第43話 勇者勢の事情
青の街。
勇者勢はギルド連盟の集合体であり、人数が多いために本拠地である建物には入りきらず、近い建物の一つを会議室として使用している。
これは建築系のスキルを持つプレイヤーたちにより、石造りから鉄製の簡易的な要塞へと作り替えられており、防諜効果が非常に高く設計されている。
その急造の会議室においてヤクトは自分に詰め寄るプレイヤーたちの追及を受け流していた。
「こんな独断専行は許されることではないぞ!?」
「エニシばっかりが戦績を稼いでいる!」
「盟約違反なんじゃないのかっ!?」
いくつかのギルド連盟の代表たちが顔を真っ赤にしてヤクトに詰め寄るが、素知らぬ顔でその言葉に答えていく。
「何もおかしいところはないと思いますが?
昨日の陣営会議で決まったルールに則って行動したに過ぎないですよ?」
「だったらなぜ敵陣にエニシが一斉攻勢を仕掛けたんだ! 今回のイベントではエニシは大人しくしているという約束だったじゃないか!」
中堅に位置するギルド連盟、その内の一つの代表がそう言い募る。
その圧力を受け流し、ヤクトは首を傾げる。
「“大人しくしている”…? 前回の会議で決まったのは青、紺、紫の街の防衛に就くギルド連盟の割り当てでしたね。
そして我々
ヤクトが顔を向けると他の代表たち数名が「その通りだ」と頷き返す。
「そういうわけですから、我々は残りの戦力で橙の街、そして赤の街を攻め落としたのですよ?」
「何故そうなる! こちらとしては、エニシにはイベント中は一切動かず、戦績を稼ぐような行為を慎むという約束をだな…」
「はっはっは。おかしなことを仰るものです。
勇者勢の総意として決まったのは“我々が防衛に参加しない”ということではないですか。
どうしたら我々が“何もしない”という事になるのでしょう、そういう約束なら初めからそう言ってもらわないと。
もちろん昨日の会議のログを確認してもらっても構いませんが、我々は何も約束を破っていませんよ?」
「グッ…」
「それは…しかしだな…」
彼らは会議の運び方を誤っていたと今更ながら気づく。
ヤクトから譲歩という形で引き出した“防衛に参加しない”という約束が、その実、彼の想定通りに進んでおり、自分たちは手のひらの上で踊らされていたに過ぎなかったのだ。
「聞きたい事はそれだけですか? でしたら失礼しますよ。我々も時間に余裕があるわけではないのでね」
言うだけ言うとヤクトが席を立つ。
その姿を止める者はいない。
例えば、この場で憤慨する幾つかのギルド連盟が徒党を組んで、ヤクトに…すなわちエニシに対して実力行使での妨害をすることもできるはずなのだが、帰り支度をするヤクトを眺めるほかない。
ヤクト自身も強力なスキルを持つプレイヤーであることは理由の一つだが、その隣にはピースフルという最強のガードマンがいるのだ。
どんなに不満を持つ者が多くても、ヤクトを拘束することは難しいだろう。
ヤクトは自身の正当性を示すために用意した資料が無駄になったことを残念に思いつつも、内心はホッとしていた。
魔王軍の戦力が正確に判断できず、最も信頼のおける駒を動かす他なかったため、一手間違えればギルド連盟が瓦解する危険性があった。
そうならなかった幸運に感謝しつつ、無言のピースフルを伴って部屋を出ようとする。
しかし、ヤクトが鉄製の重いドアを押し開けようとする前に、ドアは彼の手を離れ、扉と入れ替わるようにして入室する人物の姿がある。
防諜が完全なため、状況の変化には第三者が直接報告する以外に連絡手段がないのだ。
言い換えれば、報告が必要なほどに状況に変化があったということである。
「緊急報告ッ! 魔王が本拠点に襲来ッ!! 既に第一防衛陣によって戦闘が開始されましたっ!」
ーーーーーー
───少し前。
