第24話 過去より大事な
──魔王城の玉座の間にて。
今まさに謝罪大会が始まろうとしていた。
ディオスの除名が完了し、一応の安全を確認したヌルが勢いよく頭を下げる。
ぶつかるものがあれば破壊する勢いだった。
「すいません! 自分が無警戒に四天王加入を急いだせいで…。」
その言葉を四天王は認めない。
「何を言う。俺がその背中を押してしまったんだ。その上、あのような弱者にいいようにされて情けないばかりだ…。」
「いーえ! ボクの推薦がそもそも間違ってたんデス!」
それぞれが自分の非を詫びる中、ハチコはその状況を冷静に見ていた。
三人を見比べ、少し悩む素振りをみせてから口を開いた。
「ヌルさん、あまねくさん。人を信用するというのは美徳でもあります。ヌルさんが我々を信頼してくれた事が勝因でもあったわけですし。」
誰あろう警戒を続けていたハチコの言葉である。頷く他ない。
一方でハチコはティオには厳しい顔をする。
「しかしティオさん。あなたは明らかにしなければいけない事があります。」
キッパリと言う姿にティオはたじろぐ。
ヌル達はお説教を予感したが、ティオは恐らくもっと重い話になるだろうと考えていた。
「う…。」
「ディオスという人物。彼の目的は魔王になる事ではなく、その先にあったように見えました。」
ハチコの目は険しいままだ。
ヌルがティオを弁護しようと言葉を探す。
だが確かに状況だけ見れば、ティオが今回の黒幕である可能性は否定できない。
「ティオさん。さっき“レッドネメシス”と呼ばれていましたね? 私はその名前に心当たりがあります。」
「…はい。」
ティオはその場に着地すると、意気消沈したように座り込む。
「レッド…? ええと、何の話です?」
ヌルには聞き覚えのない名前だった。
あまねくに顔を向けると同様に知らないと頭を振る。
ハチコがヌルの方を見て頷く。
「ええ。この名前は知らないかもしれません。
では、『終焉遊び5219』という言葉に聞き覚えはありませんか?」
その問いにヌルには頷いて返す。
「それはもちろん知ってます。2〜3年前に流行った、刺激と中毒性が強すぎるとして配信禁止になった動画ですよね? 俺の友達も何人もハマって、生活に影響が出てました。」
「うむ。俺にも分かるぞ。個人制作の動画なのに、音と光が麻薬のような反応を起こしてしまうとして禁止されたが、今だに警察と違法アップロードのイタチごっこが続けられていると聞く。」
ハチコはティオに向く。
「はい。そして当時、その動画製作者である“レッドネメシス”という人物に警察が辿り着いたんです。
危険映像製作ガイドラインに抵触する内容ですし、膨大な数の被害者も出てましたから。
公には逮捕したと報じられましたが、実際には逮捕されなかったそうです。その理由は当人が未成年の中学生だったために…。」
3人の視線がティオに集中する。
ティオはこの瞬間まで口を挟まなかった。
その事実が、彼女の正体を如実に語っていた。
もはや観念した様子で悲しげに笑む。
「うん。ボクは…いいえ、私は確かに、“レッドネメシス”って名乗って活動していた時期があります。
でもね? 狙って作ったんじゃなかったの。
私の作った歌を聴いてほしくて、色々頑張ってたら偶然見つけちゃったの。特定のメロディと映像を合わせると興奮度指数が大きく跳ね上がる効果がある…って。
あの時はそんなに強い効果があるって予想もしてなくて、ワクワクしながらアップロードしたらね、私自身も大きな波に呑まれるみたいにどんどん変な方に行っちゃった。
いろんなニュースでも反響があったケド、応援のメッセージなんかも貰ってね、2作目を期待してるって言われて嬉しかった。
