Session03-04 新たな出会いは唐突に
四日目……小規模
五日目……西の方……砦の北側へ
彼らは”
そんな”青鮫党”の元に、アイル達が訪れるのは必然と言えよう。
ソーキ大河に沿って、北へ進むと辺境伯軍が建設した観測所とは違う、建造物が見えてくる。木材と石材を使って、砦の様な壁を作っており、それが対岸にも作られていた。大きい
「
「我が名はバーバラ!我らは、冒険者の
「どうぞ、お客人!お入り下さい!」
その声に従い、”青鮫党”の渡し場へと入っていく。壁の内側に入ると十数名の男共が、
「お主らが”鬼の花嫁”か。ワシが”青鮫党”党主、ケーマ・ヨース・ツーシュウじゃ。後ろが、ワシの息子のソーヤ・ケーマ・ツーシュウと、孫のイーネ・ソーヤ・ツーシュウじゃ。ワシらで商談の相手をさせていただこう。」
「”鬼の花嫁”の党主、アイルだ。左から、バーバラ、フィーリィ、ピッピ、ルナ。冒険者として、チョトー一帯の”間引き”を行っている。向こう岸の方でも間引きを行いたいので、商談をしたい。」
「承知いたした。イーネ。皆様を
「”鬼の花嫁”の皆様、こちらへどうぞ。」
イーネが
◆◆◆◆◆
母屋に入った後、客間に案内されたアイル達は、
「「……砂糖だ!?」」
二人は驚きの声を上げた。その声にまだ口にしてない三人も驚いた。”黒い”砂糖は見たことがなかったのだ。
三人も黒い砂糖をひと摘み口にして、顔を見合わせて頷いて見せた。
「……砂糖だな。」
「……砂糖じゃな。」
「……砂糖ですね。」
まず、今まで口にした砂糖とは違った甘さであった。これは流通できれば、
そんな砂糖が、この場で初めて口にできるということは、流通していない事が理解できる。では、何故、これを出してきたのか。その理由を三人は考えたが、ピッピとルナは、砂糖を摘んだ後、茶を口にした。苦味が抑えられた上で甘味が広がり、苦もなく飲み干した。
皆が
「遅れてしまい、誠に申し訳ござらん。イーネのもてなしはいかがじゃったろうか?」
ケーマが
「イーネ殿の
「さて、では、商談と参りましょうかの? 皆様は”間引き”で渡りたいとのことじゃが……”只の”間引きであれば、そこまでされる必要はないと思いますが……。」
チラリと五人に視線を送る。それを受けて、バーバラが身体の向きを変えて答えた。
「されば、今回の理由じゃが……我らはチョトー地方の”解放”を目的にしておる。そのためには、川向うに渡り様子を見る必要があると考えておりましてな。”間引き”のついでに偵察をしようと思っておるじゃ。」
「ほほぉ……チョトー地方の解放とは大きくでましたな。……冒険者の一党を向こう岸へ渡すことはございましたが、そこまで
フォッフォッフォッと笑い声を上げるが、ケーマの瞳は笑っていなかった。値踏みをしているような視線である。それを理解して、アイルは続けて答えた。
「……私は個人的な理由で、名声を上げる必要があります。……
「……その個人的な理由とやらを聞かせて頂いても宜しいかな?」
アイルが、皆に視線を向ける。それに、皆が頷くことで応えた。それを見たアイルは、今回の理由を順番に説明をしていく。有力者の
それを聞いたケーマは、白髯を撫で付けながら
「……お主らは、ワシらの
「……残念ながら。しかし、辺境伯からあなた方の話が出なかったのは、その出自に関係しますか?」
アイルが代表して答えた。それを聞いたケーマは一つ頷き、ソーヤが続けて答えた。
「……ツーシュウ家は、チョトーに
「……
「……
ソーヤは手を固く握り締め、
「……辺境伯軍は守れなんだ……。故に、ワシらは
「それに、辺境伯軍は二十年
ソーヤはアイル達五人に厳しい視線を向けた。それはそうだろう。二十年。それは
「……今、あなた方に
アイルはその言葉を口にするとともに、ケーマ、ソーヤ、イーナの瞳をしっかりと見つめた。三人も、アイルの瞳をしっかりと見つめる。そして、ケーマが立ち上がり、アイルの手前まで進むと、改めて胡座を組み直した。
「……アイル殿。頼みがございます。……イーナ、隣に来なさい。」
ケーマの隣に、呼ばれたイーナが並ぶように座った。黒髪に黒い瞳。黄色い肌。髪を後ろに、馬の尻尾の様に
「ワシら”青鮫党”は、辺境伯軍に
そう言って、ケーマはアイルに対して頭を下げる。イーネもケーマの動きに合わせて頭を下げた。それを見たアイルは、二人に頭を上げるよう伝える。
「……お二人とも、頭をお上げ下さい。……イーネ殿。あなたはそれで宜しいのか?どなたか意中の方はおりませんか?」
「……意中の殿方はおりません。お
「これ、イーネ!」
「……ケーマ殿、構いません。俺で叶えられることであればよいのですが。」
「簡単な内容です。」
イーネはそう言うと立ち上がり、アイルを見下ろして続けて言った。
「私とお手合わせをお願いいたします。」
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