天気予定表
ぽつぽつと水滴が当たったかと思うと、すぐにざあーっと雨がふりだした。
腕で雨から身を守るようにして走る青年。
彼が空を見上げると整然とした街が見える。
宇宙に浮かぶ円筒状の居住空間、一般的にはコロニーといわれるものだ。ここでは天候や人間の行動が厳しく管理されている。そのためこのコロニーの管理局によって、天気の予定表、人間の行動表なんてものがある。
青年は雨宿りをするのにちょうどいい建物を見つける。今でいうコンビニエンスストアのような建物、改装中なのか中には入れないが、庇があれば十分に雨がしのげると思ったのだろう。
ずぶぬれになった顔をぬぐいながら恨めし気に空を見上げていると隣から話しかけられる。
「天気の予定表を見ていなかったのですか?」
その声に青年が相手の顔を見ると相手は同じ年くらいの青年の好みの容姿をした女性であった。ちらりとそれを確認すると青年はこたえた。
「今日の行動予定表にその行動が書いてなかったもので。あなたこそ、ここにいるのは普通じゃないように思えるのですが」
「私は今日この時間にここにくるようにと予定表に書いてあったのです」
バカにされたと思ったのか女性は憮然とした表情である。
「これはアナログな出会いを演出したい管理局の粋な計らいというやつでしょうか?」
「そうに違いありませんね。旧い人の考える妄想の煮凝りのような出会いかたです」
二人は顔を見合わせるとクスリと笑いあう。
雨が上がると二人は一緒に歩きだしていった。
ふたりの行動予定表は、この後の時間は白紙だったからだ。
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