でも…たくさん怖い人が家に来て、二度とこんな事はしてはいけないって叱られて、初めて悪い事だったんだな…ってわかったの。それで、」
「ああ、ストップ。その辺は割愛していただいて構いません。」
「え…?」
突然のハチコの横やりに、涙ながらに述懐していたティオの目が点になる。
「私が聞きたいのは、あなたが“レッドネメシス”だったという事実と、ディオスが何故あなたを狙ったかという因果関係です。
そこに至る過程にあなたの気持ちを加えないで下さい。」
「え、結構ひどいコト言ってません?」
呆気に取られたティオがそう言うが、ハチコは淡白な態度を崩さない。
「ティオさん。あなたは今、今回の事件の黒幕である可能性を疑われています。
私はあなたを友人であると思っていますが、あなたの態度が演技であった場合も想定しています。」
キツく「泣き落としは効きませんよ」と言ってのけたのだった。
ティオはその言葉に驚く。
ハチコから視線を逸らすと、ギギギ…と首だけでヌルとあまねくを見る。
「も、もしかしてボク、疑わしいデス?」
あまねくは鷹揚に頷く。
「小娘、お前は最初から胡散臭い。」
当然という顔をするあまねく。
「ソレはあまねくさんに言われたくないデス! アナタ最初から敵対心マシマシだったじゃないですか!」
「俺は隠していない。隠すまでもないからな。」
「ぐぬぬ…。セ、センパイはどう思いますか?」
ヌルは少し考え込む。
(おそらくハチコさんも本心では疑ってない。
もしかして事実から背後にあるものを浮かび上がらせようとしている…?
ならアシストするほうがいいか。)
ヌルは自分なりの答えを出す。
「ティオさん、事実だけ見れば確かに疑わしいと思います。なので正確な事実だけを話してもらえませんか?」
そんなヌルの言葉に分かりやすくショックを受ける。
「センパイまで…。うう…。わかりました。自己弁護? をします。」
ティオ少しだけ黙ると言葉を組み立てる。
「先に言うと、ボクは“終焉遊び”のような危険効果のある動画作り、そのノウハウを記憶しています。なので作ろうと思えば続きだって作れてしまいます。
その事は誰にも明かしていないはずですが、中毒症状のある人達が今もその事に期待を寄せて、レッドネメシスを探しています。」
「何故それを知っているんですか?」
「うん。実はボクのギルドから除名した人達がいるんデスケド、ボクの歌い方から、レッドネメシスではないかと推察したみたいなんです。
以前に“終焉遊びの続きの楽曲を作れるんじゃないか?” と提案された事があって、他の純粋なファンの人達と喧嘩になって除名になりました。」
ハチコは首を傾げる。
「その中にディオスは居なかったのですか?」
「いたら流石に覚えてマス! 第一、ボクの配下として参加予定のギルドメンバーが認めません。」
「ふむ、他には?」
「他に?」
「はぁ…。貴女が四天王である事や、特殊な能力を持つ人を探している事はギルドの人以外には明かしていないのですか?」
「ボ、ボクそんなに口の軽い子じゃないデス!」
「…ちなみにディオスがあなたへのアプローチとして魔王になる事に固執した理由は?」
「分からないデス。魔王ならボクに命令できると思ったんですかね?」
その返答にハチコが分かりやすくため息をつく。
「ハァァァ…。ええと、ティオさんが想像以上に浅慮で、物事を見ていない事が分かりました…。」
「え? なんかハチコさんボクへの当たり強くないデス?」
「当たり前でしょう? あなたが四天王を探している事をギルドにすら明かしてないのに、どうしてディオスが紹介されたんですか?
そもそもあなたが四天王である事すら世間には判明してなかったんですよ?
