映画が全盛だったころ

 昭和三十年代の後半も小樽では映画館が沢山あって、映画全盛時代の感があったように思う。

 映画館の前には人々がずらりと並んで待っていて、こんなに一杯人が入るのだと子供心にもたまげていたのを思い出す。ポスターも総天然色という記載があって、今から思うと時代が出ていたなあと懐かしさを感じる。

 三本立てなどというのもあって、夏ともなればお化け映画が立て続けに三本も上演され、それが定番だった。

 けれども、夕食を済ませてから祖母が良く連れて行ってくれたのは都通りや梁川通りにあった映画館であり、決まって所謂文芸ものだった。その頃、祖母は長く勤めていた仕事から退いて社交ダンスや旅行、浪曲などを楽しんでいて、私たち孫を映画にも連れて行ってくれたのだ。

 映画を見終わって外に出ると、通りには茹でとうきびとか茹でシャコなどの立ち売りが居て、新聞紙をガサゴソと鳴らしながら包んでくれたものだった。歩いて行ける所に映画館があり、帰りにはお土産まで買ってもらって幸せな子供時代だったなあと思い出す。




とうきび・・・とうもろこし

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