カラスの質屋

カラスはキラキラしたものを集める習性がある。最終的に集めたそれらはどうなってしまうのか皆さんはご存じだろうか?


そう、質屋に流れるのである。


人間に化けたカラスが経営している質屋である。


寿命の倍も生きれば変身の一つや二つは大概の動物はできるもので、カラスもご多分に漏れずそういう動物の一種だ。


質屋に流れるまでの大きな流れはこうだ。


まず、街やドブやごみ収集所などあらゆるカラステリトリーや、土鳩や雀ヒヨドリなどのカラスネットワークを使いあらゆるところからキラキラしたものを集める。これは一番若者の多い街にいるカラスの仕事である。重労働だがこうした仕事を経ることで、人間と街を大いに学ぶ。カラスが賢いのも当然である。


そして集めたキラキラを森で一番深い場所で一番太い木の上に作られたカラスの巣に運び込む。ここは通称カラスの集会所と呼ばれる。キラキラをカラスの集会所に運ぶカラスは森で一二を争う力持ちなことが多い。昔は鷹や隼に勝てるようなカラスがこの任についたそうだ。立派なものである。


次に、人間にとって価値のあるものか価値のないものかを判断する、鑑定士のカラスにキラキラが回される。たいがいは森で最も知恵のあるカラスで、これは人間に化けるよりも重く難しい任の一つであるとされている。


価値のあるものの仕分けが終わると、カラスの集会所のある木の下に人間が現れる。もちろんカラスの化けた人間だ。カラスの化ける人間は黒目が少しだけ本物の人間よりも大きい。30分街を歩けば一度はすれ違うだろう。すれ違う人をよく見てみるといい。


ちなみに服装は様々カラス毎に様々だが、真っ黒な服を絶対着ないことだけは掟に定められている。はるか昔に西洋では魔女狩りの原因の一つにもなったからだ。


今回追うカラスの化けた人間の服はグレーのスーツでやりての営業マンといった風貌である。カラスは己の黒い色の羽を誇りに思っているので髪を金髪には絶対しないものだ。


さてこのカラスの化けた人間のあとを追ってみよう。


カラスの住む森のある山の麓に軽トラックが停めてある。これにキラキラを積んでいく。事情を知らなければものすごく怪しい光景であるので、一般的には本物の人間からは見つかりづらい場所でこれを行う。


トラックは街に出る。街と街の間にポツンとある奇妙な質屋をよく見かけるだろう。実はそういう店はカラスが経営していることが多い。この場合仕入れ値が実質無料なため、よほどのことがない限りうまくいく。そこにトラックはキラキラを運び込む。


この質屋ではレジ一人社長一人社員一人の三人でやっている。社長と社員はカラスだがレジは人間だ。レジの人の採用基準は鳥類をペットに飼っていることとその飼育状態がいいことらしい。


こうして質屋にキラキラが並ぶことになる。


もしかしたらあなたのなくしたキラキラがこの店にはあるかもしれませんよ。


あなたも是非カラスの質屋を街で探してみてはいかが?

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