ヌル=アマルガムことハチコは勇者勢の本拠地を目指して疾走していた。普段の数十倍に及ぶ速度で移動しており、計算よりずっと早く目的地に到達することが予想できた。
だが、ふとした瞬間に地面を踏み抜き、地中に埋まった足が引っかかり転んでしまう。
「わわっ!」
慌ててバランスを取ろうと手を前に出せば、手より先に触手が地面を叩きつけ、反動で空中を跳躍してしまう。
数秒間の空中散歩の後に地面を転がり、ようやく体勢を立て直す。
「なに…これ…」
ハチコは身体能力の高さに目を回していた。
1歩あるけば50歩の距離を移動し、意識より先に触手が動いてしまう。
究極のチカラの塊である肉体を制御できず、暴走に近い状態となってしまっていた。
「落ち着いて…落ち着いて…」
ゆっくりとした動作で自分を鎮めようと足元に落ちている石を拾い上げる。
「あっ!」
しかし指先の加減を誤り、石が割れてしまう。
ハチコの意図しないパワーが常に発揮されていた。
「こんな体でどうやって…」
彼女は幾度となくヌルが自分を締め殺さないように運んでくれた事を思い出す。
そんなヌルから「敵は全力で叩けば大体倒せますよ」というアドバイスを貰っていた。
だが全力を出さない方法こそ聞くべきだった。
「はぁ…ヌルさんは器用さの天才ね」
移動するヌルの姿を思い浮かべ、やがてハチコは短いジャンプを繰り返すようにして移動を再開する。
空を泳ぐような心持ちだったが、先ほどよりはスムーズに移動できている実感がある。
「ちょっとだけ扱い方がわかったわ…。でも、この触手を自由に操るのってどうするのかしら…。そういうスキルが…?」
水面を跳ねる石のように、有り余るパワーを前方に向けて投げるイメージを持つことで、なんとか移動の姿勢を整える。
こうしてヌル本体の練度には遠く及ばないが、それでも常人よりはずっと速い速度で敵本陣へと到達したのだった。
勇者勢の拠点近く。
森に身を潜めるハチコ。
念のため、石化している自分の能力である身を隠すスキルを使用しておく。
「あそこが……街の造りはやっぱり同じね。
隠密を使用しているとはいえ、すでに警戒網には掛かっていると考えた方がいいかしら?
とりあえずの目標は宝珠の奪取…できないとは思うけども。
第二の目標は敵へ偽情報を与えて撹乱する事。時間切れまで粘って、私が分身体だと判明しなければ尚のこと良しというところね」
今一度襲撃の目標を確認すると、自身を鼓舞する。
「よし、行くわよ!」
即断即決は彼女の特技のようなもので、物事を開始するときの第一歩は早い。
正面から拠点へと突入したのだった。
ーーーーーーーーーー
「ふぁーあ、本陣防衛とかマジ暇じゃんね」
「わかる。団長クジ運悪すぎよな、俺も前線に出たかったぜ」
「今頃ドンパチやってるんかな?」
勇者勢拠点。
本陣を守るプレイヤーたちは出撃する味方を見送った後、暇を持て余していた。
ギルド連盟ごとに割り当てられた場所の防衛が任務であるのだが、場所を決めるのは代表同士の会議であり、末端の戦闘員である彼らは指示された場所の防衛に就くほかない。
「ここじゃあ貢献点は低いんだろうなぁ」
「そう言うなよ、非常要員で待機するよりゃ陣地の玄関守ってるこっちの方がまだ稼げるんだからよ」
それぞれが文句を言うものの、任務を放棄して戦場に向かったりはしない。その点を見れば、常識的なギルドと言えるだろう。
そんな彼らの元に突如、黒い塊が飛来する。
「何?」
「っ!?」
愚痴を漏らしていた彼らであったが本陣の防衛を任されるだけあり、予想外の事態にも動じることなく武器を構える。
「爆弾か?」
巨大な爆弾を投げ込まれたのかと考え、防御姿勢のままゆっくりと黒い塊に寄っていく。
その黒い塊がゆらりと立ち上がる。
彼らがソレを“敵”だと認識できたのは1人がHPを超過するダメージを受けて消滅した時だった。
「なんだコレ…ゔっ!」
黒い塊から伸びた翼のようなものが彼らの1人を払い飛ばし、壁に叩きつける。
