第5話 実験と四天王
再び運営チームは苦い顔で会議をしていた。
議題のうち数件は魔王が関わっている。
魔王に関する内容…すなわち「GMアンブレラが倒された事」と「配下のランダムスキルについて」。
そして「彼が配下に命令した内容」である。
本来議題はもっと堅い言い回しで扱われるが、チーフが伝達を重視して口語にした。
彼らの苦い顔の理由は、想定外の内容につき正解が無い問題だからであった。
ため息混じりにチーフが話を進める。
「で、だ。笠原くんが倒された件については、バランス班に対応をお願いしたい。
方針としては、魔王の彼が他のプレイヤーと良い勝負が出来るレベルなんだが…。」
バランス班。つまりはゲームの難しさを決める班となるが、プレイヤーの強さもこの班が決めている。
そのリーダーである柴山が答える。
「既に検討は始めていて、魔王の能力を下げずに…例えば、魔王は魔王らしく1人のみで戦闘を行い、プレイヤーはパーティで挑むという図式に変更すれば悪くないかと。挑む最大人数や専用のバフは計算中ですね。」
バランス班の対応策を聞くが、チーフの顔は晴れない。
「その…私はパラメータ計算に詳しくないが、それでもレベル255は規格外の強さだ。GMを一撃で倒すような存在に対して、人数でどうにか出来るものなのか?」
「まぁ仰る事はわかります。当然の疑問でしょう。
しかし、あの件は笠原さんの不注意が原因のほとんどで、計算上はプレイヤーの努力で行けるはずですよ。」
「そうなの?」
チーフの疑問はバトルバランスではなく、あの笠原の不注意という点だが、当人は乾いた笑いをもらすだけだった。
「いや…ははは…。」
笠原は既にバランス班から大量の指摘を受けた後であった。
「プレイヤーとの交渉に力を入れるのは大事だと思いますがね、防御システムを一切使用しないで合成獣に近づくのはGMといえど自殺行為ですよ。大体内部数値的にはレベル255というのは…」
柴山がまくし立てるように「レンジ低減率が…、クリティカル倍率が…、面範囲防御が…」と専門用語の嵐を引き起こし始める。
しかしチーフをはじめ殆どのメンバーは彼の言葉を理解できない。
チーフは噛み砕いて教えてくれる人物を探す。
「渋谷くん、解説してもらっていいかい?」
「あぁ…ハイ。ええと、GMはスキルを発動しなくてもいいように、装備にはシステムって呼ばれるバリアが付いてます。一度起動すればマグマで水浴びしたってダメージはゼロになる強力なやつです。
でも、スイッチを入れないとバリアは起動しないです。それでもGMの防御は高いですが、合成獣はコンセプト上、近距離最強の設定です。
スイッチを入れないで格上の合成獣と握手するのは自殺行為ですねぇ。」
「なるほど。職務上、攻略を覚える必要はないですが、プレイヤーに混乱を与えないためにも笠原くんはもう少し戦闘の知識も入れてください。」
「はい…。」
チーフはしょんぼりする笠原を横目に、議題を進める。
「次の問題だが、コレはどう対応する予定だ? 彼の運次第でバランス崩壊まったなしだが…。」
専門用語の嵐から帰還した柴山が答える。
「問題ないです。」
根拠は? とチーフに返されると、柴山は目を泳がせる。解決した問題だという確信はあるが、専門用語の嵐を再上陸させずに答える自信がない。
仕方なくプログラム班のリーダーである梓が引き取る。
「チーフの…この懸念は『魔王の配下のスキルでランダムな魔物を呼び出した場合に、最強クラスの魔物が呼ばれる事』ですよね?
