渡り鳥さんの異界料理店
てすら。
1頁目 新しいノートに変えました。
第7期2日。夢界―あの不思議な世界を私はそう呼んでいる―の暦で言えば、9月20日頃なのだろうか。向こうの話はよく分からないことの方が多い。
このお店を開いてからずっと書き続けてきた日記は今日で3冊目。2冊目のノートはまだ半分くらい残っていたけれど、開店1周年という記念日であるので、少しもったいない気もするが新しいノートに変えた。2冊目の後ろ半分は絵を描いて埋めようと思う。1つ目に描くものは何が良いだろうか。
やはり自慢のお店、『夢料理 小鳥さん』をスケッチするべきだろう。
色々バイトを掛け持ちしたけれどお金が足りず結局森の奥に作ることになってしまったこの店だが、森の中は静かで、やはりここに作ってよかったと思う。ここの景色に溶け込んでいるのも非常にお気に入りだ。業者の人には最近流行りの煉瓦を勧められたけれど、都会じみた派手な煉瓦造りのれすとらんよりも、温もりを感じられる木造の方が好きだったので、今のロッジのような見た目に落ち着いた。
店先にあるおしゃれな看板はレントさんとライハさんに描いて頂いたものだ。レントさんは開店当初から足を運んで下さっている方で純血の犬族。大きなお口と鋭い牙がかっこいい。デザイナーをやっていらっしゃるようで、私の誕生日に合わせて妹のライハさんとともに看板を作って下さった。ライハさんは書道家で、今のメニュー表も彼女に文字を入れて頂いた。彼女も時々お店に来て下さるのだが、とてもお話が面白く店中を大笑いさせてしまうこともある。
スケッチをするなら店内でも良いかもしれない。ドアベルは友人のタケルがくれた物だし、後からつけたカウンター席とか店の北側の壁に大きく飾られた絵とかひとつひとつのテーブルに置かれているオイルランプとか、ふと絵の題材を探すだけでも思い出が滝のように溢れてくる。
丁寧に全て書き起こしたいのは山々だが、1日分のページが埋まってしまいそうだし、それにそろそろ仕入れの時間だ。今日は開店記念日当日という事でお店を休みにしたが、明日からはお客様のためにキビキビと働く。1周年記念の新メニューも既に考えてあるし、あとは仕入れをするだけ。
おばあちゃんがくれた紫色の布製おまもりを枕元に置いておいた。これで準備は出来た。
おやすみなさい。良い夢と食材を。
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