第58話 戦うなら順番で
ヌルと戦う事で強さの高みに至れると信じ込んだノ・ヴァ。彼女は自身のステータスを点検しつつ、思い出したように口を開く。
「なぁ、一つ注文してもええか?」
ヌルは話を促すようにノ・ヴァを見る。
「あんな、ウチをあまねく兄ぃだと思って、同じ闘い方で相手してほしいんやわ。あまねく兄ぃを超えるんがウチの目標やねんけど、まずは同じ高さまで行かな追いつかれへんからな」
「うーん…あまねくさんと同じ…ですか…」
その言葉を受けて、ヌルは腕を組んで(心の中で)目をとじる。
脳裏にあまねくの姿を思い浮かべ、何度も繰り返したあまねくとの立ち合いを想起する。
両手に刀を持ち、とてもいい笑顔で向かってくる侍。あの楽しそうな姿は忘れられないプレッシャーを放っており、それに流されて迂闊な場所に触手を差し向ければたちまち切られてしまう。
ヌルの動きのクセもすぐに看破し、平然と読みとって未来予知のような動きすらしてくる。
ゆえにフェイントと、狙いを定めたピンポイント連撃を織り交ぜなければならなかった。
もちろんヌルが負けたこと(あまねくが勝ちを認めたこと)は無いのだが、それでも十分な強敵であり、彼との立ち合いほど戦闘に集中した時間はそうそう体験できないだろう。
これらの事が頭を巡ったのち、ヌルは目を開くと、ノ・ヴァに首を振って答える。
「それは無理です。ノ・ヴァさんからはあまねくさん程の圧力を感じません。
あまねくさんを相手にする時の集中は、あまねくさん以外の人を相手には出せないでしょう」
その答えを聞いたノ・ヴァはムッとした顔で機嫌をわるくする。
ヌルは本心を告げただけだが、婉曲した言い方とはいえ「あまねくほど強そうに見えない」という意味に等しい。
ヌルの知る限り、自分を除き最も攻撃力の高いプレイヤーはあまねくであり、よく知る相手である。
一方でノ・ヴァのことはあまりよく知らない。
ヌルの答えは当然の反応と言える。
しかしノ・ヴァはそうですかと認めるわけにはいかない。
彼女があまねくと過ごしてきた期間は、ヌルとあまねくが出会ってからの時間よりもずっと長い。あまねくを知ったような口ぶりを不快に感じるのもあったが、それ以上に弱そうだと言われて、そのまま引き下がるわけにはいかない。
「だったらウチの強さがあまねく兄ぃにも劣らない事を教えたるわ!」
我慢ならないといった体でノ・ヴァが吠える。
すかさずメニューから専有状態をヌルに申請して、戦闘態勢に移る。
「さっさと承認せえや!」
何が彼女を苛立たせているのかヌルには分からなかったが、承認しないと今にも飛びかかってくる様相だったので承認する。
ヌルが受け入れたことで、お互いのメニューに数字が表示され、カウントダウンが開始する。
ノ・ヴァはカウントが流れる間、細かくヌルを観察しておく。
多種多様な戦闘職を修め、その技術を体得した彼女は観察眼も一流である。
相手の立ち方や足運びを見ただけで使用武器や能力を解き明かしたこともある。
そんな彼女の眼に、ヌルは異質だった。
何の構えも取らず、少し猫背気味の直立姿勢。
両手が所在なさげに迷っている。
最強の魔王という評判だが、こうして対面してみると隙だらけで、対人戦に基礎として広まっている予備運動すら見受けられない。
今の情報だけで判断を下すならば、無知な素人、もしくは傲慢な達人だろうか。
しかし、その背中で蠢いている触手がその評価をそこで終わらせない。
この無数の触手一本一本が必殺の威力を秘めており、ノ・ヴァでさえ倒すのに苦労しそうな魔物を簡単に蹴散らしていたのだ。
本体の無警戒さと打って変わって、狡猾な蛇のようにいつ襲いかかってくるかわからない触手がヌルの不気味さを引き立てている。
