弎話 亜人と戦と

亜人の定義は様々である。

俺が居た世界の文芸作品でも

「ケモミミ~ゴブリン」だの「ケモミミだけ」だのいろいろだ

亜人は人間より強い。

人間は弱い。誰よりも弱い。

例え過ちを繰り返そうが…


村で彼女の家に済ませてもらって一週間経った頃の夕食時に事件は起こる。

食事は彼女と対面で机に向かって食べるスタイルだ。彼女は箸も使いこなす。

中世の欧州でありそうな世界だが、箸を使う彼女を見て「あのクソ親父!」と思ってしまった。

雰囲気ぶち壊し的に。

食事途中で彼女の耳が痙攣しているかのようにピクピク動く。

何かを聞いているみたいに。

「まずいわね。王軍が襲ってきたみたいだわ。」

これが何を意味するかわかる俺が怖い。

この世界では格闘技より武器の方が優位に立つことができるそう。

槍ならひとつの流派を皆伝まで登ったことがあるので行けるのだ。

いや皆伝じゃなければおかしいはず。だって【梅田浩明流うめだこうめいりゅう】うちの流派だ。

一時期の平和な時間で恋のアタックをしないといけないのだろうが、

何せ戦だ。命のやり取りだ。この世界では恋をする余裕がない。

広場に出て武器をとり構えた。

彼女に背中を預ける。「背中を預ける」というのは最高の友情表現の一つだ。

背中を預ける。つまり、見えないところを任せる。信頼がないとできないし、悪役なら斬り殺せるからだ。

ともあれ…

「後ろを頼む」

「あんたも守りなさいよ。」

彼女は片手剣。濶剣ブロードソードぐらいだろう。

それも両手持ち。いわば二刀流だ。

二刀流は盾を持てないために、面積が広い武器など以外は受け止めたり受け流したりすることはできないが、

ができる。

戦闘できるのは彼女と俺だけらしい。だが、10分程度で全員がノビていた。

そして敵を教えてもらった水属性の黒魔術で流す。

こうしてなんとか一回目の襲撃を撃退した。

「あれが精鋭部隊だったら二人だけで倒せるわね。」

「そうだな。」

「浩弐、夜の行…」

「せめて後1年ぐらいまとうよ。」

彼女とエッチなことをするのは気が引ける。

未成年だからとかではない。

俺に覚悟がないから、責任をとりきれる自信がないからだろう。

王族ならしていてもおかしくはない年齢だし。

「この村のみんなは戦えるの。」

何故戦えるのに戦わないのか。

「みんな『あたしの足を引っ張るから」って。」

足手纏いと言われると戦わせるのも…

「だからあたしはあんたと一緒に旅をしようと…」

「思いやりだよな?生き残るための。」

「あんたには解るのね。

そう、みんなが戦えないと私がここに縛られる。

逆に足手纏いになっているの。」

「出発は明後日でいいか?」

「ええ。あたしは、あんたと一緒なら、いつだって。」

翌日は二人してダラダラ寝転がって、亜人と人間の戦争について訊いていた。


地図が何処をどう見ても戦国時代ぐらいの日本の地図だった。

はじめに紀伊と大和ぐらいの位置にある大国の王が周辺の亜人を匿っていた国を滅ぼしていった。

彼らの仲間の数人はこのことをよく思わず四国をまとめて収めていたこの国に亡命した。

だが喜びも束の間。王が戦に負けた。

その国が亜人主義の国家だったので亜人に税をかけまくった。

結果今に至る。


ここは讃岐の付近らしい

その日は何事もなく終わった。


はずだった。

俺は夢を見ているのだろうか?

見知らぬ少女が倒れている。

夢の中の彼女が崩れるように膝をついた。

彼女は何回も脈を計ろうとしている。

少女は死んだようである。

…?あれは俺だ。俺が何かをしている。

死霊術ネクロマンシー?と高度治癒術の応用!?

これは蘇生だな。

夢の中の少女は突然いきなり立ち上がる。

ちゃんと人間として蘇生している。

「…じ。こ…じ。おき・・い。浩弐起きなさい!」

既に日が昇っていたようだ。

「あぁ悪い。起こさせちまったな。」

「それは良いわ。浩弐。夢の中で誰かを蘇生した?」

え?その夢は全く一緒の内容だろう。

「多分な。」

「良かった。あなたは優しいのね。」

「お、おう?」

突然のことで動揺する。

「マリー。通信魔法って傍受されるのか?」

「されるわよ。」

「計算できるよな?」

「あたしをなめないでよ。」

「じゃぁ…」

こうしてこの世界では使われたことのない人間ができる限界レベルの高度暗号化を教えた。

俺は勉強全般駄目だが運動とあと数学だけは何故か得意だった。

彼女も似たようなものらしい。

こうして俺等は旅を始めた。

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