第73話 もたもたするから
「ご馳走様でした」
ラタトゥユを完食したヤクトが器に匙を添え、礼儀としてその言葉を口にすると「お粗末さまでした」と、やまびこのように挨拶が返ってくる。
ヤクトは魔王城で食事を堪能していた。
ギルド『究極英雄』は他プレイヤーからの妨害から身を隠すために、あえて敵陣である魔王城で作戦会議を行う奇策を用いていた。
そのこと自体は成功と言えるのだが、四天王“陽夏”の存在が大いに?誤算だった。
ギルドの女性陣が陽夏と意気投合してしまったことで会議は思うようには進まず、結局、話し合いよりも食事を味わって食べることが優先される状況が生まれてしまったのだ。
加えて言えば出された料理が絶品とあってヤクトは素直に怒れない。
自分の味覚を披露する機会で恥をかいてしまったためなおさらだ。
ヤクトが思うように状況を動かせず翻弄されているのをみかねてか、冬雪が口を開く。
「なんかもう…ぶっちゃけちゃうんだけど…挑戦できる四天王って最初に誰の区画をクリアしたのかで順番は決まってるんだよね。
だから誰が挑戦しやすいか情報収集してから選ぶ……というより、君たちは僕たち2人の次の順番であるハチコさんに挑戦する以外に道はないんだ」
話し始めるタイミングを窺っていた冬雪。
彼とヤクト以外の者達の食事もおおかた片付いていたが、元々食事以外の動きも緩慢な雲ちゃんだけがゆっくりとマイペースに食べ続けている。
ヤクトが質問し、それに冬雪が答える流れと思われていた場面にあっていきなり攻略情報を暴露したのだ。
冬雪に視線が集まったのは自然な事だろう。
「ほんとは君たちが入念に対策を施した後になってから区画に順番があるのを知って慌てる…そんな様子を眺めて楽しむつもりだったけど、ちょっと予定が変わったんだ。
主に、作戦参謀のご意向…という意味でね」
そこまで言って、冬雪は視線をエレベーターへと向ける。
これは各区画と玉座の間につながる唯一の通路であり、現時点でこのエレベーターを通って現れる人物がいるとしたら、魔王か四天王だけである。
冬雪の視線につられて他の面々もエレベーターを見ると、閉じるドアの前に小柄な女性が立っていた。
褐色の肌に三つ編みの黒髪を肩から流したダークエルフで、冒険家の格好をしているが、冒険感の全くない丸メガネがチグハグな印象与える女性である。
「ハチコ…リード……!」
ヤクトは驚愕のあまり自然とその名を口にする。
それも無理からぬ話である。
目の前に現れた女性はヤクトにとって最大の謎であった。
いくら調べても情報がまったく得られない特異な人物…。
累計ゲームプレイ時間がベテランと呼ぶにふさわしいものであるのに、レベルが異常に低く、まるでログインだけして何もしていないような謎めいたプレイスタイル。
多くの手間とお金を割いてようやく得られた情報がこの程度だったのだ。
その謎の中心が自分から姿を見せたのだから当然の反応と言えるだろう。
ハチコは究極英雄をスルーして陽夏のもとに歩み寄る。
「私にも何かいただけますか?」
「はいはーい。いつものでいい?」
ハチコは首肯しつつ、冬雪の横にスペースを作ると椅子を召喚してそこに座った。
究極英雄がいることにまるで驚いていない様子から、おそらくこれまでの会話を盗み聞いていたのだろう。
ゆえに会話にそのまま加わった。
「今お聞きした通り、冬雪さんが急にあなた方へと情報を明かしたのは私の指示です。これはあなた方を試金石として、我々の作った区画の難易度を測りたいと思ったからです」
ハチコは自分の耳を指でトントンと叩く。
「…なるほど、そういうことでしたか」
ハチコの少ない言葉と動きだけでヤクトは幾らかの事情を察する。
「こちらの四天王、冬雪さんと我々のやり取り…いえ、この空間におけるすべての様子をあなたはモニタリングしていたというわけですか。
冬雪さんはご自分で責任を取れる範囲の情報しか明かす気はなかった。しかし、貴女はそれ以上の…魔王軍全体の情報を扱う権利をお持ちなのですね?