そうして1人が消滅した時には戦闘の構えに移行していた。
「敵襲〜〜!! 敵襲〜〜!!」
「……コイツ知ってるぞ! 魔王だ! 単独で攻めてきたのか?」
「討ち取れば高得点だぞ! 全力でいけ!」
それぞれのメンバーがギルドの方針に沿った陣形で展開する。
元々防衛のために配属された者達である。
油断なく武器を構え、魔王らしきプレイヤーを包囲すべく行動する。
しかし包囲が完了する前に1人、また1人と殴り飛ばされていく。
「なんだコイツっ!」
「パワーがケタ違いだぞ!」
異次元の強さを発揮する化け物を前に、これまでの戦法が全く通用せず防衛と呼ぶにはあまりに一方的な戦闘が開始されたのだった。
「わあぁ…」
ハチコはこれまで感じたことのない感動と高揚を覚えていた。
剣を構えた剣士が飛びかかってくる。それを箒で払うように触手で殴りつける。
銃を構えて狙う兵士が照準を合わせ終わる前にその隣に跳躍する。掴み上げて他のプレイヤー目掛けて投げつける。
今まで戦闘などロクにしなかった彼女にとって、対人戦は暗い海を泳ぐような心持ちであったのだが、彼女が一時的に得た新たな身体は手当たり次第に暴れるだけでいいのだ。
子どものケンカのような原初的な暴力を用いるだけでどんどん敵勢力のプレイヤーが減っていく。
ハチコが「合成獣のスキルを使ってみようかな?」と考え始める頃には、既に2つ分のギルドが消滅していたのだった。
ーーーーーーーーーーーーー
──再び勇者勢拠点の会議室にて。
「何だ…アレは…」
「無茶苦茶だぞ」
各ギルド連盟の代表達は議場の中央に映し出されたヌル=アマルガムという名の魔王の映像を見て唖然としていた。
彼らは競合する相手同士ではあるのだが、同じ勢力のプレイヤーを防衛にギルドを派遣する以上、互いの実力も把握している。
派遣されている防衛担当ギルドは役目をしっかり完遂する者達であると認識しており、このように雑兵の如く蹴散らされるなど考えもしなかったのだ。
一矢報いるどころか、触れることも叶わずに負けていく者達。
そしてその救援に入り、さらに被害が拡大していく。
「紺の街が全滅した際のメッセージがまさか事実だったとは…」
紺の街は”本物の“ヌルによって壊滅させられているが、その際に届いた情報は「敵は魔王1人」という信じ難いものであった。
情報を受け取った側は、競合するギルドへの貢献点を誤魔化す目論見のメッセージだと疑念があったことや、現地のメンバーで口裏を合わせているのだろうという憶測から本気でその情報への対策を施さないでいた。
”量産騎士“を心から信頼していたヤクトや、エニシに味方する一部だけが情報の信憑性を高く見て、準備を整えていた形となる。
結果として、貢献点ばかりに目を取られていた者たちが油断しているところにハチコが襲来したことで大打撃を受ける形となったのだ。
ヤクトは脳内で今後の展開を予想し、素早くギルドメンバーへのメッセージを入力し始める。
特に彼の後ろに控えているピースフルに対しては最初にメッセージを送っており、「理由は後ほど、今は絶対に自分からは動かないこと」と厳しく静止していた。
他のメンバーにも本陣には戻らず、敵陣制圧を続行する旨を伝えている。
この連絡の根本には、ヤクトの把握している最新の情報が”魔王軍の本陣にて宝珠を持った何者かが飛翔して脱出、追跡を開始“であったことに起因しており、もし魔王が魔王軍本陣に再来したと連絡を受けていれば真逆の指示を出していただろう。
「ウチのメイン戦力が全滅…」
「こっちもか」
ギルド連盟にも規模に差があり、弱小と呼ばれるような組織は乾坤一擲で魔王に挑んで希望に反した結果に終わっていた。
中堅と呼ばれるようなグループはまだ余力があるのだが、ここまでの魔王の実力を見る限り現実は厳しいだろうと予感していた。
