亖話 旅と少女と(上)

旅というのは気楽に見られがちだが、実際はそんなものではない。

というのも、何もわからずに適当に動くといずれ体力が底をつく。

ましてやこの世界には「魔物」もいる。

俺がいた日本では旅をするにはもってこいの地形だ。

中央を縦断。海岸沿いを曲線上に。列車、電車。鉄道旅もあるし、海の旅もある。

ただこっちの日本列島はそうにもいかない。

四国に砂漠があったり、阿蘇は死火山だったり。

この過酷な環境ではちょっとした[ミス]が命取りになる。

だからといってこの状況を見過ごすことができるほどひどい人間ではない。

見過したら「外道 偽善者」という二つ名をもらうことになるであろう。


村のみんなのために旅に出て2日目。

砂漠を歩いていたときにとある「軸」が交わる。

夢の中で1回死んでいた?少女だった。

軽度の熱中症の症状がでていた。

放置してもよいのだが…

フラフラと歩く様子を見て放置はできなかった。

「大丈夫か?」

この問に彼女は首を横に振ろうとして倒れそうになった。

放置したら1日もしないうちに死んでいたのかもしれない。

かなり体力を消耗していた。

「マリー、彼女任せていいか?」

「良いわよ。何をするつもりかしら?」

「ちょっとだけ待って。ほんの一瞬だけ。

歪め歪め。時間を歪め刻の進行を減速すべし。一刻減速スローカウンティングタイム

今の世界の1秒は俺の1分だ。

例えるなら猶予1フレームのゲーム(俗に言う1/60s)の技を1秒かけて成功させることができる。

そして世界の1分。1時間経った頃。時間をもとに戻した。

オアシスを探したのだ。

「南西方向に300mぐらいにオアシスがあった。」

マリーと一緒に彼女をオアシスまで運ぶ。

俺等は必死になって彼女を助けようとした。

オアシスについたときにはかなり危ない状況だったが彼女の白魔術と安静にしていたことにより死なせずにすんだ。

食べやすいスタミナ料理を3人で食べて何故熱中症になってまで歩いていたのか尋ねる。

「君は何故あの状況で歩いていた?」

「私は。城から追放された。」

ん?今『城』って言ったよね。

うん。言っていた。

「申し遅れました。私はエミリー・ル・シンカワ。秦川エミリーです。

秦川の第一王子と結婚した人です。」

「でエミリー。旦那さんの姿が見えないようだが?」

有名人でかつ国のトップに近い人だ。下手をすると国外追放おいだし確定事項である。

「彼はおそらく投獄されています。」

王子が?

「私達夫婦は亜人と人間を平等に扱うべきと考えています。

この考えは国王の意向を妨げるもの。私は追放。彼は戦って数に圧倒されていると…」

「歪め開け。我が望は転移丿戸。我を目標へ導き、天、使の支援と共、に人命を助、けよ。即興改変:亡命転移門」

俺は即興で改変した魔術を使う。

具体的な改変内容は、「許可したものしか転移できない。」というものだ。

「助けてくるからここで待て。」

浩弐こうじ、それは無茶よ!」

俺は心配してくれる声がする方へ手を振った。

沢山ある秦川の王城の内今回向かうのは王子が所有していた淡路の城である。

転移は双方向で使うことができるよう術者が消さない限り消えない。

くらがりの追跡者の如く、対象者ターゲットを探し見つけ出せ。対象発見ターゲットファインド

確かに地下牢に保護対象が見つかる。

『今魔術の気配がしたぞ!』

術は行使するたびに、気配を撒き散らす。

そのことに気が付き焦ったときに誤って二人も転移許可してしまった。

つまり背後にマリーとエミリーが居る。

マリーはこの世界に来たばかりのときに使った―

「歪め歪め。光を歪め認識を阻害せし。我と友を隠し給え。光学迷彩オプティカル・カモフラージュ

これで3人の姿は3人以外には認識できなくなった。

あくまで『姿』は。

『足音からして3人。割と良い生活をしている者でしょう。

特に1人は、かなり高級な靴のようです。まるでこの世界の物ではないような。』

学校指定のスニーカーを日常で履いている学生は多い。

おおよそ靴ぐらい親が買ってくれるのだが、「靴に慣れろ」というのがオチだ。

俺はいつもからブーツを履いている。

茶色で革のような模様がついており、脹脛ふくらはぎの半分ぐらいまである。

特注品のハーフブーツだ。

このブーツ実は日本の神社に生えている御神木が折れたものを削って

組み込んである。

そのせいなのか?この世界に来たときから一度も汚れたことがない。

いや何故か汚れない。

特注品である以上高級品だ。

…その声がした方へ向いて「うっさいハゲ!」と叫んだ。

そうしたら苦しむ声が聞こえてきた。

変な詠唱の完成?だ。

痛覚過敏化と音の振動波が合わさって偶然にも攻撃ができた。

痛覚に苦しんでいる敵を無視して地下牢へ向かった。


地下牢は3層構造になっている。

1層が盗みなど比較的軽い罪だ。

2層は殺人など非人道的な行為をしたものが入る。

3層は連続殺人犯、国家反逆罪などかなり重度の罪だ。

そして目的の彼は3層。扱いは国家反逆罪だ。


3層を目指して歩き続け、2層の階段まで来た。

その時だった。

「危ない!」

エミリーが俺等を突き飛ばし、庇った。

飛んできた魔弾は数が多くエミリーは傷つき倒れる。

魔弾が治まってから彼女のもとへ行ったが間に合わなかったらしい。

彼女は死んでいた。


俺とマリーが見た夢はまた現実化した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る