そして貴女ご自身がこうして我々の前に姿を見せて語らうことに利益を見出した…ということなのでしょうか?」
直前まで驚愕の表情を貼り付けていたヤクトだったが、堂々と切り込む。
ここで怯んでいては英雄なんて名乗れないだろう。
ハチコは僅かに思案した素振りを見せた後、口を開く。
「私は事情説明のために来たわけではありませんので、どう考えてもらっても構いません。
明確なのは、あなた方が挑戦可能なのは私の区画のみである。ということだけです」
などと毅然とした態度で断言するハチコだが、実情はもっとシンプルである。
究極英雄の様子をモニタリングしていたのはその通りなのだが、そこにいたのはハチコだけではなくヌル、あまねくを加えた3人である。
流石にハチコだけでこの状況を作り出すような大きな決断はしない。玉座の間から魔王が決定を下して指示を出していたのだ。
ちなみに陽夏はこれらの計画には加わっていない。
彼女がそういう面では器用ではなく、インカムを相手に間違えて返事をしてしまうだろうと予想されたためである。
当初は適当にあしらいつつ、究極英雄から得られる情報があるなら引き出してお帰りいただく方針だった。
そのため、冬雪がチェスでヤクトに一杯食わされても特に指示を出すことはしなかった。
しかし、あまねくが考えを改めたことで方針が変更された。
すなわち。『この場所での監視に俺が必要な理由を感じん。地下での修行に戻らせてもらう。
いっそピースフルを相手に模擬戦でもした方がよほど有益だろう。
いや……ヌル殿、
あまねくは単に自分が戦いたいだけなのだが、究極英雄という頂点は施設の難易度を測るテストプレイヤーとしては最適だ。
彼らを使っての実質的な運用テストができれば大きな利益があるとしてハチコも承諾した。
そして、究極英雄の目的を会議から四天王挑戦へと変えさせるために、撒き餌としてハチコが姿を見せた。
「私の区画はあなた方なら一瞬で攻略が終わるでしょうから、特に警戒される必要はありませんよ」
「突然な提案ですね…。どう考えても罠なのですが?」
「私が策をめぐらせていると妄想するのはあなた方の勝手ですが、結局挑戦することになるなら、今日でも明日でも、いつ挑戦しても変わらないのではありませんか?」
ヤクトを相手に感情論をぶつけても無意味であるため、ハチコは事実だけを淡々と述べる。
「ううむ…あなたに挑戦すること自体に抵抗はありませんが……しかし…。今までの経験から素直に受け入れることが難しい状態ではありますね…」
そうして唸るようにしばらく悩むヤクト。
彼の選択が究極英雄の命運を握っているといっても過言でもないため、慎重になるのも仕方のない話ではある。
だが、こうして罠を警戒して時間を費やしたのが悪かったのだろう。
優雅と呼べなくもないティータイムに突然乱入する者があった。
「はは……はーっはっはっはっは! ようやくこの時が来たぞ!」
よく通る声でそう叫ぶ人物。
魔王軍と究極英雄以外の第三者が出現する。
目を向ければ、魔王城の入り口に“リック・シモンズ”が姿を見せていた。
リック・シモンズ。
彼は全ギルド連盟の中で最大人数を誇る“ホライゾン”、そしてその中核である大規模ギルド“山崩し”のリーダーである。
多くのプレイヤーを束ねる有名人であるが、地獄の沙汰も金次第と言わんばかりに貪欲に資金を集めており、手段を選ばないために悪評も多い。
本人の尊大なキャラと相まって好きか嫌いかの印象のはっきり分かれる人物でもある。
「ほぉぉ? 魔王軍の熱烈な歓迎を潜り抜けて入城を果たしてみれば、よもやそこで四天王と食卓を囲んでいるのは究極英雄様ではあるまいか?
