦闘技能 

 身体技能 【体力】

 魔法技能


 リッドはこの技能群を見て思った「これメイド長だ」と。【清掃】【整理】とメイドの必須技能を持ているし【指導】で教育も出来ると、鍛えたらよい人材になりそうだ。


「私だけ、戦闘技能が無かったわ」


「いや、そっちじゃねぇ。っと、【清掃】【整理】があるから、メイドとして訓練してみてはどうかな?」


「そうですね。掃除は得意ですし、その方向でお願いします」


「わかった、じゃあ最後はリシェルだな」


「はいですわ、魔法学院に在籍していた時に測りましたが、何か取得できているでしょうか」


 そうして、リシェルも技能測定をすます。


 種族 人間族

 身長 146cm

 体重/サイズ 42kg 72/60/78

 魔法適正 【無】【土】

 種族技能 【味覚】【信仰】【繁殖】

 一般技能 【社交】【礼節】

 戦闘技能 

 身体技能 【魔力】【精神】

 魔法技能 【土術】【固定】

 魔法 【無魔法6種】【土魔法4種】


「あ、やりましたわ。【土技】が【土術】に上っていますわ」


 技能の中には、上位技能がある。一般的なのは、【剣】【土】と言った、技→術→王→聖と語尾の名前が変わっていく上がり方だ。

 また、ニャマの技能【見切】の様に、【回避】の上位技能として名前から変わるものもある。


「これで、わたくしも冒険者ギルドに行けますわ」


「え? リシェル? 派遣冒険者やるのか?」


 リッドが、そりゃないよって顔しながら訪ねる。


「そうですわ。幸い同期にニャマとサリーナが居りますわ。問題ありませんわ」


「わぁ。リシェルも冒険者やるの! 一緒! 楽しみね」


「いや…… まあ…… 困ったな。まあこれは棚上げて、後で報告だな」


 そう言って、咳払いをして


「全員終わったから、集合場所の部屋に戻るぞ、そこで今後の説明をするぞ」


 その後、会議室で説明を受けて、時間は過ぎて行った。

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