風の生まれた場所
ずっと昔、まだ世界が物理学で支配されていなかった頃、石や空気、炎など現在では単なる物質や物理的な現象と考えられているものにも命はあった。そういう話が山ほど残っている。
この中でも僕は風の話が好きだ。風の生まれた場所を知っているだろうか?諸説あるが、空だといわれていることが多い。空は風の先祖なのだ。
有名な話のひとつにこういうものがある。ある時、空の中で地上に行ってみたいものがあらわれた。地上に着いた空(この時点で風といってもいいだろう)は、子供のように喜び大地を駆け回った。結果として大地の生き物が多く死んだらしい。地上を荒らされた大地はたいそう怒り、風を殺そうとした。その際、大地が生み出したのが山なんだそうだ。
話はそれるが、鳥の先祖は風が作ったという話もある。昔、風は一緒に速く空をかける仲間を欲しがった。しかし、当時、風以外に空を飛べるのは雲しかいなかった。雲はのんびり屋だったので風の思うように飛ばなかった。怒った風は雲をちぎって食べようとした。食べられまいと必死に逃げようとした雲の末裔が鳥の先祖なのだという話だ。
さて、時を過ぎるごとに風はいろんなものを食べて成長していったらしい。空気や雲、炎や冷気、風は何でも食べた。最終的には、空から降りてきた時からは考えられないほど大きくなっていったという。
今も風は生きていると僕は信じている。ただ大きくなりすぎてしまったから、風を命や生き物として僕らが認識できなくなっただけなのだろう。
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