第5話

人間の子ども時代というのは、幼児的万能感というものが絶対に必要である。

自分の選択は正しい、という思い込みがないと行動できないからである。

もちろん、他者から見ると、未熟な点が目につくかもしれない。

けれども、自分が未熟であることに気がつくのは、大人になった後でいい。

物事には、順序というものがあるので、温かく見守ることが大事だと思う。

若者の年代になると、とにかく世界の出来ていなさというものが、我慢できなくなってくる。

世界が間違っていて、大人が間違っていて、無性に腹が立つ。

理想の社会を作りたいと願う。

大人には大人の言い分というか、事情があるのだけれど、ここで若者を怒ったり、圧力をかけたりなどは、止した方がいい。

若者は、未来の人類なのだから、自分たちの手で社会を作りたいと思うのは、当たり前で、理想に燃えた若者時代は、人間にとって、必要である。

そっと、古典の本でも差し出すといい。

「なぜ、教えてくれなかったのか!!」

と、責められることは、これで無い。


そして、大人になり、夢破れて、現実の日常生活やる時代がくる。


世界に正しいも正しくないもなく、善人も悪人もなく、境界線なぞなく、知れば知るほど訳のわからない混沌の世界になっていく。


現実世界には、そもそも正解という選択肢がないこと、自分の見ている世界が一部でしかないこと、自分が未熟であること、自分が間違えること。


これを認めることのできる大人は、大変恵まれた環境で育ってこれたのだから、けして自分一人で育ってきた訳ではないから、未来の人類のために、心を砕き、力を尽くして欲しい。

自分の未熟さを認めることのできない大人は、つらい人生を背負っているのだろうから、温かく見守ることが大事かと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る