カウントが進んでもなお姿勢を変えないヌルを一層警戒する間にカウントダウンの数字がゼロを迎えた。
両手に破壊のエネルギーを貯めてノ・ヴァが突進していく。
能力を証明すると意気込んだ手前、カウンターのような“待ち”の戦法は使えないだろう。
彼女の狙いは、まず初手でヌルの体のどこにでもいいので破壊のエネルギーをぶつけること。
それも極々狭い範囲に絞って、僅かなダメージを与えることだ。
杭を打ち込んで大岩を割るように、ヌルの防御を崩すための最初の楔とするのだ。
幸い相手は巨躯。攻撃は当てやすい部類だ。
そう計画してヌルへ向かっていく。
しかし。
──たった5歩進んで、一言叫ぶ。
たったこれだけ。
ノ・ヴァができた行動である。
歩いて、驚くことだけしてヌルに敗北した。
動き出したノ・ヴァは疾い。
一般プレイヤーには常人離れした速度だが、ヌルには目で追うことも備えることも容易な速度だった。
ノ・ヴァが触手の有効射程に入った時点で触手が動き始める。速度も軌道もバラバラでありながら5方向からノ・ヴァに向かって伸びる触手。
肩に、腹に、頭に向かって変則的な軌道で迫るそれらをノ・ヴァが把握し、回避しようと踏み込んだ時。
彼女の身体は宙を舞っていた。
自らの意思ではなく。
「えっ!?」
足を掛けられて転んだような姿勢でバランスを崩し、しかし転ばないように背中を軸にして触手に支えられている。
不思議な浮遊感に身体が鈍くなる。
そして残りの触手が追いかけてきて張り付く。
攻撃とはほど遠く、優しい動きだった。
──その瞬間、時空を割るエフェクトが彼女を包み込む。
大ダメージが発生してHPを一気にゼロまで削りとったのだった。
「な、何やの…?」
呆気に取られた彼女がそう発言したのは、勝敗が決し、戦闘前のスタート地点に戻されてからだった。
意味がわからない。
確かにHPを大きく上回るダメージを受けて死んだのだろう。ログには自分でも出したことのないくらい高いダメージが記録されている。
しかし、どのような手順で自分が転がされて、何のスキルを受けたのか全く分からなかった。
攻撃を受けたという自覚もなかった。
まるで”見えない誰かに肩を叩かれて、それを意識した時点で死んだ“。そんな感想だ。
ふと横に目を向ければしきりに関心しているダイダロンがいる。
「はァ〜…。流れるような動きがまるで芸術だぜ…。俺もまだまだ未熟だってこった」
彼はメモを取り出すと一心に何かを書き込んでいる。図も書いていることから、何かを学び取ったという事だろうか。
「な、なぁ、ウチ、何をされたん?」
メモに集中しているところ悪いが、ノ・ヴァは思わずダイダロンにそう尋ねてしまう。
「ん?」
ダイダロンはメモから顔を上げるも、その顔が険しくなる。そして、その問いに答える声はノ・ヴァを挑発するようなトーンだった。
「初めから言わなきゃダメか?」
「…ええわ」
若干イラッとするも、彼女は思い直す。
今行われた現象を解き明かすこともできないでは、目的のあまねくには到底及ばないという事だろう。
ノ・ヴァは今一度考え込む。
今まで戦ってきた何者とも異なる攻撃。
解き明かすべきは、自分が何で転ばされて、何でトドメを刺されたかだった。
後者は極限にダメージを与えるスキルがあれば可能だろうが、前者には思い当たらない。
まるで手品でも見せられたようだった。
(うん? …手品?)
ふと彼女は閃きがあってヌルを見る。
「なぁ、悪いけど、もっぺん同じ戦いをしてくれへんか?」
ヌルはメニューから自分のログを精査しているようだったが、呼びかけられて顔を上げる。
「ええ、構いませんよ」
そうして再戦した2度目の戦い。
ノ・ヴァはさっきと完全に同じ動きで敗北した。
敗因を上げるなら、油断となるのだろうか…?
