弍話 彼女と村と
何故亜人は差別されるのだろうか?
人間じゃないから?否
魔物みたいだから?否
亜人が差別されるのは一部の人間が嫌ったから。
人間の自分勝手は時として世界を壊す。
地球では工業の発展によってCO2の排出量が増加し、冷蔵とクーラーのためにオゾン層を破壊し、
地球は人の手によって人が住めないようになっていく。
地球では人間の自分勝手が動物の種を絶滅させたことさえあった。
毎度のごとく話を戻そう。
亜人は人間の貴族が勝手に嫌い、勝手に追放し、勝手に奪った。
人間は奪おうとする。亜人は抵抗する。
これは三つ巴の戦争だ。
敵軍:人間絶対主義 自軍:人種的平等主義 敵軍:亜人絶対主義
俺等は人間と亜人を平等に扱うべきとする。
そのためには戦力の行使もしなければならない。
もし、その力が自分に払いきれない代償を与えようと。
「村長に旧の御主人様があたしを庇って死んだ事を伝えなければいけないわ。」
村長?何処の村に住んでいるのだろうか?
「あんたも来るわよね?」
マリーの質問に応えなくても大体の意思は伝わっているようだ。
「ま、ここに何時まで居ても苦しみが増えるだけだからな。」
俺は仕方がなく…というのは建前で。
「…あんた転移者よね?
この世界について教えてあげるわ。感謝しなさい。」
「マリー様」
「こ、こらー!」
いじるのも程々に村へ向かう。
転移者って事に気がついた。
つまりは誰かが転移してきていたと…
「あたしを庇った御主人様は転移者だったわ。
名前は…
俺が3歳のときに行方不明になった。
「あんたって御主人様に似ているわね。」
あぁ、やっぱりだ。
「
『
「へ?」
「あんたとうとう狂った?何も言ってないのに『へ?』って。」
「親父の最期の言葉が聞こえた気がした。」
霊体で話しかけてきたのか。思念通信の一種なのだろうな。
「…村に行くわよ。」
こうして村に向かった。
道中敵襲はなく彼女から親父について訊いた。
人種差別は許さないと誓ったそうだ。
村に日が暮れる前につくことはできず、結果的に野宿する。
そして野宿するための準備中に彼女が
「歪め歪め。光を歪め認識を阻害せし。我と友を隠し給え。
文脈から察するに局地的な空間歪曲を起こし、同時にかけた面子にしか視認することができなくなる。
その後は…
満足な食事はなかったが幸い缶詰があったおかげで助かったし、
草に寝るのも悪くないと思った。
そして俺は眠りに落ちた。
@@@ マリー
よく寝れるわね。
襲ってきても良かったのに。
ヘタレなのでしょうよ。
ってあたしは誰に向かって言い訳しているの?
解っている。自分の意識だ。
あたしは前を向かないといけない。
例えそれが自分の不幸に繋がろうと。
会ってまだ半日だけど、守ってあげないと。
この世界で16年生きたあたしが。
彼のこと好きなのかもしれない。
でも言うのが怖い。振られるのが怖い。
初恋なのかも。
俗に言う「彼氏いない歴=年齢」ってやつだ。
それは恋愛なんてする余裕がなかったからかもしれない。
@@@
朝起きたとき彼女は目の下に大きなクマを飼っていた。
寝不足気味なのだろう。
「おはよう。」
「お、おはよう…」
何故だろう。目を合わせてくれない。
俺は無意識に彼女を押し倒した。
「こ、
「俺が18になるまで恋人として付き合ってください。」
言った。言ってしまった。下手をすると会話ができなくなる恋の告白を。
「あ、あり、ありがとう。」
何故か泣き出した。嬉し涙なのだろう。
俺は立ってから彼女を抱きしめた。
…太陽が南東の空にあるぐらい。10時位だろう。二人で手を繋ぎながら村へ向かった。
「ここか。」
俺はかなり経済的に苦しい様な村に住む事になった。
この辺の領主は亜人と人間を等しく扱ういい人らしいが。
等しく守るにはかなりの力が要る。
肉体的にではない。精神的、経済的、そして何より信用が。
力不足はときに自分の仲間を苦しめる。
この村のように。
村についたのは15時を過ぎたぐらいだった。
「あたしは魔力適性を調べることができるの。」
「魔力適性?」
「黒魔術も白魔術も適性がないと使えないわ。
そして属性も人それぞれ。
あたしは白魔術なら全属性行けるわ。
空間歪曲は系統外ね。
あとは通信魔法ね
それ以外は無理だわ」
「俺の適性は?」
「黒魔術の全属性。
時空歪曲。次元歪曲。精霊行使。通信魔法。白魔術から外れた高度治癒術もあるようね。
あたしでも珍しいぐらいの多さなのに、あんた異常だわ。」
「二人でほぼ完璧な魔術大隊か…」
彼女はその後村長に報告し、食材を買って戻ってきた。
経済的には苦しいが食糧は自己供給できているようだ。
その日は彼女の家で大きなひとつのベッドで寝た。
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