ギルドにあなたを見張る内通者がいるに決まってるじゃない!」
「あ…。」
ポカーンとしたティオを捨て置いて、ハチコがヌルに向く。
「はぁ…。それで、ヌルさん、彼女はどうしますか?」
どうしますか? の言葉の先は言わなくてもわかる。
ティオがその言葉に正気を取り戻す。
子供のようにヌルに縋り付く。
「お願い、見捨てないで!」
あうあうと、涙を流しながら懇願する。
妖精の少女が張り付いているのは憐憫の情を誘う姿だが…。
彼女は危険因子である。
ヌルはティオを見据える。
一拍の静寂が支配した後。
「普通に考えて黒幕じゃないですね。」
「!」
あっけらかんとそう言ったのだった。
その言葉にハチコも笑みを浮かべる。
「ま、そうですよね。やり口が杜撰過ぎますし。」
わずかに弛緩した空気をあまねくが締める。
「それで、どうするのだ?」
あまねくは今後の話をハチコにしたのだが、返答はティオからある。
「え、ボクが四天王残留で、めでたしめでたしでは…?」
「んなわけないだろ。なあハチコ殿?」
「ええ。むしろここからが本題です。私達は今、ピンチな局面を迎えているのですから。」
毅然とした態度でそう断言した。
玉座の間で魔王と四天王は、改めて話し合いの形を取る。
もし議長がいるならハチコだが、ヌルが最初に発言する。
「それでハチコさん。ピンチとは?」
「はい。ディオスを除名しましたが、これにより彼との敵対が確定しました。
では質問です。彼はどう動きますか?」
ヌルがティオを見ると、うーん…とティオが唸る。その横で静かにあまねくが告げる。
「ヌル殿の不利益となる行動。つまりは我々の情報をピースフルに売りつける…とかだろう?」
ハチコは肯定する。
「その通りです。私達の職業やレベル、名前や魔王城の位置に至るまで、秘匿されていた情報を軒並み明かされてしまいます。
我々は攻守で言えばどうしても守りに分類されます。なので手の内を知られる事は大きな痛手です。」
真剣な顔を保つあまねくに加え、ティオが神妙な顔をする。
ヌルの表情は変わらないが、話の内容が想像より重く、彼も気を引き締める。
「ふむ…その対策としてハチコ殿は何か思いつくだろうか?」
「そこなのですけど、最も優先して対処すべきは評判だと思っています。」
「評判…?」
あまねくが訝し気に繰り返すが、ハチコは首肯する。
「ディオスは今、有る事無い事なんでも言いふらす事ができます。
例えば、ライブを台無しにすると脅してティオさんを無理矢理四天王に加入させたとかです。
それによってヌルさんの悪評が高まった場合に、魔王軍参加を辞めて、勇者の軍勢に加担するプレイヤーが増える可能性があるんです。」
「たかが噂程度ではないのか?」
「はい。ですが、我々は必要以上に情報を明かさないように立ち回って来たので、私達についての情報は空白です。そこに最初に悪い噂が入ってしまうのは決して良い結果を生まないでしょう。
また四天王傘下のプレイヤーも減る可能性があります。私とあまねくさんは交友関係が広いわけではないので、他のプレイヤーへの勧誘が失敗しやすくなる可能性もあるんです。」
「ふむ…。なるほど。人数の増加は魔王城レベルに直結するわけだからな。」
ヌルは考え込むが答えは出ず、ハチコに向く。
「どうすべきだと思いますか?」
「具体案としてはやはりアピールなんです。それも、ギョンのようなアプローチではなく…。」
言いかけて、一度、ティオを見つめる。
まるでそこに解決策があるかのように。
「!」
その視線にティオが気付いて、彼女の言わんとしている事を察する。
「ハイッ! ここにアピールに最適な人材がおりますデスよっ!」
ーーーーーーーーー
──機械都市ハルバン。
ギルド「ユニバース新聞部」の拠点。
このギルドでは記事の販売数が前回の売り上げを上回る、空前絶後の大ヒットを叩き出したことでお祭り騒ぎと化していた。
「あひゃ〜! 最高記録更新だ!!」
「棚からぼた餅とはこの事だなぁ〜!」
「いやいや、俺らが真実の拡散を主眼にしたからの成果よ!」
新聞部が記事を持って狂喜乱舞している。
その究極の売り上げを記録した記事の見出しには『魔王軍をティオちゃんが解説!?まさかのアイドル四天王に独占インタビュー!』とある。
そして動画の無料部分には四天王アイコンを表情させたアイドル妖精。
さらに彼女がホワイトボードに描いたラクガキのような“魔王サマ”について話し始める部分が配信されている。
これほどの見出しで何が起きているのかと興味を持たないプレイヤーは少ないだろう。
先日の魔王交代劇は全てのプレイヤーに「お知らせ」として表示されたが、真相を知る者は魔王軍の外には1人しかいないのだ。
そこにきて、四天王の正体が有名アイドル妖精だったという情報。
魔王軍に興味のあるプレイヤーをはじめ、敵対する勇者の軍勢、ティオのファン、無関係プレイヤーに至るまで記事を購入せずにはいられなかった。
添付された動画には、四天王兼アイドル妖精がインタビューに応える様子が映っている。
「届けそよ風、あなたの癒しを司る妖精、ティオ・フォルデシークです! 独占インタビューよろしくお願いしマス───。
(中略)
それで、そうそう、次に四天王も紹介しますね。」
ティオがキラキラした人型と、ムスっとした顔、燃えたように怒る顔の3つをホワイトボードに描く。
「今の四天王ですが、ボク、そして“あまねく・わかつ”さんと…」
──ちょっといいでしょうか? ええと、あまねくさんというと、あのあまねくさんでしょうか?
