文字兵器
言葉で人は殺せるのか?
戦時中、演説や言論統制によって人々をある程度までコントロールした政府と軍部はその先を考えたのである。敵性国家の人々をコントロールする兵器を夢想した。あわよくば虐殺することのできる兵器を。
そうして考案されたのが文字兵器だ。
読むだけで思想や行動を操られてしまうような文字や文体。人を殺せる言葉。そういうものの研究がはじめられたという。研究の結果一冊の本という形をとった文字兵器は戦後に散逸してしまったともアメリカに接収されてしまったともいわれている。
私は生粋の蔵書家だ。文字兵器の噂を聞くと死んでもいいからその本を読んでみたいと考えた。あらゆる古書店の伝手や裏の人脈までも使い、やっとそれをもつという老人と会うことができた。
老人が手渡す本を私は震える手で受け取った。興奮で脳がはちきれそうだった。私は本を読むことができた。しかし内容は既視感のあることばかりだった。愛、正義、宗教、死。私は怒りで老人を睨むと老人は本を取り上げ、代わりに文字兵器について研究したノートを私に渡した。
ノートには、文字兵器の考案される前から文字は人々を支配してきたこと。人間が言葉を作ったのではなく言葉が人類を選んだこと。などが歴史や科学によって詳細に書かれていた。ノートの最後はこう締めくくられている。
『言葉に意思はあるのか?』
『言葉は人を殺すのか?』
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