明確には彼女は油断などしていなかっただろう。ヌルを格上の敵と認めて十分な警戒を以て臨んだのだが、それでも足りなかったのだ。
しかし今度はノ・ヴァにも得るものがあったようで、納得の表情を見せている。
そして、再度ヌルに向く。
「重ねて頼んで悪いんけど、もっぺん戦ってもらえへんか?」
もう一度そう頼むと、反応したのはダイダロンだった。
「オイ! オメーは遠慮ってもんが…」
「ダイダロンさん、大丈夫です。俺も自分を見直す機会なので」
「ダンナがいいって言うならいいんだろうけどよぉ、そりゃ贅沢じゃねぇか…」
ダイダロンは恨めしそうな視線を向ける。
「だってよ、嬢ちゃんは、このあと何度も旦那に挑むつもりなんだろ?」
「あの人が許可してくれるんなら、ウチはそうしたいって思うわ。何や…大きな手がかりに繋がりそうやねん」
“ヌルが許すなら”。
その態度からはヌルへの侮りが抜けており、対戦相手としての敬意が見え始めている。
その態度をヌルも認めて「自分は構いませんよ」と返す。
その答えを聞いてノ・ヴァが再度ヌルに対戦を申請しようとするが、ダイダロンが「待った」をかける。
「2回に1回だ…! 2回アンタがダンナに挑んだら俺にも1回挑戦させろ。全一で最強なダンナ相手に一対一で戦えるなんてのは修行としてメッチャ価値がデケェ。これを指咥えて見てろなんてのはナンセンスだぜ」
ダイダロンの発言は尤もだとノ・ヴァも納得する。連続して格上の相手に挑む機会は上位のプレイヤーには貴重な機会だ。
そしてこれはノ・ヴァが決めることではない。
魔王に判断を委ねる。
ヌルは広く戦法を模索しているところであるため、断る理由はない。
「ええ、自分は問題ないです」
その返答に気をよくしたダイダロンが拳を合わせてガンと音を鳴らす。
「そうと決まったら、コロシアムにいこうぜ。わざわざここでやる意味は薄いだろ?」
その提案にヌルは同意する。
新しい領域を獲得するという大元の目標からは外れてしまうのだが、強くなることに繋がるのなら無駄にはならない。
それに、ここでそれぞれの関係に信頼が生まれれば、後のダンジョン攻略にも役立つだろう。
特殊コロシアム。
一部の上位プレイヤーしか入場できないエリアなのだが、あまねくとの修行の度に訪れるためヌルには慣れた空間となってしまった。
連続でヌルが挑戦を受け付けるほか、2回に1回ダイダロンが戦う設定や、地上150mを越えると負けになる設定を付与して戦闘が開始される。
初戦は約束通りノ・ヴァの挑戦となる。
「いくで!」
そう意気込んだ声の勢いに負けずノ・ヴァが飛び込む。
射程内にノ・ヴァが入ったことを確認して、先程の焼き直しのようにヌルは同じ動きで触手を動かす。
「ここっ!」
声と共にノ・ヴァが小さく飛び上がる。
その足元を鋭く触手が通り抜ける。
「やっぱり! 上から来るヤツの影になるように死角を滑らせてたんやな!」
ただ足払いを回避しただけで喜んでいるのだが、これはヌルの触手の速度が異常に早い事に起因する。
しかし喜んでばかりもいられない。
空中で身体をひねり、追いかけてくるヌルの触手をギリギリで回避する。
掴まれたら終わりというのを肌感覚で認識しているらしく、「圧縮合成」を受けないように触手を躱していく。
ヌルは触手を動かす速度を上げてみるが、ノ・ヴァが目視できる触手であれば、しっかり回避が間に合っている。
「なるほど」
ノ・ヴァの回避センスに小さく感心する。
今回はいつもの力任せに叩き潰す戦法の前段階として、攻撃の“起点”を模索している。
今の瞬間であればそれは足払いであり、その足払いから相手の注意をどう逸らすかを考えている。
現在ノ・ヴァを相手として使用している触手の本数は全部で6本。
