リップグロスと口紅

 今連載している小説の第2部を男性の視点で書いているんですが、ふつうの男性だから、気づいちゃいけないことがあります。でも、書き手からすると、そこポイントなんだけどなぁー、なんとか入れられないかなぁー、と思ったりします。


 例えば、主人公の奥さんは、リバティのエプロンを着てます。作者の脳内で。でも、ファッションに詳しくもない一般男性が、リバティを知ってて、「あ、リバティだ♥」とか反応するわけありません。(ご存じない方のために解説:リバティは花柄で有名な、英国の老舗ブランドです。)同年代の女性視点だったら「リバティのエプロンとか着る人なんだ」って入れられるけど、男性視点だったらリバティが入れられません。


 書き手的には、その奥さんのエプロンは、リバティじゃないとダメなんです。マリメッコじゃないんです。その辺の安いやつとか問題外。私本人は、エプロンつけないんですけど。(笑)


 あとね、好きな女性がリップグロスつけてて、主人公がときめくシーンがあるんですけど、「グロス」という単語が彼の頭にありません。だから「ツヤツヤした口紅」になっちゃう。でもさ、多くの女性にとって、グロスか口紅か、てけっこう重要だと思うんです。私なら、まだ距離が近くない人との本気デートだったら、絶対グロスです。夫と気合いの入ったレストランに行くときは口紅。普段はなにもつけません。(世界一役に立たない情報、ごめんなさい。)


 子どもがいる女性(仮に愛さんとします)が、そこまで親しくない男性と2人きりで会うときに、きれいな色のグロス付けてたとします。私と同年代の女性読者だったら、「愛さん、相手の男性のこと、けっこう意識してるな。」とか思うわけですよ(たぶん)。口紅だと……ビミョーです。このへん、他の女性の意見も気になるところです。


 でね、例えば車に詳しい作家さんが、JK視点で物語を書いてたとして、主人公が乗ってる車の種類が、サブキャラの運転手の性格に合ってて重要なんだけど、入れられずに悔しい思いをしそうです。鉄オタの作家さんだったら、主人公が乗った地下鉄の車両の名前を無駄に記述したり(しかもそれが無駄に希少車だったり)しそうだなと思いました。

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