視線

見られている。


ある夜、私のほかには誰もいないはずのアパートの部屋の中でふとそう感じた。


盗撮だろうか?ストーカーだろうか?夜通しその原因を調べたがわからなかった。心当たりは全くなかった。私は自らのことを一般的に魅力的な女だとは思っていなかったからだ。そういう女にも需要があることは後で知ったが。


朝になり着替えて出社している間にも、会社で仕事をしている時も視線はずっと私をからめとっていた。


視線とは何だろう?肌で感じる。ねばつくような。ドロドロとした感情がのっている分、手で触れられるよりもある意味で生々しい。


私は次第に心地よくなっていた。


家では日に日に大胆な格好をとるようになっていた。会社でも雰囲気が変わったといわれるようになった。男性からの視線が心なしか増した気がした。


付き合っている男を私の部屋に呼んだ。視線は相変わらず続いていたが、私は構わず付き合っていた男と体を重ねた。いつもよりも積極的な私に男は戸惑っていたように思う。その後その男とはすぐに別れた。


視線は今も続いている。視線に抱かれるように私は眠った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る