この裏にはハチコが手当たり次第に敵を倒していたために、チームで成立していたギルドが人員の欠落から十全に実力を発揮できず、体勢を立て直す前に全滅したという事情がある。
ハチコの本陣強襲は勇者勢全体の戦力を見れば微々たる損耗だが、個体としての魔王が強すぎるのだ。
強豪に位置するギルド連盟の助けがなくては、
勇者勢がイベント自体において敗北する結末も視野に入ってしまうだろう。
負けるくらいなら、他のギルド連盟の活躍によるイベント勝利のおこぼれをもらう方がマシと言うのが本音であろう。
数名の代表はヤクトを見据える。
しかし、言葉に詰まる。
今後のギルド連盟の運営を考えると、素直に助けて欲しいなどとは言えないのだ。
魔王への対策が十分でなかったために全滅して、他所のギルド連盟に縋りついたなどと知られれば、自連盟から脱退する者が出る事は確実で、名声が大きく下がってしまう。
ゆえに究極英雄が自ら動くことに期待して言葉を選ばなくてはならない。
「そ、そういえばピースフルさんは魔王に因縁があるとか……出撃されないのですか?」
「量産騎士も魔王に敗北したらしいですし、エニシの信頼を取り戻す必要を考えておられませんか?」
遠回しに魔王の迎撃をピースフルになすりつけようとしているが、ピースフルが反応を示す前にヤクトが否定する。
「それはできません」
そのまま隣に座る人物を見据える。
「リックさん、そうですよね?」
視線の先には瞑目した
名前を呼ばれた人物、リック・シモンズは勇者勢第二位の実力を誇るギルド連盟「ホライゾン」の代表である。上位ギルド「山崩し」のリーダーでもあり、その実力は「究極英雄」に匹敵する。
リックは狼系獣人であり、神々しいまでの白い毛並みと、その場にいるだけで放たれる威圧感から「山の主」と呼ばれる。
彼は会議の行末を静観しているだけであったが、名前を呼ばれたことで目を開くと鋭い視線でヤクトを見る。
「なぜ余にそれを尋ねる? 貴様らが防衛したらよいではないか」
尊大な物言いだが、彼の実力からすれば不相応なものではない。
ヤクトはその言葉と態度を受けて、やれやれと頭を振る。
「いちいち説明しなくてもわかっているでしょうに。リックさんも、みなさんも。
我々エニシが防衛に参加して魔王を撃退できたとして、後から”エニシが防衛に参加しない“という前回の会議での盟約に違反したことを追及する心算だったのでしょう?
この会議の結果を予想しますが、我々が防衛を引き受けない以上、ホライゾンのみなさんが担当することになります。
この街に配置されているホライゾンの配置は魔王のいる位置とは反対側、守備範囲外の防衛をホライゾンにお願いする以上、本来防衛を担当するはずだったみなさんが依頼料をリックさんに支払う形で収まる……というところでしょうか」
ヤクトの主張を聞いて、それぞれの態度に変化がある。
一部のギルド連盟代表たちは苦い顔になる。
リックは僅かに口角を上げる。
会議の行末を静観していた者たちはようやく理解の色が灯ったという反応をする。
「説明ご苦労。余も依頼としてであれば戦力を出すことに異論はない」
純粋にゲーム攻略のみを目指すエニシに比べ、ホライゾンはがめつい事でも有名である。
金銭やアイテムに貪欲であり、Ver3.0以降に流通を牛耳ろうと画策しているのだ。
防衛を担当していたギルド連盟たちは、防衛を完遂するにはホライゾンかエニシに頼るくらいしかなく、依頼料の話に行かないようにするために回りくどくヤクトに話していたのだ。
だがヤクトがその内情を見抜けない筈がなく、結果として現状があるのだ。
ヤクトはその様子を見回し、今度こそ席を立つ。
「みなさんどのような結論を出されるのかは分かりませんが、我々エニシが出る幕は無いようです。
魔王がこの街にいる限り我々は手出しできませんので、一旦控えに戻って、魔王の動向を見守らせていただきますね」
