Session02-09 フォルミタージ工房での会合
「……で、じゃ。どういった事になっておるんじゃ?
バーバラの説明を求める声が、フォルミタージ工房ハルベルト支店の支店長室に響き渡った。
”
そこに、全速力で駆けてきたバーバラとフィーリィが、片方は息を切らせながら、もう片方は
「……まず、彼女を紹介させてくれ。……マーリエ・オズワルド・フォン・レンネンカンプだ。新しい俺の嫁だ。」
「マーリエ・オズワルド・フォン・レンネンカンプと申します。バーバラ様、フィーリィ様。今後とも宜しくお願いいたします。」
アイルの紹介を受けて、マーリエがバーバラとフィーリィに対して、
そのやり取りを見たアイルは、改めて、今回の一連の流れを説明していく。孤児院へ寄付に行った所、院長をしていたマーリエに出会ったこと。アイルが
「……いやぁ何というか、バーバラ……
「……言うな、ゴルド
「しかし、私の言った通りになりましたね。」
ふふふと
「言った通りとは、どういう事なんですか?」
「”彼女に
「……アイル君の評価をするのに、どうしても別の人の意見が聞きたくてね。フィーリィさんに評価して貰ったんだ。……
「……ううう、弁解の余地もない。」
そんなこんなと話していると、副支店長が辺境伯が到着し、支店長室の前まで案内していることを報告してきた。それを聞き、この場にいた全員が席を立つ。それを見た副支店長が
「……オズワルド・クリスチアン・フォン・レンネンカンプだ。
オズワルドは名乗ると、軽く頭を下げた。地位的な問題で、
「……アイル……か!」
アイルの名を
「……色々と話もあるでしょう。とっておきのお茶を出させますので、まずはどうぞ、席へお座りください。辺境伯様はこちらの席をお使い下さい。」
ゴルドは、自分が座っていた席を立ち、オズワルドを
「……六年振りだな。アイル。」
オズワルドは、アイルを見ながらそう言った。最後に会ったのは、マーリエの九歳の誕生日が最後だった。誕生日のプレゼントを渡した後、「マーリエを嫁とするならば、強くなくては認めんぞ!」と怒った振りをしながら、
「……ご
その言葉を言うと共に、涙をボロボロと
「
オズワルドには今の今まで、アイルの事が噂でも伝わって来なかったのだ。アイルの父であるコンラートからは、
「あの時は、まだ私の胸の辺りの
そう、自分の子どもの成長を喜ぶように、感慨深げな声を上げる。そのオズワルドの姿に、ブルズアイがわざとらしく
「……すまぬな。……では、改めて経緯を聞かせて貰いたい。」
「承知しました。まずは……。」
オズワルドに促され、アイルが順番に答えていく。
一週間程前に、ここにいる仲間と一党を組んだこと。初の依頼を完遂したこと。徒党を組んだこと。寄付のため孤児院へ赴き、マーリエと再会したこと。狂言誘拐に出くわしたこと。首謀者を捕まえたこと。そして、自分が”
「……マーリエをハーレムに欲しいと言うのか?」
腕を組み、目を閉じてアイルの言葉を聞いていたオズワルド。そのオズワルドが目を閉じたまま、質問をする。
「はい。マーリエを娶るために、俺は冒険者として名声を得て見せます。マーリエ一人を愛することは約束できません。ですが、俺はこの場にいるハーレムのメンバーと一緒に、平等に愛して見せます。後悔はさせません!」
「……マーリエは、それで良いんだな?」
「……お父様。私はそれでも、アイルの
「……ふぅむ。」
オズワルドは考え事をしているのか、そう一言口にした。娘の気持ちは重々承知している。だが、今のアイルのままでは降嫁するとしても、釣り合わない。そのため、考えているのだ。
「レンネンカンプ辺境伯殿。ご提案があるのじゃが、発言しても良いかの?」
「……バーバラ殿だったな。マーリエがアイルのハーレムに入るのであれば、
「ありがたい。では、改めてオズワルド殿。あくまでも我らの計画ではあるが聞いて貰いたい。……実は。」
バーバラは、自分たちの計画をオズワルドへ順番に説明していった。自分たちのランクを上げること。徒党に人材を集めること。そして、チョトー地方の解放をおこなうこと。その説明を受けたオズワルドは、最後の話のタイミングで片眉をピクリと動かした。
「……チョトー砦近郊にある”
「……確かに、今まで何度か解放をしようとしたが、”迷宮”を攻略できないことで失敗しているのは確かだ。……それを、君たちが
「成します。」
アイルが断言をした。その言葉の力強さに、オズワルドは両目を見開いた。オズワルドが目を見開いたのを見たアイルは、その両の
「俺の目的の為には、成す必要があります。そのために、俺と一党と徒党は、準備をし、
その力強い言葉に、バーバラはニカリと笑みを浮かべ、フィーリィはニコリと微笑み、ピッピはヘヘッと鼻の頭をこする。ルナはうんうんと頷き、マーリエはそれができると信じているのか用意された茶を味わいながら口にするのだった。
「オズワルド殿。”迷宮”を攻略し、チョトー地方の解放に一役買ったとなれば、
「……わかった。そこまで考えて、本気で攻略すると決めているのであれば、私から言うことはない。……マーリエを救った功をもって、マーリエとの婚約を許可しよう。」
「お父様!」
「……あくまでも、婚約だ。正式にアイルの元へ嫁ぐのは、チョトー地方を解放した時だ。それまでは、節度を持った付き合いをするようにな。……くれぐれも子を生むということにならぬように。」
「お父様!?」
婚約の許可に対して、マーリエは驚きと歓喜の声をあげた。しかし、続いた言葉に恥ずかしくなったのか顔を
「……アイル。お前なら分かってくれると思うが……孤児院の院長をさせているが、マーリエはレンネンカンプ家の長女である立場は変わらない。結婚なり降嫁なり、他家へ移った後に子を成すのは問題はない。
オズワルドの言葉に、アイルは
「……うむ。そこまで確認ができれば私から言うことはない。……ゴルド殿、夜分に申し訳ないが、彼女達の首についた印を隠せるチョーカーを
「ご利用、ありがとうございます。では、担当者にいくつか持って来させますので、皆様に見て決めていただきましょう。」
そう言って、ゴルドは担当者に指示を出すため、支店長室を出ていった。それを見送った皆は、用意されたお茶を口にし、一息入れる。そして、オズワルドは一言、アイルに対する気持ちを
「……アイル。お前を”
「……俺も、”
「……ままならぬな……。……まぁ、”義息子”と呼べるようになっただけでも
しみじみと語り合う二人。六年の
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