凍った髪の音色 昭和の銭湯の風景 2

伺ったお話


 銭湯の入り方というのも作法があった、と。戦後すぐの小樽の話である。

 小学生を引率した教員が実地で銭湯の入り方を教えたそうだ。教室で予行練習をしてから、男女に分かれ貸し切りで臨んだという。この話をしてくださった山田さんは、わずかな期間だったがピアノの先生でもあった方だ。

 子ども同士6~7人のグループで風呂屋で大騒ぎで遊んだことがあったと。湯にもぐったり、泳いだり、湯をかけあったり、辺りを石鹸の泡だらけにしたりと、それは目に見えるようだ。お風呂屋さんから学校へ通報があっても不思議はないと察した。

 子どもたちをただ叱るだけでなく、きちんとルールを学ばせたお風呂屋さんと学校も素晴らしいとも。

 冬の銭湯の風物詩も興味深い。今のようにドライヤーがない時代。ただ手拭いでふいただけの髪は、帰り途にはパキパキに凍っていた。わざと拭かないまま凍らした髪は首を振ると、その音色が、えも言われぬほど美しく、この世のものとは思えなかったと述懐された。あゝ、私も聞いてみたかったな。今は、コロナで教会へ通えず、パイプオルガンの伴奏が流れてくる讃美歌を、リモートで、大声で歌っていらっしゃるそうだ。

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