自分にしか書けないもの

「美容師は人の髪や体に触る職業だから、そのレベルで他人と関わるのはストレスになる。それが原因で辞めていく人は多い。」という話を、美容師さんに聞いたことがあります。


 これは美容師さんじゃないとわからない感覚だなと、とても面白いと思いました。同じように、私には普通のことでも、他の人には興味深いのかなと思うことはいろいろあります。


 私は日本で生まれ育って、今はメルボルンで暮らしています。ロンドンに6年住んで、そこで二人の子供の妊娠・出産を経験しました。メルボルンは足掛け12年くらい住んでいます。高校生のときは、1年間アメリカのコネチカット州に交換留学生として滞在しました。というわけで、日本で暮らしていた年数と、英語圏で暮らしてきた年数がほぼ同じです。夫がオーストラリア人なので、子供たちはハーフです。


 この辺は、私や私の家族にとっては当たり前のことなので、「書きたい」と思えるものがなかなか出てこないんですよね。出てきても、子どもの成長とか、夫婦の関係とか、ユニバーサルにみんなが思っていることばかり。慣れとは恐ろしいものです。私の姪や甥がウチにプチ留学してくれたら、彼らの目線での私の日常が分かるので、面白いかもしれません。


 メルボルンはステージ4のロックダウンで、これは私にとっても普通の状態ではありません。今しか書けない感覚だから、何かしらの形で書いて残して置きたいなと思っています。じわじわくるストレスや閉塞感。街に人がいない違和感。数週間前は普通にやってたことで警察に捕まってしまうという非日常性。ご近所の人や同僚との妙な連帯感。意外に元気に、普通に生きている人間の強さ。この辺を使って「パンデミック」とかいうタイトルでホラーでも書こうとプロットを練っていますが、今こんなことを思ってる人は世界で軽く17万人くらいはいそうですね(自己推定)。このご時世にあんまり読みたくない話です(笑)。


蛇足:今の夫が彼氏だったころ、日本に帰省したときに男性から「なんで外人がいいの?」てよく聞かれたんですよ。口説かれていたとかじゃなく。当時は「好きになった人がたまたま外国人だっただけ。」と本当のことですが、あんまり面白くない回答をしていました。これは、どういうことを聞いてたのかなと、たまに考えます。なんで気になるんだろう。私にとっては「なんで気になるんだろう」の答えのほうがよっぽど興味深いです。

 日本にいる時間が短かすぎて、友達の結婚式や同窓会などは、ことごとく行けないまま、もうアラフォーになってしまいました。将来もし同窓会に行く機会があって、元同級生の男性に同じ質問をされたとしたら、「ち○このサイズ」とか言ってみたらどういう反応するのかなぁと趣味の悪い想像をしています。笑えるのかな。

 

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