ずいぶんと仲が良いのだなぁ、貴様らはいつから魔王の軍門に降ったのだ?」
リックが語る間にも、後に続いて数名が転移してくる。
リックの後ろに並ぶ形で出現し、物珍しそうに魔王城内を見渡している様子から、おそらくはリックと同じ山崩しのメンバーなのだろう。
彼らはあちこちを眺めてから、究極英雄と四天王が同じ卓についている姿に目を留める。
「四天王ハチコ…? 初めて見たぞ」
「アイツら四天王と仲がよさそうだぞ…? 裏で繋がっていたということか?」
「腹減ってきた」
「リックさん、俺で五人目です。約束通り先着順報酬をお願いします」
山崩しのメンバーたちが口々に好き放題話しているが、発言にも態度にも一貫性がない。
それは山崩しの基本スタイルが目標に対して成功報酬でギルドメンバーを動かす方式であるためであり、魔王城に入ることだけを目標にしたために入った後の行動は指示されていないのだ。
人の口に戸を立てることができない以上、山崩しのメンバーが見たこの光景は世に広まることは避けられない。
ヤクトは『究極英雄と四天王が仲良く食事をしていた』という噂が広まった場合のメリットとデメリットを素早く計算する。
究極英雄に対抗心のある山崩しが流した噂という点では対処しやすいが、究極英雄に友好的なギルドはどう捉えるか…と状況を想定しはじめるが、やはりこの状況を変えたのはヤクトの想定外の彼女であった。
「いらっしゃいませ! ここで食事はどうかしら? 今ならランチタイムメニューがちょっとおトクに提供できるわ!」
陽夏がニコニコしながらリックたちに話しかける。
「っ! 四天王の“陽夏”かっ!」
自然に近づいてきた陽夏に対してリックは一度は成り行きを見守っていたが、名前の表示を見てから慌てて武器を抜こうとして体が動かないことに気付く。
「むっ! 戦闘禁止エリアだと!? まさか本当にただのレストランだとでもいうのか?」
メニューを開き、エリアの情報を確認したことで、陽夏がオーナーのレストランだと気付いたのだろう。
「リ、リックさん、どうしますか?」
「アイツらも飯食ってるところをみると罠じゃあないみたいですが…」
「ど、どんな料理が出てくるんですかねぇ…」
「ハッキリ言って、美味しいわよ!」
キラキラと悪意のない目で注文を取りに来た陽夏に影響されてか、山崩しのメンバーたちは自身が客であるかのように認識し始める。
「フン、いらぬわ」
しかしリックが陽夏を拒絶するようにメンバーたちを引き戻すと、陽夏からピースフルに視線を動かす。
「なるほど…。情に
「………」
陽夏に対して友情を感じているという点では究極英雄たちは否定できないため、ヤクトとピースフルは特に口を挟むことはない。
今更に敵対した態度を取るにしてもプロミネンスと雲ちゃんが嫌がりそうだ。
リックは山崩しのメンバーに向かって言葉を続ける。
「我らが参ったのは魔王を討滅せしめるためであろう? くだらん友達ごっこに付き合う暇はないのだ、早々にあまねくの四天王区画とやらに向かうぞ。主戦力メンバーを召集せよ」
「わ、わかりました!」
それぞれがメニューを開いて魔王城の外へと通話を始める。
四天王への挑戦は一度に30人までしか入室することはできないが、山崩しの人数規模は全ギルドトップのため確実に最大人数で挑むだろう。
…実際に戦闘に耐えうるレベルの技術をもった人数がどれほどいるかは別として。
「このあとすぐに挑戦されるつもりですか?」
突入に向けて装備やアイテムを確認しているリックに声をかけたのはハチコだった。
リックはハチコを一瞥するだけで、自分のメニューから目を離すことはない。
「そうだが。何だ、そこな中途半端な英雄様が予約中だとでも言うのか?」
「いえ。ですが挑戦できる四天王には順番がありますので、あまねくさんより先に私の区画に来ることになります。
あなた方が来る前には私自身が準備している必要がありますし、こうしてお茶を理由に不在にするわけにもいきません」
「挑戦相手が限られている…だと?」
「ええ、私が敵勢力の前に姿を見せていられるのは面倒な説明を省くためでもあります。信用するかは別としても、私は事実を述べているだけですよ?」
ハチコはわずかに首を傾げる。
そんなハチコをリックはギロリと睨む。
「ふん……貴様、余を謀ろうとしているのではあるまいな?」
メニューを操作する手を止めて、脅しかけるようにハチコに凄んでいる。が、なぜかその様子を眺めていたヤクトが笑いを堪えきれずに声を漏らす。
「ふっ…くくく…」
声に反応して今度はヤクトを睨む。
「…気でも触れたか? 何がおかしい?」
「いえ、あまりにも貴方が滑稽なことを口にしているなと思ったもので」
「……安い挑発に乗るほど余は暇ではないぞ? 貴様らと違ってな」
未だ食卓から動かないヤクトに皮肉で返すが、リックの顔には余裕がなく目が笑ってない。
心中で沸騰していることは一目瞭然だった。
ヤクトはリックが本人の言う安い挑発で釣れたことに気分をよくして答える。
「貴方はここを何処だと思っているのですか、魔王城ですよ?