確かに「ヘルファクトリー」や「ギャラクシースライム」なんかは、バランス崩壊になりますけど、実はそれはありえないという事を計算済みです。」
前者は毎分レベル100のロボットを生み出す魔物で、後者の魔物は永遠に分裂を繰り返せる。どちらも瞬く間に魔王レベルが上限に到達する。
梓は聞く姿勢を保ったメンバーに話し続ける。
「内部的なseed値はプレイヤーごとに固定ですので、魔王プレイヤーの配下というseed値にそれぞれの召喚技を使用した場合の数値を当てはめて、どのモンスターが出てくるか既に確認してあります。
さらには野良のモンスターは元のseed値がランダムになりますが、魔王プレイヤーは固定、つまり彼の配下が再度「悪役斡旋」を使っても、同じモンスターが呼ばれます。」
梓の説明はこれでも噛み砕いたものだが、聞く側は解釈に時間をかけていた。
つまるところ、ヌルの配下となった時点で「悪役斡旋」は何度使用してもイビルケージとホワイトオーガが出る。
「悪役斡旋」以外のスキルは別の魔物が出現するが、どのスキルでもゲームバランスを逸脱しない事を確認してある。というだけの話である。
各々が梓の話を理解して納得したところで、最後の議題に差し掛かる。
「彼が今やっている事は、我々からは想定外の挙動だ。どう対応するべきか意見を聞きたい。」
「現にドワーフの村が機能しなくなりました。対策をするべきでは?」
「このまま別の国に広がっていけばストーリーに重大な欠陥が出る。」
「でも、彼は本当の意味で自由にゲームをプレイしているという事でしょう? それを阻害するのは…。」
さまざまな意見が交わされ、議論は踊り始める。
とあるメンバーは隣にいる同僚に話しかける。
「まさか、NPCを誘拐するとはね。」
「いやはや、考えつかなかったよ。」
ーーーーーーーーーー
ゲームにログインしたヌルの眼前には、想像通りと想定外が入り混じった景色が広がっていた。
まず、足元に箱。これは分かる。
開ければ想像通り魔王城の建設用資材。
アンブレラの話の通りである。
一方で正面。巨大な檻、もしくは半球の柵の魔物、イビルプリズンがいる。その内部には20名以上のドワーフが収容されていた。
秘書のミニデビちゃんの両側には、イビルケージとホワイトオーガがそれぞれ2体づつ。
それぞれの配下は満足そうに平伏している。
「ええと、よくやった…ぞ?」
どうしてこうなったのか。
ヌルは自分がログアウトするにあたって、配下に命令を下したままログアウトした場合、彼らは命令を遂行し続けるのか疑問を持った。
もし可能であれば多くの事がオートメーション化可能であり、不可能であればログイン中の時間配分に気を遣う必要がある。と。
そのため思いつく限り多彩な命令を下してからログアウトを試みたのだった。
ミニデビちゃんには、ここにいてクールタイム(スキルの再使用時間)ごとに「悪役斡旋」を使用する事。出てきた魔物が他の魔物への攻撃を行ったら倒すように。
一方で、ちびデビくん・魔王の従僕・イビルケージ・転ショッカーには、パーティを組ませて連携させた。
転ショッカーの能力のクールタイムが過ぎたらイビルケージを転職させることをまず命じた。
さらには魔王の従僕にはワープで「ドルッサ村」という場所に行かせる。
ドワーフNPCをちびデビくんの魔法で眠らせた後、こちらに連れてきてイビルケージ(転職できていればその上位のモンスター)の中に収容せよ。というもの。
そのため、目の前の光景はある意味実験が大成功した結果と言える。
なぜドワーフを選んだかというと、魔王城の建設にはそれに適した者の協力が必要であり、建設のイメージとして初めにドワーフが浮かんだからである。
つまり、中立のドワーフNPCを魔王軍に引き入れる実験をしてみたかった。
ヌルはドワーフ集団の前に立つ。
「支配のカリスマ!」
その時、全てのプレイヤーにメニューを通じてお知らせが届いた。
『全てのプレイヤーの皆様お伝えします。
