第3話 奴隷って一杯種類あるんだね
翌朝。ニャマ達の乗る荷台にリッドが現れ、御者席に登るための踏み台に腰掛けて話始める。
「よし。お前達も落ち着いた様だから、お前たちが就く事になる派遣奴隷について説明するぞ」
その言葉に三人は緊張したのか、顔がこわばっている。しかし、ニャマだけは、興味深そうな笑顔を見せている。
リッドは「ごほん」と一つ咳払いをしてから
「では。最初は、奴隷の種類から説明しようか。今、現在での奴隷の種類は、一般奴隷、借金奴隷、犯罪奴隷、戦争奴隷、派遣奴隷の五種類だ」
そしてリッドは各奴隷の説明を始めた。
一般奴隷は、商品と同じ感覚で取引される奴隷だ。奴隷を仕入れて、価格を決めて客に売る。特徴は逃亡防止の効果がある橙色の首輪か足輪を付けている。後は、どんな人物でも買えるため、主人の当たり外れが大きいということか。
また、奴隷状態を開放するには、主人の許可を得て首輪を外す以外にない。
この奴隷になる人達は、生活に困って家族に売られたり、自分を売りに来て価値を認められたもの、それと犯罪だが人さらいによって拉致された者が一般奴隷になる
そして、価値を認められなかった者は、スラムへと向かうことになる。働けない子供の行きつく先でもある。スラムの状況は改善されているが、まだまだ不十分だ。
借金奴隷は、借りた金を返せない人がなる奴隷だ。大体主人は金貸しになる。借金の質に娘や自身を売るとかだ。
借金奴隷は逃亡防止のついた黄色の首輪か足枷を付けている。
借金奴隷は個人の金銭問題なので、首輪が黄色の状態で奴隷商の商品として売りに出されることはない。
また、この奴隷状態を逃れるには、最初に提示された契約を完遂すて解放されるか、主人によって一般奴隷商に売り払われて一般奴隷に落ちるかだ。
犯罪奴隷は、文字通り犯罪を犯した者がなる奴隷だ。大体国や領主が主人となる。
この奴隷は、基本街中で見ることは無いが、逃亡防止と命令で首が閉まる効果がある赤色の首輪をつけている。鉱山などの、危険な仕事や力仕事を強制的にさせられている。
罪の重さで強制労働の期間が決まり、その期間就労すれば解放される。また、反省の色が見られたりすれば、期間が減少することもあるそうだ。まあ、大体が捕縛された野盗なんで無期限になる人が殆どだ。
戦争奴隷は、比較的新しい奴隷で、貴族間や都市、国家間で起きた戦いにおいて捕虜となった人がなる奴隷で、逃亡防止と命令で首が閉まる効果がある黒色の首輪をつけている。
戦いに勝った勢力のトップが主人となる。捕虜なので負けた側が賠償金を払って開放されて元の所属に戻る人が多い。
だが、解放されなかった人は、犯罪奴隷のような強制労働をすることになるが、従順な者は兵士として雇われたりもする。
派遣奴隷は、数年前に組織された奴隷ギルドに登録されている奴隷だ。売買方法が売り切りではなく、期間派遣となっている。奴隷の能力で価格が判定され、日、週、月単位で派遣されて行く。買う客は個人は少なく、商会、貴族、各種ギルドなどの組織に派遣されることが多い。たまに、個人が身請けして、専属の派遣奴隷になる事もある。
首輪と足枷の色は青色で、他の奴隷とは違い、奴隷の居る場所が分かる魔法がかけられている。
派遣されると奴隷ギルドから給金が貰える。解放される条件は、契約金+経費を全額支払った時になる。経費は教育費や寮の宿泊費などである。
また、素行の悪い派遣奴隷は、奴隷ギルドが主人の借金奴隷になる事もある。
「まあ。普通に働いたら、月に経費以上は稼げるようになっているから死ぬまで働かせるようなことは無いぞ。それに働き次第では派遣先からも小遣いが貰えるから働き甲斐は有ると思うぞ」
リッドの長い話を四人はしっかりと聞いていた。