「多分その人です。ちょっと、いえかなり失礼な人デス。最初もいきなり魔王サマに勝負を挑んで、ボコボコにされて改心しました。魔王サマはすごい人デス。」
──この燃える怒りを体現したような人物は?
「その人はボクより先に、最初の四天王になったハチ……ハテナさんデス。お名前を明かしてはいけないって言われてますので名前は秘密デス。
魔王軍の秘密兵器で、とても怖い人ですが、魔王サマが最初に四天王に加えるほどの人デス!
でも一番スゴいのは魔王サマであるセン…ヌルさんで───。
プレイヤーたちには四天王が3人であることや、魔王の名前がヌル・ぬるである事、今回の魔王交代劇の(ヌルに都合のいいように脚色された)真実などが明かされたのだった。
こうして情報戦略もヌル優位となる。
台本を書いたのはハチコであり、想定通りの効果が発揮されたことに満足するが、ティオの意趣返しによるハチコの似顔絵にだけは大いに憤慨したのだった。
この時期から四天王の1人は高難度モンスター「
ーーーーーーーーーーー
とある崖の下で冒険中のプレイヤーチーム3人がが休んでいた。それぞれレベル91、88、88であり、上方を警戒している。
一方、崖の上には岩肌と同化するような色味のドラゴンがうろついており、食べ損ねた獲物を探していた。
彼らはドラゴンから逃げるために崖を飛び降りたのだ。落下によるダメージはそれは酷かったが、全滅には及ばない。
「まさかグレイドラゴンに追いかけられるとは…。」
「救難信号は出したか?」
「もちろんだ…が。この辺境にわざわざ助けが来るとは思えないな。」
「同感。」
「レベル100ミッションへの近道なんだとしても、レベル105が居るなんて聞いてねぇよ。
せっかくトレステの街が目と鼻の先だってのに…。」
ドラゴンを超えた先にはVer2.0最後の街が見えていたが、目測の距離と到達難易度には開きがあった。
「いっそ戦ってみるか?」
「無茶言うなよ。俺らの平均89レベだぞ? 減らせて4割だろ。」
「まぁそうか…。」
街に行くには戦力が足りないため、救援を期待して様子を見ることにする。
正規ルートから外れた場所にわざわざ助けに来てくれる人物は稀有だが。
「…そういや、あのインタビュー見たか?」
「当たり前だろ。今じゃ見たことないヤツ探す方が難しいぜ。」
「あーあ、俺も志願しようかなぁ。そうすりゃあティオちゃんに会いたい放題なんだろ?」
「バッカお前、せいぜい会えるのは魔王軍幹部と四天王親衛隊だけだろうよ。こんな弱小ギルドなんて見向きもされねーよ。」
「でもレベルだけを基準にするわけじゃないらしいじゃんか。四天王だって…。」
「それこそ無理ってもんだろ。ティオちゃんレベルの有名人か、あの“あまねく”クラスの強さなんだぞ?」
そこまで言ったところで一人のメニューが勝手に起動する。
「待った。救難信号が受理された。救援パーティがワープしてくる。」
「まじか、助かったぜ。」
「救助料金安めにしてくれるといいなぁ…。」
そんなことを言い合う3人の元へ、別の3人パーティがワープしてくる。
「は?」
「え?」
一人は見事な刀を佩いた偉丈夫。針のような白髪が攻撃性を表している。
一人は30cmほどの愛らしい妖精で、キラキラと光を放っている。
そして最後の一人は黒い化け物だった。黒い体表からは目玉がまばらに覗いていて、背中には鋼のワイヤーのような触手が生えている。
「救援に来た。あまねく・わかつだ。」
「ティオちゃんですよ!」
「魔王ヌルで…だ。我々が助けてあげま…助けてやろう。」
救援を申請した3人は、あまりのことに固まったまま動かない。
「む? …ああ、グレイドラゴンか。理解した。」
あまねくは上を見やり、3人の顔を眺める。
「目的はトレステの街か?」
「は…。はい。」
一人がカクカクと顔が固まったまま頭を縦に振る。
「ヌル殿、上のドラゴンを頼んだ。」
(アンタの演技は下手すぎる。ボロが出ないうちに撤退しよう。)
魔王が頷く。
「承知しま…、よかろう。」
(ダイコン役者ですいません〜!)