魔王による侵略が開始されました。特定の条件を満たすことで、闇の勢力「魔王の軍勢」、もしくは光の勢力「勇者の仲間」に所属することができます。』
「まだ侵略なんて何もしてない!」
このお知らせに最も驚いたのは魔王本人だろう。
すでに村一つ崩壊させているが、自分は魔王城から出ていないために自覚がない。
しかし、同時にメニューの文字を見て納得した。
『魔王の軍勢が30名を越えたため、魔王レベルが1→3に上がりました。』
魔王が強くなった場合には、その分だけ勇者を焚き付けてバランスをとるという事だろう。
確かに先程のスキルによってドワーフとイビルケージを仲間にした。
ドワーフはダークドワーフになったし、ホワイトオーガはまたも金棒で攻撃を始めたが些細な事だ。
「結構な種類があるなぁ…。」
ヌルはホワイトオーガの攻撃を無視しながら合成獣のスキルを確認する。
合わせて30種類ほどあるが、またも友人の格言である「選択肢が多い時は確実な手段二つと、面白そうな手段一つを選ぶのがゲーム攻略のコツ」という言葉に従う。
いくつかのスキルの詳細を読み、目当てのスキルを見つける。
「えーっと、
言葉とともに1体のホワイトオーガに触ると、次元にヒビが入るような見覚えのあるエフェクトと共に717259! というダメージが表示される。
アンブレラを殺害したスキルである。
「あ! そうか、そういうことか!」
このゲームは「思考+動き」によって自動でスキルを使う機能がある。デフォルトはオンなのでヌルのコンフィグは機能をオンにしている。
そして『このスキルは圧縮するという意識と、手のひらの動きを合わせることで
握手と同じ意識で発動するゆえにアンブレラは死んだのだ。
スキルを理解したが、コンフィグから機能をオフにするか迷い、自分の方をゲームに慣らそうと考えてそのままにしておく。
近距離、というよりもゼロ距離で使用するだけに最強クラスのスキル。
現にアンブレラを一撃死させたスキルに低レベルモンスターが耐えるわけもなく、ホワイトオーガは消滅していた。
もう片方のホワイトオーガは、
「ニードルウィップ!」
の餌食となった。
これは対極的に15mという長射程を有する攻撃で、圧縮合成と合わせて遠近の攻撃の主軸として使い慣れておこうという意図で選択した。
さらに自分のスキルをモノにしようとメニューを開くが、待機中の配下の魔物が目に入る。
特にダークドワーフとなり魔王軍に下ったにも関わらず檻に閉じ込められっぱなしの者たち。
とりあえずスキルの練習は全員に指示を与えてからでいいなと結論づける。
「イビルプリズン! …呼びづらいな、お前は今日から『トリカゴくん』だ!」
指差しで宣言すると名前が変わる。
この機能はアンブレラに習ったもので、プレイヤー管理下の魔物は名前をメニューから書き変えることができるが、口頭という早い上に楽な手段がある。
「トリカゴくん! 中のドワーフたちを出してくれ。」
ぞろぞろと総勢25名ほどのダークドワーフが檻から出てくると、ヌルの前に片膝をついて言葉を待つ。
頭の中で人数の分配と役割をシミュレートしたのち、命令を下す。
「そこからそこまでの者、あの辺りに家を建てる仕事を与える、資材はあそこの箱のものを自由に使って。セーフゾーンとして使えるように配慮を忘れずに。そこの3人、下にある森にこの2人と一緒に行って木を切って追加の建材としてここに運ぶように。そこの5人はここ一帯の朽木を掘り返して整地。掘り返した木はその辺に集めて。」
森に行かせるのは魔王の従僕とちびデビくん。
従僕のワープがあれば魔王城の外に行ける事を確認済みだし、ちびデビくんがいれば護衛は十分だろう。
「ちびデビくんはそこの3人を護衛するように。襲われたら敵は倒して良い。」
「魔王の従僕…お前も名前言いづらいな。お前は今日からジョセフ! ジョセフはワープでこの4人を森に運ぶ。ちびデビくんが倒しきれない敵が現れたら全員でここまで撤退してきて。」
これでうまくいけばセーフゾーンが確保できる。ログアウトが楽になるはずだ。