そう言い残すと、誰の追及も許さずピースフルを伴って会議室を後にするのだった。
会議室を出て、究極英雄に割り振られた建物に向かう途中。
それまで黙っていたピースフルが痺れを切らせてヤクトを呼び止める。
「おいぃ? ヤクト氏ぃ?」
「ええ、わかってます。控え室に戻ったら詳しく話します」
ヤクトは立ち止まる事なく建物へと向かっていく。
「お、おぅ…」
ピースフルは想像よりもヤクトが険しい表情をしていたことに驚き、二の句を告げずヤクトの後にしたがって建物へと入る。
彼ら以外の究極英雄のメンバーは出払っているために2人だけでテーブルにつく。
「ピースフルさんの言いたいことは理解しているつもりです。なぜ魔王を無視したのか、ということですよね?」
ピースフルは勇者勢全体に共有されている映像を映し出す。映像の中では依然として魔王が大暴れしており、猛威を奮っている。
「ああ、この姿を見てみろよ。体にくっついている石像の女、どう見ても例の”ハチコ・リード“だ。考えるのが苦手な俺でも、この状況がかなりヤバいってのはすぐにわかるぞ?」
「確かにあなたからすれば、ご友人の盾として働いているハチコ氏が魔王によって処刑され、ご友人の安否が掴めないという状況…お察しします。しかし、あまりにも出来すぎている状況であると思いませんか?」
真剣味が増したヤクトの表情に対して、ピースフルは訝しげな顔を浮かべる。
「なんだって?」
「考えてみてください。私が今回の作戦の肝として使用した条件である”本陣の防衛をしない“という方針。これを話したのは身内のメンバーだけですね。
これに対して、まるで知っていたかのように、あなたの不安を煽る…言い換えればあなたを名指しして敵として呼び出すような姿で魔王が現れました。いつのタイミングで魔王はあの姿を準備したのでしょうか?
そして魔王の襲撃箇所は、狙ったように弱小ギルドの密集地帯で、救援としてあなたを呼び出しやすくするための追い風となっています」
ゆっくりと、込み上げる不安から自分自身を守るように語るヤクト。
その態度にピースフルは思い当たるものがある。
「おいおい待ってくれ、それじゃまるで……」
「ええ、内通者がいると考えて良いでしょう。
それもエニシ…いえもしかしたら”究極英雄“の内部に、です」
「……なんてこった……」
お互いにそれ以外の可能性を探るが、偶然という真実を真実として認めるには状況証拠という障害が大きな壁として立ちはだかっていた。
2人の周囲を重い空気が包む。
魔王の映像と、ギルド連盟のメンバーメニューを見比べつつもヤクトは口を開く。
「…幸い、この石像がハチコ氏であるという確証はありません。
見た目を変えるスキルや装備も多いですから、あなたに対するブラフと見る方が自然です。
味方を疑いの目で見るのは心苦しいのですが、今後は味方の動向にも……」
言いかけたヤクトにメッセージが届く。
その送信者がギルドメンバーであった事で彼の顔はさらに険しいものとなる。
「これは……」
届いたメッセージは2通であり、別々の人物から同時に届いたもので、以下の内容であった。
(ダークネスシャーク)
「敵拠点に魔王が帰還してメチャクチャ暴れ始めたんだけど……!? どーゆーコト? 戦うの? 逃げたらいいの?」
(雲ちゃん)
「さっき、魔王さんに会ったよ〜。迷子だったから道を聞いたんだけど、とっても丁寧な人だねぇ〜」
ヤクトは焦燥に浮かべて、そのメッセージをピースフルに共有する。
「……ピースフルさん、我々には一体何が起こっているのでしょう…?」
「わからねぇ、けど、今すぐ対策を練るべきだ。このまま指を咥えて見ていたら、コイツの計画通りになっちまう!」
そう告げてピースフルは映像の中の魔王を睨みつけるのだった。
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