魔草についての覚書

ヤドリギ、マンドレイク、ベラドンナにレイヴェンド等々、魔法の手助けになったり、薬の材料になる魔草を育てるには膨大な労力がかかっている。


触れるだけで毒となるものや見るだけで呪いを帯びるも魔草もある。魔草園を見回る際には長いマントを羽織り、鏡を持ち、眼鏡をかけ、帽子をかぶるなど装備は多くなる。熟練の中には身体中に魔草に対するまじないをかける者もいる。魔法使い恰好をしているものは多くは新米だ。


また、魔草は魔力を帯びるため、それを支える土が魔力を帯びるのは自然なことである。だが、これが転じて呪われた土地が有名な魔草園になったりするものだから世の中はわからない。


さて、そうした魔力を帯びた土からは多くの魔虫が現れる。ミズアリ、イシムカデ、バクダングモなどそうした魔虫たちを、魔草に害を与えることなく駆除することはとても難しい。指をなくした魔法使いの多くは、魔虫駆除の仕事を失敗したものである。


魔草や魔虫を狙って、魔物が現れることもある。フォポッサという耳の大きな狸のような生き物は巧みに、魔草園に張られた結界の隙間を見つけて魔草を食べることで有名だ。


また、レオコーンという獅子のようなたてがみを持つ馬のような生き物は、腕の悪い魔法使いが張った結界程度ならば破って魔草園に入ってくるので厄介だ。


このため魔草園に入ってくる魔物を狩る、あるいは追い払うために人を雇う場合がある。ただ、この時雇う者には、よほどの腕と信頼がないといけない。結界を破る魔物は強敵であることが多く、魔草を盗んで横流しする雇われ者はそれ以上に多いからだ。


歴史上数えるほどしかないが、ドラゴンが魔草を食む大型の魔物を狙って現れ、魔草園ごと街を焼いたという話もある。そのため魔草園は国や街の外れも外れに作られることが多い。


こうして苦労して作られた魔草の多くは加工され、魔道具や高価な薬となり王侯貴族や上級冒険者に渡ることになる。駆け出しの冒険者に渡るのは、そういうものを作ったあとの、出涸らしで作った草薬がいいところだ。


魔草から得られる利益というものは非常に大きく、魔草園を持つ魔術師は小さな国よりも金を持っていることも少なくない。そういう魔術師のことを『杖を持つ領主』と呼ぶものもいる。


近年は『杖を持つ領主』に憧れる駆け出しの魔法使いも多い。かつての魔法使いにあった真理を探究する心が失われつつあることを感じる。まことに嘆かわしいことだ。

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