「転ショッカーはそこのイビルケージをイビルプリズンに転職させて。あとは…そうだ!」
朽木について命令したことで、一体の魔物を思い出す。
「ミニデビちゃん。ハラペコ食べ虫はどこに行った?」
「あちらに。現実時間:午前4時23分に休眠となりました。」
「ああ、ありがと。」
実のところ、結果を確認していない実験がまだ残っている。
ログアウトの時点で魔物作成があとレベル4分残っており、使わないのは勿体無いと考え、これを『Lv.4 ハラペコ食べ虫/暴食幼虫』として作成した。
なんでも食べる虫で、幼虫→繭→成虫に進化し、成虫は出会ったプレイヤーにアイテムを渡して消滅する特性がある。
しかし、繭の期間が非常に長いことや幼虫・繭共にHPが1しかないために、ほとんどが繭のまま消滅する。
それゆえに成虫がくれるアイテムは価値が高い。
魔物作成ではダイレクトに成虫は作れなかった事から、ヌルは幼虫を作成し、餌として所持していた雑草や周辺の朽木を与えて放置しログアウトしたのだった。
朽木同士の距離はそれなりにあるため、レベル1の方の転ショッカーに、幼虫を次の餌場に運ぶタクシー役を任せていたが、姿が見えない。
「あれ? レベル1の転ショッカーは?」
幼虫が休眠なら近くで待機しているだろうと思っていたが…。
近くに控えていたミニデビちゃんから返答がある。
「現実時間:午前0時44分に、ハラペコ食べ虫に食べられました。」
「え?」
隣の秘書が同じ言葉を繰り返す。
なんでも食べる虫とはそのままの意味で、レベル4の魔物がレベル1の魔物を食べるのは当然と言えば当然である。
結局ヌルは2体目のイビルプリズンに『ムシカゴくん』と名付け、その中で飼育することにしたのだった。虫が共食いをしないなら複数飼育も視野に入れつつ…。
配下に一通り指示を与えたあとは、自分のスキルや合成獣について知る時間を作る。
世界図鑑の合成獣の項目を開く。
多くのプレイヤーが戦って得た考察が記載されているが、最大でレベル100までの情報である。
昨日までは最大レベルが100の世界だったので当たり前ではあるが…。
世界図鑑に記載したプレイヤー曰く、
・近距離での戦闘は避けるべき。近距離は異常に強い。
・魔物を弱らせたタイミングで乱入され、魔物を吸収された。
・魔法への耐性が低め。他の魔物のパーツが多いほど耐性が上がるっぽい。
…など、有用な情報が多い。
自分の弱点を善意で教えてくれるのだから、先達の努力に感謝しかない。
その中に見逃せない情報があった。
・背中の触手の数だけ魔物のパーツを吸収できるっぽい? 検証求ム。
・触手の数はレベル10ごとに1本増えてる気がする。
というもので、コレが真実であればヌルの触手は25本であり、25個のパーツを装備できることになる。
これは装備欄を見れば確認できるとメニューを開く。
装備欄は頭、両手、両指、胴、足にそれぞれ装備が可能であり、右手に初期装備の斧がある以外は装備無しである。
「あれ? 普通だ…いや、2ページ目がある」
装備欄を横にスライドすると装備無しという枠がメニューいっぱいに25箇所表示される。
「う…わ…。」
覚悟はしていたが、実際に見ると圧感である。
装備枠をタッチするとホワイトオーガのパーツが3個とGMブースターが選択肢として表示される。
ホワイトオーガのパーツは頭、右腕、金棒であり、試しに頭を選択すると、自分の右脇腹に苦悶を浮かべる鬼の顔が浮かび上がる。
「うわぁキモイ!」
慌てて装備を解除すると鬼の顔が消え、装備枠が装備無しに戻る。
「使い方はちょっと考えた方がいいな。」
何もなくなった脇腹を撫でていると、声をかけられる。
「…魔王様。」
声の主はミニデビちゃんであった。
「ん? 何?」
「勢力拡大の一手として、四天王を結集させる事を提案致します。」
「四天王…?」
「四天王とは、魔王直属の4人のプレイヤーの事です。四天王に就任するとボーナスが付与され、能力が強化されます。