我々勇者勢力にとっては敵の本丸ですし、貴方が話している相手はその魔王の腹心と目される人物です。
そんな相手に『謀ろうとしているのか?』だなんて分かりきった質問をするものですから」
ヤクトの指摘でリックはようやく理解する。
“安全かどうかを敵に尋ねる”という的外れな行動をしてしまった。
本来は相手の言葉に裏があることを前提として、それを打ち破るなり、罠にかけられてもリカバリーが効くように立ち回るのが上級者というものである。
自身の行動がヤクトの失笑をひきおこしたことも理解できるくらいにトッププレイヤーとしてあるまじき愚行であり、リックは尊大な態度から一転して羞恥に震える。
顔を真っ赤にした後、振り返る。
「な、何をしている! もたもたするな、四天王に挑戦しに行くのだぞ!」
リックはメンバーにそう叫ぶと、肩をいからせて別のフロアへ繋がるエレベーターへとずんずんと進んでいってしまう。
「ああ、ちょっと!」
「他のヤツらを待たないんですか〜」
消えたリックに続いて、慌てた様子の山崩しメンバーが追いかける。
さすがのリックも人数が足りないまま四天王に挑戦するなどという無謀な行動をするということはないだろう。
だが逃げ去るようにハチコの区画に向かってしまったのは、恥をかかされた究極英雄と同じ空間にいたくないという気持ちが先に立っていたというところだろうか。
嵐が去るように一転して静寂が訪れた。
このような結果であるが四天王挑戦に挑戦者が現れるとわかった以上、迎え撃つ側は準備しなくてはならない。
「ううん……なんというか…せわしない人たちですね」
まだ何も飲んでないのに…とハチコが恨めしそうにリックを見送りながらため息をつく。
「お待たせー! いつものをどうぞー!」
ここ数分のやり取りを知らず、いつの間にか厨房に戻っていた陽夏がハチコに飲み物を差し出す。
「ごめんなさい陽夏さん、急に挑戦者の方が現れてしまいました。
ソレは……そうですね、こちらのヤクトさんにお渡ししていただけますか?」
「!?」
ハチコは言うだけ言うと魔王軍メニューから自身の区画にワープして、究極英雄たちの前から姿を消す。
「はーい。がんばってね! こちらカスタムほうじ茶ラテになります〜」
ハチコを見送る姿勢を変えないまま、ついでにヤクトに飲み物をサーブする。
「えっ、あ、ハィ」
思わず受け取ってしまうヤクトであった。
──少し後。
「ううむ…これも美味しい……ですが…」
提供されたお茶を飲みつつ、ヤクトは思考する。
魔王軍への対策を改めるべきだろう。と。
これまで勇者勢のプレイヤーたちがこんなにも魔王軍に翻弄されてきた理由、その答えは今自分が見たこの状況にあるのではないか? と。
魔王軍発足からこれまで。彼ら魔王軍に対して抱いていたイメージは、
『殺伐としていて、四天王は魔王の座を虎視眈々とねらい、魔王は誰も信用せず、能力主義だけが彼らをつなぐ共通認識』
というものであった。
今も勇者勢ギルドのほとんどのプレイヤーはそのイメージを持っているはずだ。
しかし、実情は今見た通りである。
四天王陽夏は敵味方問わず料理を振る舞うことが自然体であり、彼女に四天王ハチコがいつものを頼むくらいには仲が良い。
もしかしたら、あまねく、ティオも同様に仲が良いのではないのだろうか?