あまねく相手に比べれば圧倒的に少ないが、触手に対する動き方そのものは師匠のあまねくに近しいものを感じる。
死角から攻める触手の割合を増やしてみるが、ノ・ヴァは直感的な冴えも増してきたらしく上手く避ける。
ヌルの起点としている足払いは、仕組みさえ分かっていれば避けやすい攻撃ということだろう。
得るものがあったのでヌルは少しだけ攻め方を変える。
触手ではなく本体。
その右手を少し挙げると「パチンッ」と指を鳴らす。
特に何の意味もな行動だが、ノ・ヴァは新しい攻撃の予兆かと身構えてヌルを見てしまった。
その隙を逃さずノ・ヴァを捕まえて圧縮合成した。
ノ・ヴァが一度消滅して、再度、開始地点に出現する。
「くぁ〜〜! あんな分かりきったフェイントに流されるなんて…!」
悔しげに地面を踏むノ・ヴァを眺めつつ、ヌルは一応の効果があった事を記憶に留めておく。
「アリかナシかで言えばアリだな」
極論を言えば、相手の動きを鈍らせるなら今のフェイントのように、意味のない情報で圧迫して判断力を奪うのが有効だ。
ピースフルに対しても通用するかは分からないが、手段の一つとして持っておくに越したことはないだろう。
「なぁ! 今のはあまねく兄ぃと比べてどのくらいの強さなんか?」
それなりにやれた自信があるらしく、キラキラとした目でノ・ヴァが尋ねる。
足払いを見切って回避出来たのが嬉しかったのだろうが、真実は残酷である。
「あの程度の攻撃では、1時間かけてもあまねくさんは倒せないレベルですね。あまねくさんは触手の位置を見切って上に乗って走るくらいは普通にしてきますよ」
「へ?」
「今あなたに使った触手の本数は6本ですが、今のと同じ時間であまねくさんを倒すなら20本は必要ですし、俺自身も動かないと無理です」
「ひぇ……!」
そこまで言われて初めてノ・ヴァはヌルが一歩も動いていなかった事を悟った。
「こ、こんなにも差が開いとるんか…」
全然あまねくレベルには到達していないが、確かにヌルと戦い続ける事は修行として非常に有効なのだろう。
「よしっ、もっかいやるで!」
そう明るく言ったノヴァだったが、攻め方を変えたヌルが思い出したように使用した“6箇所同時攻撃”が捌けずあえなく撃沈することになった。
「よっしゃあ、俺の番だな! ダンナァ、よろしく頼むぜぇ!」
続くダイダロンはノ・ヴァ戦同様にパワードスーツに姿を変えての戦闘だった。
さすがヌルの直属を希望するだけあって、ヌルの事をよく研究している。
自分から触手にあたりに行くような移動をすることで焦点をズラし、掴まれる事を回避しつつも、ぶつかった相手を引き寄せるスキルを触手に使用する。
これは弓矢に対して使えば射手が引き寄せられるのだが、触手に対して使えばヌル本体が引き寄せられる事になる。
触手を挟んでヌル本体と綱引きをするような様相なのだが、ヌルの圧倒的なパワーの前にはダイダロンが全く及ばないため、逆にダイダロンが引き寄せられていく。
しかしダイダロンはそのことを想定しており、触手を掴んだまま引き寄せ効果を発生させる事で、ヌルが不得意とする”触手に沿った軌道”で接近する事を選択してくる。
「このタイプは初めてかもしれないな…」
ヌルはダイダロンの行動が自分への対策としてよく練られた動きである事を認識する。
とても戦いにくいのだ。
動きの一つ一つに工夫が窺え、普通に戦うと全体の流れを相手に持っていかれるだろう。
「それならこちらも出来る事をしないと」
ヌルは感心しながらもダイダロンの狙いを予想してみる。
先程のノ・ヴァ戦同様に相手を打ち上げて場外にすることなのか、別の戦法を想定しているのかは断定出来ないだろう。
だが状況を見るにヌル本体への接近を試みている事は確実。
本体への接触が目的と仮定する。
ヌルは直感的に。
「
を選択した。
