2:開戦

残雪の言う「アグレッサー」とのちからくらべが決まってから数日。


場所はいつもの海岸。


アイレスとマーロンは手合わせを続け、その爪と本能を鋭く研いでいた。


そして、太陽が天頂を訪れるその時_


海岸には、アイレスとマーロンに加え、別の二つの影が有った。


「貴方たちが残雪のイチオシコンビ、ってことで良いわね?」

「無駄な挨拶は要らない。本題に入ろう」


無駄な力みが無くも堂々とした立ち姿は、ただならぬ気配を有していた。

それは空の王者、猛禽の迫力だけでなく、百戦錬磨の武人然とした威厳も含んでいた。

ヒトと接する機会の多かったアイレスとマーロンは、出会った瞬間からそのオーラを感じ取った。


本日、ちからくらべ当日。


「よろしくね、私はマーロン!」

「アイレスだよ。ゆったり気楽に...とは行きそうにないね」


向かい合う四人の間に、緊張の糸が強く張る。

そんな中、アイレス達の相手の内、白の軍服を着た鋭い目つきフレンズが口を開く。


「あら、自己紹介がまだだったわね。私はオオタカ。いつもクールに、がモットーよ。それじゃあ今日のルールについてだけれど、3回戦のちからくらべ。勝った回数の多い方が勝ちで、2回連続で勝った場合はその時点でそのチームの勝利とする。これでいいかしら」

「うん、残雪から聞いてた通りだよ。マーロン、良いよね?」

「Of course!!」


オオタカの説明にアイレスとマーロンが頷いたところで、4人の体はシャボン玉のような膜に覆われる。

フレンズ同士のちからくらべは、膨大なエネルギーを伴う激戦に発展することが多い。その際フレンズが重症を負わないよう、パークの運営が開発したシールドをつけることがルールである。差し詰め剣道の防具のようなものだ。そしてこのシールドが破壊された時点で、そのフレンズの負けである。


シールドの形成が完了した時、パッチリとした瞳をした白ブラウスのフレンズが自己紹介に入る。


「申し遅れた、私はハヤブサ。速さなら誰にも負けない。さあ、時間が勿体ない。早く始めよう」

「ゴメンね貴方達、この子はせっかちだけど悪気は無いの」

「気にしないよ。ボク等だって今すぐにでも始められるから」

「ウォームアップは万全よ!」


朝から体を動かしていたアイレスとマーロンは、既にスイッチが入っていた。

オオタカ、ハヤブサの二人も、海岸までの移動で体は暖まっていた。


チームは互いに、絶妙な間合いを保ち、

両者、戦闘準備万全。


オオタカが、試合開始前の最後の言葉を放つ。


「やる気満々ね、これだけ準備してくれてるなら...


...全力で相手しなきゃ無礼ね!」


「戦いにおける速さの絶対性を教えてやる!!!」

「そうしてよ。ボクらも手は抜かないから...!!」

「ミッション・スタート!!!!」


羽根と辺りの空気が弾け、全員の体が陽炎のように消える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る