魔法使い
暗い森の奥、古いが頑丈な家の前で焚火を囲む老人と若者。彼らは魔法使いとその弟子である。静寂な我慢ができないかのように若者が口を開く。
「いつになったら魔法をおしえていただけるのですか?」
「もう教えた」
「しかし呪文を唱えても魔法がうまくいかないのです。見てください」
その場で呪文を唱える若者。呪文に空気が呼応したかのように風が起こるがすぐに止まる。老人は一瞬横目にそれを見たがすぐに目を焚火に戻すと。
「何も学べておらんな」
「いいえ、先生のところにある魔術書はすべて読みました。先生の作る薬もすべて一人で調合できます。薬草や鉱石の名もすべていうことができます。これ以上何を学べというんです?」
老人は若者に背を向けたまま答えた。
「知るということは言葉では足りんのじゃ」
「しかし、言葉がなければなにも知ることはできません」
「屁理屈だな」
「道理です」
老人は、っくっくと笑う。若者はすこしむっとした顔をする。
「見て、感じて、覚えろ」
老人はそういうと切り株から立ち上がりさっさと家に帰ってしまう。
若者は老人の言ったことを考えているのか焚火をじっと見つめている。
焚火の音だけが森の中で響いていた。
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