2頁目 久々に夢の話
第7期3日。
本日のお魚料理:『いわし』のあひーじょ
本日のお肉料理:『ひつじ』肉のかれー
レシピ:頭の中
覚え書き
・『いわし』という魚は他の料理でも美味しいらしい。フライや煮付けなども今後試そうと思う。
・アヒージョに使うという『ばげっと』は夢界の硬いパンのこと。ストック―これはこちらの世界の硬いパン―で代用できるので、あえて夢界から持ってくる必要は無い。
・かれーには本来、もっと沢山のスパイスを使うらしい。次に作る時までに色々調べて集めておこう。
・夢界にも『ひつじ』は居るらしい。こちらの世界の羊族と角の形は似ているけれど、四足歩行で毛が沢山生えているそうだ。別々の世界で別々のものに同じ名前が付けられる。不思議なものだ。
さて、今日は昨日の夢についてだ。私は他の鳥族と違い、空を飛べない。大層な翼が背中に生えているのに。私は空を飛んで大地や海を渡る代わりに、夢を飛んで世界を渡る。私は夢で別の世界である夢界に渡り、そこで仕入れをするのだ。
大切な事は夢界の生き物達は皆、何も無い、事だ。混血が進みすぎて種の個性が消えてしまったのだろうか。いくら混血が進んでも、私達の世界ではまだ耳、尻尾、手などに種の個性がある。しかし、彼らは私達の種の個性の現れなかった部分を集めたような見た目をしている。挙句、私の翼を見て大騒ぎする始末だ。なので夢界では、私は翼を隠さなければならない。
しゃつやら、せーたーやら、ぶらうすやら。色々試したが、翼が透けてしまったり、変な形に曲がって痛かったり。どうも上手くいかず、困り果てていた時に着物というものに出会った。上手く翼を隠すことが出来るし、何よりカッコ良い。購入は一苦労だったが、その分紺色の綺麗な着物を手に入れることが出来た。まるで深い海の底のような美しさがお気に入りだった。
昨日気づいた事だが、仕入れの時によくお世話になる市場の方に紺色の着物の子、と覚えられていたようだ。夢界に行く時にはいつもこの服ばかり着ていたからだろう。このままだとこれしか服を持ってないように思われてしまう。しかも、店に立つ時も時々この服を着ていたので、意外とほつれや汚れも出てきてしまっていた。ちゃんと手入れはしていたつもりなのだが。
そういう訳で、新しい着物を仕入れのついでに購入する事にした。呉服屋にて雀色の市松柄の着物を発見し、買ってきた。今までの貯金を切り崩した価値のある、なかなか良い買い物だった。この着物に合うものをと、帯も「竹に雀」と呼ばれる文様の、新しいものを買ってしまった。新しい服を下ろす日が待ち遠しい。いつにしようか。早く着たいが、いそいそと下ろしてしまうのは何か少しもったいない気もする。
そういえば市場の方には紺色の着物で覚えられているんだった。新しい着物に変えたら私だと気づいて貰えないだろうか。肉屋のおじさんは気づかなさそうだ。それを奥さんが、
「全く、お得意様の顔も覚えてないんかい?」
と怒る姿が目に浮かぶ。
ああ見えて魚屋のおじさんはすぐに気づいて、
「着物変えたんか、似合っとるなぁ。」
ぐらい言ってくれそうだ。いつもあの人はお世辞が上手い。そんなことを考えて、着る服はいつもと同じ紺色の着物。
おやすみなさい。良い夢と食材を。
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