《第十四章》Mad
「全部思い出してくれたかな。といっても、記憶が欠け落ちているから、思い出すこともあまりないと思うけどね。」トワは何も言うことができなかった。目の前にいる人が、自分の父親で、息子を改造させて、そんな事実を認められるはずもなかった。「ということで、時間が無いんだよ、トワくん。すぐに収容所に戻ってもらうよ。」わからない。何もわからない。自分が普通では無くなってしまったことが、彼による影響で……
「ほら、トワくん、早く行くよ。」
自分は普通ではない、ではなんだ?人間では無いのか?今ここに立っている僕だけが、人間には部類されていない?「トワくん!早く来なさい!」違う、全ては彼が悪いんだ。ここまで僕が悩んでいることも全て、彼のせいで……!
「いいから来いって言ってんだろ!」
「うるせぇぇぇええええええええ!」
息切れが激しくなった。顔を上げて前を見る。
そこには、屋根や壁が全てどこかへ飛ばされたにも関わらず、平気な顔で立っている透がいた。
「残念ながら対策済みなんだ、君の圧を受けないようにね。」消えろ、消えろ消えろ消えろ、今すぐ僕の前から「消え失せろ!」
今度は電流を全力で流す。だが、それも彼には効かなかった。「トワくん、抗っても無駄だよ。」「うるさい!お前が…お前が僕を普通じゃない人間にしたんだ!僕の人生は台無しだ!お前によって僕の人生を捻じ曲げられたんだ!」
「トワくん、これは僕の計画だ。あくまでもこの計画は、僕が動かしている箱の中の事象にしかすぎない。君はこの運命から逃れられない。君は予想以上に成長してくれた。2人と出会って、心情の変化があったおかげで、能力が向上した。だが、君の自由行動時間はここまで。もう諦めなさい。」もう……ここまでなのか……。中々いい人生だったと思う。ただ、もうちょっと長い旅を、違う景色が見れる旅を……してみたかったな……。
「……はは……はははは……」トワはその場に膝ついて、そのまま倒れ込んだ。「2人とも、ありがとう。僕はいい人生だったよ。2人と出会えて、本当によかった。……ありがとう。」返事がない。2人も潔く僕を送り出してくれるのだろう。
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