《第十一章》close and open

「ここに……メランがいるのかな…」

2人は黒い大きな建物の前に立っていた。

Black Oblivion Abiding

壁にはそう書かれていた。「とりあえず、中入ってみる?」とセツナに聞いてみた。「いや、ちょっと待って。ここは、何かが違う。何か、不穏な空気を感じる。結構危ないかも。でも、この中にメランはいる。」「本当に?なんか全部知ってるかのように話してるけど……」「私の勘は結構当たるんだよーん。ね、信じて?」セツナ、僕には今セツナがいる。彼女なら信じれる。「……よし、行こう。」2人はゆっくりと、施設の扉を開く。すると中には、真っ黒な服を来た人達が大勢いた。そのうちの数人がぎょろりとこちらを睨む。「どうしたのですか」と研究員と思わしき人物が近づいてきた。セツナははっきりと言う。「人を探しています。」「誰ですか。」「青髪の男の子、メランです。」「……。」するとその研究員は黙り込んだままポケットに手を突っ込み、何かをしている。後ろで音がした。2人で後ろを振り返る。「……扉がロックされた…!?」「メランとか言うやつは知らんが、青髪の男の協力者だな。君たちを捕らえさせてもらうぞ。」研究員が急にぐっと近づいてくる。「……!セツナ!危ない!」トワは両手を突き出し、男を圧で吹き飛ばした。研究員は壁に押し付けられ、床に倒れた。「セツナ…!ここから逃げよう!……って…セツナ?」セツナは目をつぶったまま立っていた。「おい、セツナ!?」返事はない、どうするか。するとセツナがそのまま歩き始めた。奥へと向かっていく。「ちょ、ちょっとまって!」すると室内に警報が鳴り響いた。「これはまずい……」するとセツナが走り出した。「ち、ちょっと!?」状況が把握出来ない、追いつけない。というより情報を整理する時間がない。どんどん奥の部屋へと進んでいく。すると目の前から研究員の集団が迫ってきた。(セツナの方が速い……僕が後ろから圧をかけたらセツナまで飛ばしてしまう……どうしたらいいんだ……。)悩んでいるうちにもうすぐ近くまで来ていた。もうだめだ……。そう思った瞬間、目の前で猛烈な轟音が鳴り響いた。思わず目をつぶってしまった。目を開けた時には、迫っていた研究員たちが全員倒れていた。(何が起こった……?)セツナはずっとそこで立ち尽くしていた。近づいてみると、セツナは目を開いていて、目の前の光景に衝撃を受けていた。「まただ……また私は……」前に言っていた通り、記憶が無いのだろうか。「ごめん、トワ……私、勝手に進んじゃって…」「いや、いいよ。セツナが無事だったんだから。とりあえず、今は僕の後ろにいて。何があるかわからない。」「うん……。」再び2人は走って奥へと進む。更に研究員たちが出てきて、トワはまた圧をかけてとにかく吹き飛ばした。かなり体力を使う。1番奥の部屋まで着く頃には、トワはヘトヘトだった。「ここに……メランがいるのか……」トワは目の前の頑丈そうな扉をゆっくりと開けていく。ゆっくりと開けていく視界の先には、やはりメランがいた。真っ黒な部屋に1人、そしてメランの足が、鎖で繋がれていた。

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