《第九章》Melancholy

深々と頭を下げている彼の姿に、2人は大変戸惑った。「あ、あの……どうしたの?」彼は頭を上げようとしなかった。何に、そして誰に謝っているのかが分からない。「お〜い?生きてる?」すると彼がやっと頭を上げた。「言いたいことは、それだけだ。」彼は悲しそうな顔をしていた。「え、ちょっと待って、理解が出来なかった。」トワも同じだった。「もう、忘れてくれ…」「え、説明してくれないの!?」「オレの名前を知りたいんだっけ。」「む、無視……」「オレは、、め、メラン…だ。」メラン……、その名前に聞き覚えは無かった。でも、彼の声だけは、何か引っかかるものがあって、心がモヤモヤする。

「私はセツナ、こっちはトワよ。」「トワ……」

彼はトワをじっと見つめた。(え、そんなに見られても……困る……)「それで、メランは一体何者なの?どうして私たちに謝ったの?」「……今は…言わない」「なんで〜?今じゃなかったらいつ言うの〜?」「……言わないって言ってるだろ…」「教えてよ〜」「………るせぇなぁぁ!お前たちに分かるわけねーだろこの気持ちがよぉ!オレにだって……オレにだって……言いたくないことがあるんだよ!」メランは途中で涙ぐみながら、必死に声を出していて、言い切った後にすぐ地平線の先へ、走り去ってしまった。セツナは何とも言えない顔で、その後ろ姿を真剣な眼差しで眺めていた。「お、追いかけないの?」セツナに問いかける。セツナはしばらく黙り込んで、その地平線の先を長い間眺めていた。「……ゆっくり追いかけよう。私にも悪いところがあった。後で謝らなきゃ……。」あんなに明るかったセツナが、急に変わってしまって、トワも、うん と頷く事しか出来なかった。そして2人はゆっくりと、重くなった足を先へ進めた。

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