全てのプレイヤーが立候補可能であるため、任命権のある魔王様が試練や条件を課す事で選別が可能です。」
「なるほど…。条件の設定はどうやるの?」
「魔王メニューより、軍勢召集をお選びください。そこに条件を記載できますが、条件は決定すると3日間は内容の修正が効きません。
条件の例としては、一定の戦闘能力を見せた者、希少なアイテムを献上した者などが想定されているようです。」
「ふーん…。まぁそのうちやろうかな。」
魔王メニューを閉じると世界図鑑に目を戻す。
ヌルの魔王レベルはたったの3である。
魔王城に至っては土台の上に小屋を建設中…。とても他人を部下として招く気にはならない。
そんなヌルの思いとは裏腹に、
「魔王様。四天王を結集させる事を提案致します。」
──15分後。
「魔王様。四天王を結集させる事を提案致します。」
──さらに15分後。
「魔王様。四天王を結集させる事を提案致します。」
きっちり15分間隔で提案をしてくる。
魔王レベルが3になったら提案するように設定されているのだろう。
煩わしさを覚えたため、ミニデビちゃんのステータス設定から、魔王の副官設定を解除して、従属相手を魔王からヌル個人に変更した。
変更したが。
「ヌル様。四天王を結集させる事を提案致します。」
呼び方が親しくなっただけで、1番近しいNPCが提案してくるという設定に切り替わっただけだった。
「わかった。わかったよ! 四天王の募集をかけるよ!」
根負けしたヌルが再び魔王メニューを開いたのは最初の提案から1時間後のことであった。
さらに30分、条件について頭を悩ませることになった。
「条件か…。あまり偉そうだと反感買いそうだしなぁ。同じ価値観を共有できる人の方が…。でも強さも必要か。とりあえず色々書き出して、良さそうなやつだけ残そう。」
世界図鑑や配下の質問を元に考えた条件は以下であった。
『魔王より、四天王を募集致します。
以下のいずれかを満たした方を求めています。
・「指名手配」が24時間を超えた事のあるプレイヤー
・魔王城を発見or到達したプレイヤー
・ドルッサ村に17時に配置予定のモンスター「ギョン」を倒したプレイヤー
・アイテム「世界図鑑」の使用時間が1200時間を超えたプレイヤー
・魔王から勧誘されたプレイヤー
尚、条件を満たしても必ず任命されるとは限りません。
どうかよろしくお願いします。』
ーーーーーーーー
魔王の侵略開始から数時間後、全てのプレイヤーにメニューを通じてお知らせが届いた。
『全てのプレイヤーの皆様お伝えします。
「魔王の軍勢」幹部である四天王の加入条件が公開されました。
以下のいずれかの条件を満たす事で、メニューのVer3.0イベントより、加入申請を行うことができます。』
喜んだのは悪サイドのプレイヤーたち。
我こそは悪の道にあると自覚している猛者たちがこぞってメニューを開く。
「マジかよ! 四天王はパラメータボーナス1.2倍補正!? 専用固有スキルに擬似的な専用領地? 至れり尽くせりじゃねぇか!」
アップデート2日目にしてレベル102に到達した上位プレイヤー。
“狂人”の二つ名を持つ男が声を荒げる。
「魔王はオレが選ばれるもんだと思ったが、四天王も悪くねぇじゃねえか。魔王様とやらのツラを拝んでやるぜ!」
逸る男に仲間が声をかける。
「いや、条件見てみろ。コレは相当ヤベェぞ。」
「ああ? オレなら余裕…。でもねぇな。なんだこれ?」
所変わって善サイドプレイヤーの拠点。
ヌルの現実世界での友人は既にレベル103に到達しており、全プレイヤー有数の進行度となっていた。
「ピースフルさん! 見ましたか?」
「ああ…。きっと街が荒れる。いや、街だけじゃない、ユニバース世界がだ。ふざけやがって!
行こう皆! 魔王討伐ギルドを結成する。魔王なんて透かした野郎の顔に一撃喰らわせてやる!」
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