幕間 法務教官
「あの三人を同室にするとは、なかなか絶妙な組み合わせじゃないか、レン。お前が考えたのか」
「絶妙ですよね⁉︎まあちょっとだけキズナに相談しましたけどね」
「お前な、先生が生徒に居室配置を相談するなよ」
清心寮の教官室。ショウとレンが笑いながら話している。
ホールの手前、寮の入り口側にある法務教官の執務スペースが教官室だ。
「いやー、ここで暮らしてた時の癖でつい」
笑ってそう言うレン。
「やれやれ。前も言ったと思うが、もうお前は法務教官の一員だ。あいつらの兄貴分的なポジションにいるのは良いが、先生と生徒の一線はきちんと引いておけ」
苦笑してそう言うショウ。
「わかってますよ、ショウ先生。でもそれを言うなら、先生だって僕のことをいつまで経っても呼び捨てじゃないですか。生徒の手前、ちゃんと「レン先生」って呼んでくれないと」
「これは一本取られたな。それもそうだ、すまん。これからはせめて生徒の前ではそう呼ぶよ、レン先生」
こいつも少しずつ法務教官らしくなりつつあるな、とショウは嬉しく思う。
レンはこのユーゲント少年院が立ち上がったばかりの頃に入ってきた生徒の一人だった。当時は荒れに荒れて、反抗ばかりしてどうしようもない悪ガキだったが、変われば変わるものだ。そしてまさか、よりにもよってこいつがここで教官になりたいと言ってくるとは。
「まあ、ともかくライルのこと、よろしく頼むぞ。カッとなると抑えの効かないところがあるからな」
「わかってますって。あ、そうそう、あいつエリスに気があるみたいですよ」
「エリス?ずっと単独処遇だったくせに、どこで会ったんだ」
「さあ、わかりませんけどねー。炎と氷、良い組み合わせですよね。僕はなんとなく、運命的なものを感じてるんですよ、彼らに。ライルの熱い想いなら、あの子の硬い永久凍土の心を溶かせるんじゃないかって・・・」
夢見るようにそう言うレンに、ショウが苦笑する。
「ロマンチストも大概にしておけよ、レン。しかし、そうか・・・」
そう言い、何事かを考えるショウ。
「ショウ先生、そろそろ出寮ですよ」
「そうか、もうそんな時間か」
思考を中断し、ショウはレンと共に立ち上がる。日課の開始時間だ。朝の準備を終えた寮生たちは、これからそれぞれに定められたカリキュラムに従い、教官の指導のもと、学習や武術・魔術の訓練、運動などに取り組むことになる。
そして一日24時間を生徒と共に過ごす彼ら法務教官にとって、同僚と雑談めいた情報交換をするちょっとした時間は貴重なものだ。この時間に彼らは生徒たちの情報を共有し、今後の指導方針を、お互いの役割を、決めるともなく決めていくのだ。
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