猫の埋蔵金

私の家は家はそこそこに伝統があるらしく家屋は小さいが庭は広い。庭の奥まったところは裏にある山(後でわかるがなんとこの山もウチの所有物だった)につながっており、がけ崩れを防ぐために石垣になっている。


その石垣周辺で猫の集会をよく見かける。祖母が子供の頃にはすでに猫はよく集まっていたそうだ。


たまに猫に餌をやると、猫のお礼のつもりだろう翌日ネズミの死体が玄関に転がっていたりする。


あるとき、体格の大きいぶすっとした猫が、やせ細った子猫をくわえて家にやってきた。猫の手には余ったらしく私たちに協力してほしいようだったので、ネットで調べながら猫用のミルクをやったりした。一週間ほど世話をすると毛艶や体型もよくなった。ありがとうというように、にゃあと鳴くと相変わらずぶすっとした猫は子猫を連れてどこかへ行った。


話は変わるが、我が家には伝統はあっても金がない。裏山と大きな庭の一戸建て、世知辛いことに税金をとんでもなく持っていかれるらしい。山だけでも手放そうと父は祖母に提案したことがあるが、入り婿である父は祖母に弱く必ず言い負かされるのだった。


私や弟を大学にまで行かせたいから金が欲しい父母と、伝統ある家と山を手放すわけにはいかないと考える祖母。そういうわけで私が大きくなるにつれて父と母と祖母の喧嘩は増えていった。私は喧嘩が始まると猫の集会の近くで本を読んだりした。


ある時、ふと言葉がわかるはずはないと思っていたが、吐き出せずにはおれなかったので、猫たちにそのことを喋ってみた。しばらくすると、どこからともなく老猫が集会にやってきた。しっぽが二つに割れていないのが不思議なほどの老猫。どこかに案内するそぶりをみせたので家に居たくない私はついて行くことにした。


石垣を上り、茂みをわけいり、山の奥深くまで歩くと、昔神社かなにかあったらしい土地。壊れた灯篭に散らばった瓦。私と老猫が来るとそこを守っていたらしい二匹のキリッととした猫がにゃあと頭を下げる。そのうちの一匹は昔助けた子猫だった。久しぶりーと顎をなでると、表情が緩みゴロゴロのどを鳴らして甘えてくるのがとっても可愛かった。


老猫が鼻で指し示す場所を手とかその辺に転がっている石で掘ってみると、木箱が出てきた。箱を開けるといっぱいの小判や古銭。これで問題は解決じゃというようにフンと鼻を鳴らす古老の猫。大変なことになったなあと思った。


家の古い事柄に祖母は詳しい。古銭を一枚山で拾ったといって、祖母に由来を聞いてみると、訥々と猫との我が家の歴史を語った。何でも戦国時代に没落した武家である私の先祖は再興をかけ埋蔵金を今の裏山に埋めた。人よりも信頼できる猫に埋めるのを頼んだとかなんとか。


私はこの話を小説に書くことにした。多少話題になり、山と家の税金を納める助けになる程度には稼げた。


あの時埋めなおした埋蔵金は今も裏山に眠っている。きっと今も猫たちが守ってくれているだろう。







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