《第七章》RED

「気がつけば、施設に収容されていたの」

セツナはどこか悲しそうな笑顔で、話してくれた。「とても赤かった。真っ赤な部屋だった。目の前には白い扉があって……それでね、何故か、私の右手だけが鎖で繋がれていたの。とても頑丈でね。私にはその理由が分からなかった。普通なら、両手……だと思わない?」

「まぁ、確かに、その方が頑丈だよね」

「でしょ?それでね、また記憶が無くなって……気づいたら鎖がちぎれてて、目の前に、人が倒れてたの……」どういうことだろうか。セツナは立ち止まった。もうだいぶ歩いていた。振り返れば施設もうっすらと見えるほどになっていた。「私、実はね……」

セツナは俯いて、小声で言った。

「意識が無い間に、体が勝手に動いていて。」

「右手だけに、とてつもない力を持っているの。」


「……右手…」

「そう、だから私は右手だけがとてつもなく頑丈に固定されていたの。だけど、そんな拘束すらも破壊するほど、私の右手は強い。それも意識が無いから、本当に自分が壊したのか疑ったし、目の前に倒れていた人が、私が殴ったからだとは全く思わなくて……」すごく怖かったんだ、とセツナは目にうっすらと涙を浮かべていた。拘束を破ったセツナは開いていた扉から部屋を出て、1人で施設から脱出したという。それも、所々記憶が抜けているらしい。

目に溜まった涙を拭き、セツナは言った。

「もうちょっと先に行けば、この草原のてっぺんがあるの!そこまで走ってこ!」

セツナはトワの返事を待つことなく走り出した。

確かにここから少し坂になっていた。走るのは得意ではないが、ちょっとぐらいならいいだろうと、トワもセツナについていった。

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