「ま。大体、奴隷の種類に関してはこんな所かな」
「はい! 派遣で雇われる各種ギルドって冒険者ギルドも入るんですか?」
ニャマは、リッドの説明がひと段落したことで、自分の一番気になっていた事を質問した。
「ん? ああ。冒険者ギルドもよく派遣されるな。内容は新人パーティの補強や、人気の無い依頼をしたりとかな。実績が上がるとパーティ自体に雇われることも在るな」
「へ~。楽しみ~」
「ニャマと一緒に冒険者というのも楽しそうだなぁ」
リッドの答えに楽しそうに笑っているニャマにつられて、サリーナもそう呟きながら笑みを浮かべた。
「あの。私、得意な物が無いし、読み書きも出来ないのですが、やっていけるのでしょうか?」
遠慮がちにカリナが質問した。ちなみに、リリは村長の家で覚えて、ニャマとサリーナはニャマの父親に読み書きを教えて貰っていた。
「そのあたりは、奴隷寮に入ったら教育されるから、しっかり覚えろ、としか言えんが、会長が選んだ人物なら大丈夫だろう」
「そうですか。何とか覚えられるようになります」
「ええ、カリナさんなら言葉遣いも綺麗ですしすぐ覚えられますよ」
「……まあ、最悪、技能はなくとも、技能球を使えば覚えられるしな。……あ。でも、その場合は経費がかさむぞ。早く奴隷から出たいなら、自力で取得した方が良いな」
リッドは、言ってから後悔した。確かに技能球を使えば覚えられるが、技能球は結構な金額になる。それに、自力で技能を取得した方が成長が速いというのもある。派遣奴隷ならあくまで最終手段でなければならない。
「あ、技能で思い出した! 私達ってどんな技能と魔法適正を持っているか調べて貰えるんですよね」
この世界には、技能と魔法適正と言うものがある。
技能とは、その人の持っている技術を示すもので、【料理】【裁縫】等の一般技能や【剣技】【隠密】等の戦闘技能、【魔力】【火技】等の魔法技能がある。
取得方法は、経験を積むことで取得できる。毎日料理を作っていればいずれ【料理】の技能を取得するだろうし、毎日、素振りしていれば何時かは【剣技】を覚えるだろう。
魔法適正とは、この世界の人族は全員、最低無属性の魔力を持っており、基本の六属性、火、水、土、風、光、闇、まれに複合属性の、雷や氷等を持っている者もいる。また、魔法適正は、生まれた時からほとんど変わることが無いとされている。
ただ、自分が何の技能と魔法適正を持っているのかは、技能室という魔装具か【鑑定】技能が必要で、前者は物が大きく高価であり、後者は召喚勇者固有の技能で、村暮らしのニャマは生まれてから技能を確認することは無かった。
「ああ、商会の一室に技能室があるから、そこで確認できるな」
「おお~。楽しみが一つ増えた~♪ カリナさんも、もしかしたら、自分の知らない技能があるかもしれないよ」
「う~ん? 自覚していない技能ってあるものなの?」
カリナは素直に疑問を口にする。
「あるぞ、例えば、生まれながらの技能だったが、今までの生活で使う機会が無かったとかな」
「私にもそのような技能有るのでしょうか?」
「村出身のやつなら前例は結構あるぞ。人は、生まれながらに一つは技能持っているらしいからな」
村出身の人族は、自分の技能を知らぬまま人生を終える人が多い。その中にも稀有な技能を持っていた人物もいただろう。
ニャマもここで売られなければ、自分の技能を知らぬままでいただろうから、人生の転機だったと言える。
その後、リッドの話は、逃げた奴隷の末路や、一般奴隷のエピソードなど、奴隷として注意しなければならない所を、実例で教えていた。
そして、一日が過ぎ三日目の夜、野営の時間になった。
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