第48話――魔王さんと勇者様ご一行、最終決戦! 8
「くそっ! こいつら今までよりパワーアップしてないかっ?」
コンタク党の戦闘員たちを相手にしていた晋太郎は、その強さに内心舌を巻いていた。
「ふははははは! コンタク党の科学力をもってすればァ! 戦闘員のバトルスーツの強化などビフォア・ザ・ブレックファースト!」
「言っとくけどな、『朝飯前』なら『ア・ピース・オブ・ケイク』が正しいぞ」
「ええい! 冗談の通じぬヤツめ! 食らうがいい! ハイグレードコンタクトレンズビームっ!」
晋太郎の足下に眩しい光の束が着弾する。アスファルトで舗装された中庭の地面が、あっという間に瓦礫と化す。
「ほらほら。しっかりしないと大事な仲間が倒されてしまうぞ!」
「いやっ! 離してっ!」
ビーム攻撃による土埃の向こうで、ましろの声がする。まるで影絵のように、羽交い締めにされたましろの姿が土埃に映し出された。
「ましろさん! くそぉ! ましろさんを放せぇぇぇぇっ!」
土埃のスクリーンに、晋太郎は身体ごとぶつかっていく。土埃を突き抜けて視界が晴れると、そこには一人の戦闘員に後ろから胸を揉みしだかれているましろの姿があった。思わず鼻血を吹きそうになるのを、晋太郎は理性フル回転で回避する。
「おのれ、なんて羨まし……じゃない、妬まし……でもない! なんて卑劣な! その手をましろさんから離せ!」
「コンターック! そうはいかない! こんな役得滅多にないからな! たまには戦闘員にご褒美があってもいいじゃないかあああッ!?」
怒りにまかせて晋太郎は戦闘員をぶん殴る。鼻血を吹いて倒れた戦闘員を、ゲシゲシと足蹴にする。ボロ雑巾のようになるまで戦闘員を蹴り続けた晋太郎は、仕上げをましろに任せた。
「えーっと……。えいっ!」
ズシン! と地面が震えるほどの威力。哀れな戦闘員の後頭部は、完全に地面にめり込んでいた。
「こんなものでどうでしょう?」
「ナイス
その様子を見ていた由隆は、マントを翻し、さっと右手をあげた。
「「「「「「「「「「コンタ――――ックっ!!」」」」」」」」」」
どこからか、さらに大勢の戦闘員たちが姿を現した。
「ちょっ! まだ戦闘員がいたのかよ!」
「フフフ。我々コンタク党を舐めてもらっては困る! 戦闘員は随時求人を出して募集中なのだ!」
日本の失業率の低下に一役買っている悪の組織である。
「さあ、戦闘員ども、『眼鏡に選ばれし者』どもを叩きふせるのだ!」
「「「「「「「「「「コンタ――――ックっ!!」」」」」」」」」」
***
多数の戦闘員が乱入してきて、戦いはまた大乱闘になってきた。郁乃は小さな身体に不釣り合いな巨大ハンマーを自在に振るい、周囲の敵をなぎ払っている。だが、倒しても倒しても、戦闘員は起きあがってくる。以前戦ったメチャクチャ弱い戦闘員のイメージとはまるで違った。
「とは言っても、別に『強くも』ないんだけどね。ただ打たれ強くなってるだけで」
「コンターック! バトルスーツが強化され、通常の三倍の強度(当社比)になったのだ! これで貴様のハンマーなど怖くない~~~~ッ!?」
戦闘員が言い終わる前に、郁乃のハンマーが横殴りに戦闘員を襲った。はじき飛ばされゴロゴロと十数メートルも転がったあと、ようやく止まった戦闘員はぴくりとも動かない。
「そっか。じゃあ、ボクは通常の三倍の威力で叩けばいいんだね。ハンマーを赤く塗って角付けた方がいいかなぁ。このくらいの威力だと、強すぎるかなぁ?」
にっこりと満開のひまわりのような笑顔を見せる郁乃。それを見た戦闘員たちは、互いの背中を押し合い、何とか自分が後ろに隠れようとする。
「順番なんか関係ないよ。ボクがきっちり地獄へ送ってあげるから。安心して!」
「コンタ――――ックっ! 安心できるか―――ーっ!」
蜘蛛の子を散らすように、黒覆面に学園制服(強化済み)の戦闘員が逃げ出す。郁乃は唇をとがらせて、その後を追いかけ回す。自分の身長より大きなハンマーをブンブン振り回しながら。
「こらーっ、逃げたら殴れないじゃないかーっ!」
「コンタ――――ックっ! 殴られたくないから逃げてるんじゃないかーっ!」
「郁乃! 弱い者いじめみたいなことはやめろ! 校舎の窓から生徒たちが見ている!」
晋太郎の声に校舎を見上げると、確かに窓という窓には一般の生徒たちが張り付いて戦いの様子をみていた。
「だから、あくまでも正義の味方っぽく倒すんだ!」
「正義の味方っぽく、かぁ……。それじゃあ、こういうのはどうかな?」
郁乃はハンマーを両手で掲げ、ジャンプ一閃、一人の戦闘員の頭上高く舞い上がった。
「ハンマーコネクト!!光になれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「それは確かに勇者っぽいが、著作権的にやばいからやめるんだ!」
「コンタ――――ックっ! 光になれた方がずっと楽だあああああっ!」
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