8.篠崎楓 病院(社会人)
宮前くんのことは心配だったけれど、すぐにそれどころではなくなった。
私はやっぱり限界だったみたいだ。
彼が山手線に現れなくなって一ヶ月程が経った頃、私は出張先で倒れた。
先輩に助けられて病院に運ばれて診察を受けた。
その後の問診で先生からは一言――「過労ですね」。
――知っているよ!
結局、私は会社をしばらく休ませてもらうことになった。
今は近所のお医者さんに隔週くらいのペースで通うようにしている。
「――これは奇妙ですね」
いつもどおりの内科検診。聴診器を当てた診察の後に血液検査、そして心電図検査。その結果を見た先生が首を傾げた。そしてガサガサと書類を漁り、看護師さんに言ってなにか資料を持ってこさせる。
「何か病気ですか? 最近は体調も整ってきて大丈夫になってきたと思うんですけれど」
「いいえ、篠崎さんの心臓は健康そのものです」
「じゃあ、……どうしたんですか?」
「いえ、本当に奇妙な話なんですけれどね。先程診察した男性の心電図と篠崎さんの心電図がですね、三〇秒近くに渡ってまったく一緒なんですよ。それはもう驚くくらいに正確に。計器の故障ではないかと疑うくらいに」
私はその言葉に弾かれるように顔を上げる。
「その男性って――宮前翔くん……ですか?」
今度は先生が弾かれたように顔を上げて、目を見開いた。
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