見守る二人

「コトリ、シノブちゃんだけど」

「うん、面白そうなことやってるで」


 ユッキーも気づいたか。


「コトリも参加したいんじゃない」

「今回はやめとく」


 参加したいけど、シノブちゃんの恋路を邪魔するのはアカンやろ。それにしても因縁めいてるよねぇ。あのバーでホワイト・レディを飲んでる時に現れた男が、歴史オタクの医者だって。イヤでもカズ君とのことを思い出してまうやんか。


「シノブちゃんって、もしかして」

「らしいよ。宇宙船騒ぎで専務になってもたから、気楽にお付き合いなんて出来へんかったみたい」

「そりゃ、悪いことしたけど、本当に愛する男だけにするのもロマンチックじゃない」


 あははは、ユッキーらしいわ。今でこそ必ずしもじゃなくなったけど、ユッキーの基本は純情一途のツンデレ愛だもんね。


「コトリは見たの?」

「うんにゃ、さすがにまだ」

「一度コッソリ見てきたら」


 見てみたいけど、あのバーでコッソリは難しいな。つうか、会えばコトリも舞い上がってしまいそうなんや。そりゃ、コトリと歴史ムックを出来るほどの相手なんて、そうそうおらへんし。


「思い出してるんでしょ」

「そりゃ、そうや。あん時はユッキーに潰されたし」

「しょうがないでしょ、呪いの封印があったんだから」


 ユッキーはそれを振り切ったばっかりに、百日の死を甘受してるもんね。あの時はシオリちゃんが勝って良かったとしか言いようがあらへん。悔しいけど。


「式はどうする」

「気が早すぎるで。ほいでも、いつかは三十階に来るやろ」

「その時は問題ね」


 ここは考えたらなアカンとこやねん。シオリちゃんの恋の最大の障壁はエレギオンHDの専務であること。どうしたって男が退いてまう要素になってまうんよね。


「会社、辞めてもらう?」

「辞めへんやろ」


 エレギオンへの忠誠心も篤いんや。そうしたって部分もあるけど、前に記憶の継承を求めた時の迫力は凄かったし。


「肩書増えるって不便だね」

「でもそれぐらいは乗り切れるって信じてる」


 それでもコトリはホッとしてる。ミサキちゃんもそうやけど、シノブちゃんもまだ宿主代わり二回目やんか。どうしたって前宿主の記憶が残ってまうんやけど、新しい恋に熱中してくれてるやん。女神の最後の生きがいは恋なんや。これがちゃんと出来てるやん。


「シノブちゃんなら間違わないと思うけど」

「もし不幸な目に合わせよったら、タダじゃおかへん」

「あは、さすがに親ね」


 気分だけな。


「コトリはどうするの」

「今回の寿命みてから考えるわ」

「そうだよね、今まで通りだったら、十年ぐらいしか残ってないし」

「困ったもんや」


 寿命もなんとかならんかな。せわしのうてしょうがないやんか。

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