《第十章》Awareness
2人はひたすら無言だった。あんなことが起きて、話そうと思っても話せない。トワはぼうっと空を眺めながら歩く。「ねぇ、トワ」「うわあ、あ、どうしたの。」「驚きすぎでしょ。」セツナは笑いながら言う。「あのさ、もしも自分が昔いじめられてて、そのいじめっ子が、自分の友達の兄弟だったら……どう思う?」「……どういうこと?」
「ふふ、おかしな質問だよね、やっぱなんでもない。」「……僕は別にどうも思わないかな。というより、その友達を大事にしようと思う。」セツナは立ち止まってこちらを見た。驚いているような顔だった。「なんで?」「自分がいじめられていることを解決しようとするよりも、今自分が感じている幸せを、もっと大切にしたいって、僕は思うよ。」「……へぇ……そっか。」セツナは少し笑顔になって、また歩き始めた。「ありがとね、やっぱり私、トワといる時間が楽しい。」「……へ?どうしたの急に……」「えへへ、言いたくなっちゃったから言っただけ!」そう言ってセツナはスキップをし始めた。まずセツナは何故、そんな質問をしたのだろう。その質問から、何を得たかったのだろう。そんなことを考えているだけで置いてかれそうだったので、今はただセツナを追いかけることに専念した。
ずいぶんと走った。セツナたちの視線の先には、建物が見えてきた。それは、2人が収容されていた施設のような建物で、とても、黒かった。
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