この仮説が真実なら、これまで勇者勢のプレイヤーたちが魔王軍対策に考えてきた作戦が
魔王と四天王の対立関係が前提であり、その虚を衝く作戦を見込んでいたからで、そもそも対立関係が存在していないなら成功する可能性はない。
奇しくも、自分たち究極英雄のように横の繋がりが堅いチームということになる。
仲間同士の仲が良いチームは対応力が段違いなのだ。
関係性そのものが魔王軍の強みなのだとしたら、自分が本来取るべきは『魔王軍内部の観察』ではないだろうか?
四天王たちを魔王軍の幹部としてではなく、一人の個人として性格を把握し、人物としてのクセを見抜くことで対策する。
ゲームが強くなった人に対して心を読む形で戦うことで戦力差を埋める…仲の良い友人にするような行動が最適解に思われるのだ。
だとすれば、魔王軍に対してすることは一つ。
彼らの内面に飛び込んでいくことだろう。
先程はハチコの言葉に慎重になり過ぎた結果、最初に挑戦するチャンスを逸してしまった。
それなら、今の状況を利用するべきだろう。
幸いギルドメンバーと、四天王の一角が仲良くなったのだから。
「ピースフルさん、少し寄り道してみてもいいですか?」
「うん? ああ、任せるさ」
ピースフルは最初から変わらずヤクトに信頼を寄せており、内容を聞かずとも二つ返事で了承する。
この関係性が究極英雄の武器だとヤクトは改めて思う。
相手が魔王であろうと、人間だと捉えて挑めば付け入る隙はきっとあるはずだ。
この選択はそのための第一歩となるだろう。
「……疑似的にですが、陽夏氏の区画に挑戦してみるのもアリかもしれません」
打算込みだが、そんなことを口にする。
「えっ? いいのかい?」
その言葉に驚きと喜びを混ぜた顔で反応したのは近くにいた冬雪だった。
その提案は冬雪が自分をチップにして賭けに挑むほど望んでいた状況である。
自分のせいでほとんど挑戦者が現れることがないだろうと思っていた陽夏の区画。そこにライバルが挑戦してくれるとあれば、嬉しいことこの上ない。
「是非とも挑戦してほしいね。なんだったらクリア時の賞品として僕の手持ちのレアアイテムを出してもいいよ?」
「ほう? それは興味深いですね。今や魔王軍は生産職プレイヤーを囲ったことで流通を支配していますからね。
それ自体は狙ってしたことでしょうが、その中枢にいる貴方がレアアイテムと断言するのであれば、期待できそうです」
ヤクトにとってオマケにレアアイテムが手に入るなら嬉しい誤算だ。どう転んでも究極英雄に不利益は生じないし悪くない取引だろう。
ほうじ茶ラテを飲み終え、ヤクトは女性陣へと顔を向ける。
「皆さん、次の方針が決まりました。陽夏氏の区画に挑戦と……」
「姉ちゃん! 区画に挑戦してみるって……」
と声を揃えて二人が話しかけるが、その反応は劇的だった。
「おだまり!」
「そこ! うるさいわよ!」
ピシャリと女性陣から拒絶の反応が返ってきてしまう。
「えっ?」
唖然とした二人に対し女性陣は集まって、というよりはダークネスシャークを中心に輪を作っている。
「今、いいとこなの。後にして!」
「四天王なんてやってると恋バナ全然聞けないんだから!」
「やっくん。また、あとで。ね?」
雲ちゃんが子どもをなだめるようにヤクトに声をかける。
見れば、輪の中心にいるダークネスシャークがもじもじしている。
おそらく恋バナの主役が彼女なのだろう。
「あー……これは長くなりそうですね…。不本意ですが、機会を改めるしかないようです」
「そうだね…、なんというか…ゴメンね?」
「いえ…、というかお二人は姉弟なんですね」
「あー…うん。別に隠してるわけじゃないけど、公言してるわけでもなかったかも」
「なんかアンタら似てる気がするよ…苦労人気質っていうかさ…」
二人のやり取りを見つつ、ピースフルがそう感想を述べる。
なんともいたたまれない雰囲気になった二人はピースフルの言葉をきっかけとしてフレンド登録をすることにしたのだった。
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