魔王が足に力を込めると、その言葉を置き去りにして垂直に飛び上がる。
崖の中ほどに張り付いたかと思うと、触手を大きな鉤爪のようにして瞬く間に崖を登り切ってしまう。
その様子を見届けたティオが3人に向き直る。
「もう大丈夫デス! ティオちゃん再生光線っ!」
クルリと回ったティオがポーズを決めると、彼女から光が照射される。
その光を浴びた3人のHPが徐々に回復を始める。
その様子から、ようやく救援が真実だと認識した3人は息を整える。
「ありがとうございます。でもまさか魔王軍が救援に…。」
「ギャオオオオォォ〜!!」
言い終わる前に崖上からドラゴンの断末魔が響く。そしてドスンッと彼らの近くに魔王が着地する。
「…これを。」
小脇に抱えていたドラゴンの首をあまねくに預ける。
「うむ。見事だ。」
「な…。」
十数秒でグレイドラゴンを討伐したことに3人は目を丸くする。
ドラゴンの首を収納すると、あまねくが3人を見ながらヌルに話す。
「ついでで申し訳ないが、この者たちの目的は崖上から少し歩いた所の街だ。上まで連れて行ってもらえるだろうか?」
魔王はゆっくり頷く。
パーティの代表が頭を下げる。
「ありがとうございま…」
そこにいた5人全員を触手で捕まえる。
「ん? …もしかしt…」
3人の誰かが発したであろう疑問の声は急直上する魔王によって掻き消される。
「のぉわあああぁぁぁぁぁっ!!」
やがて生体ミサイル:ヌル号は超高速で崖上に到達した。
あまねくとティオは慣れたもので、何事も無さげに降り立つが、初乗車した3名は目を回していた…。
「…オイ。」
あまねくが活をいれて起こす。
「ハッ! こ、ここは…。」
「救援達成だ。我々は帰る。」
「あ、ありがとうございました! それで…ええと救助料金はどれほどになりますか?
魔王相手に値切るのも恐縮ですけどこっちの懐事情を汲んでもらえると…。」
交渉用メニューの申し込みを申請するが、あまねくが拒否してメニューを閉じる。
「いらん。」
呆気に取られた彼らにあまねくが言い寄る。
「ああ、その代わり魔王軍に入れ。」
「ダメです! 強制しちゃいけないって言われたばかりデスよ! そんなことより今度発売するボクのシングル配信曲をですね…。」
「黙れ小娘。お前こそ売名行為にするな。」
やいのやいのと言いはじめた二人を触手が捕まえる。
そのまま魔王がズイと3人の前に進み出る。
「騒がせてすまない。もし魔王軍に興味があったら、いずれ加入を検討してもらえると嬉しい。」
何かを読み上げるように魔王ヌルが話すと、魔王軍のアイコンを空中に表示させた後、拠点へと転移していったのだった。
嵐が通り過ぎるように(実際嵐のようなものだったが)その場には元々の3人のみが残される。
「あ…ティオちゃんのサイン貰い忘れた…。」
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