ダイダロンに掴まれている触手を核として、自分の分身を作り出す。
本来は核となるパーツが必要だが、核ナシで使用すると特殊能力のない分身が出現する事を試行済みだ。
「へへ…獲ったぁ! 俺の奥義を見せるぜ!」
ダイダロンは突然出現した分身を疑う事はなかった。
嬉々としてヌル(の分身)の腕を拘束するように腰に抱きつくと装備をロックする。
「マジかっ……!?」
遠くから戦況を俯瞰していたノ・ヴァが声をあげる。
ヌルがダイダロンにロックされたことに声を出したのではない。
ヌルが分身を身代わりにする動きがあまりに自然すぎた事への驚きだった。
下手をすれば戦場を見渡せる位置の自分も騙されるだろう。
ヌルがダイダロンから自分を隠すように分身を出現させた事で、正面からヌルを見ていたダイダロンは完全に騙されてしまった。
念押しとして、分身には触手が一本しかない点も、本体と重なるように分身を配置したことで本体の触手を偽装に用いている。
ヌルは分身がロックされた事を視認し、分身に拘束を振り解くように命令した。
先程のノ・ヴァとダイダロンの戦闘を見ていて、ヌルも「自分が同じ状況だったらどう対策するか」を考えていた。
その検証の一つとして非常に大きい意味を持つのが、ダイダロンの拘束は解除可能なのかという事である。
そもそも掴まれないようにする対策と、捕まってから後の対策では大きく内容が異なる。
分身はダイダロンの拘束を解こうと試みるもびくともしない。
装備の形状変化であるため、装備を破壊する能力でなければ拘束を解く事はできないのだ。
「うっしゃあ、点火ァ! 空の旅にご招待するぜぇ!」
ダイダロンがロケットブースターを出現させて上昇を開始する。
ヌルはロケットの点火までに分身が拘束から抜け出せなかったため、拘束を振り解くのは不可能と仮定しておく。
上昇を始めたところで、ダイダロンがパワードスーツの腕パーツを分離する。
分身だけを上空に打ち上げるつもりだろう。
ヌルはとりあえず分身に命令を下す。
すなわち一本しかない触手でダイダロンに巻きついて道連れに飛ぶように。と。
ぐるりと触手が巻き付いたのを知覚したダイダロンは笑みを浮かべて声を張り上げる。
「そりゃそう来るよなぁ! パージッ!」
瞬間、パワードスーツから弾き出されるようにしてダイダロンが吐き出される。
吐き出されたダイダロンは水泳用のスイムスーツのようなピッタリした格好で、武器は持っていない。
「そぉら飛んでけぇ!」
嬉しそうな掛け声と共にブースターが加速する。脱ぎ捨てたパワードスーツにもロケットが仕込まれていたのだろう。
「ガハハハハ…! 魔王のダンナに一杯食わせてやったぜぇ」
空を見上げてパワードスーツと分身が花火のように上昇するのを見送る。
徐々に小さくなるそれらを見送ってから、初めて正面にいるヌル(本体)の存在に気づく。
「………あら?」
ヌルが分身に隠れるように立ち回ったのもあるが、分身に組み付いていた時は視界が塞がっていたわけで、それが偽物であるとは夢にも思っていなかったのだろう。
ダイダロンは困ったような顔で目の前のヌルと、上空の分身とを交互に見比べる。
「あーあ、一杯食わされたのは俺の方かぁ…。やっちまったぜ」
渋い顔でごちるダイダロンにヌルは歩み寄っていく。
項垂れる頭を掴むが、ダイダロンは黙って掴まれるままになっている。
全部の武装を上空に向けて打ち出してしまったのだ。このラウンドでの抵抗はもはや無駄だと悟っているのだろう。
「作戦は悪くないと思います。自分も色々考えるきっかけになりました」
「へへ、そいつぁ悪くねぇ
そう笑顔で返事をし、圧縮合成によって敗北したのだった。
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