第8話 本部

怪物に遭遇し死にそうになったのにも関わらず、今はいつも通りの生活をしている。この生活がこれからも続くと思ったら伊織は怖いなと感じ始めていた。


しかし、もし自分に怪物を倒せる力があるのなら、大切な家族や周りの人たちを救えるのなら、戦って守りたいとも考えていた。伊織はそのことを考えながら生活をしていき、ついに若葉が迎えに来る土曜日になった。


「ついに来た。 どういう風に迎えに来るんだろう」


伊織は日差しが眩しい爽やかな天気の土曜日に、愛奈と共に朝食を食べていた。両親は急用が出来たとのことで、早朝から外出をしていた。母親が朝食を作り置きしてくれていたので、二人はそれを温めて食べている。


「お母さんたち突然急用って、何があったんだろう?」


愛奈が不思議そうな顔をして伊織に聞くと、伊織は俺もわからないと言うと、電子レンジで白米にウィンナーと目玉焼きが乗っている朝食を温め始めた。


「お兄ちゃんもわからないかー。 何か隠し事かな!?」


愛奈がソファーから立ち上がりながら叫ぶと、伊織が愛奈の頭頂部を軽く叩いた。愛奈はなんで叩くのと頭頂部を抑えながら伊織に言うと、伊織は秘密なんてないでしょうよと愛奈に言った。


「ごめんなさーい。 あ、私のも温め終わった!」


愛奈がそう言って電子レンジから朝食を取り出すと、二人はテレビを見ながら食べ進める。朝食を食べ終えて食器を洗っていると、インターフォンが鳴った。


「来たのかな?」


伊織がインターフォン前に行き、どちら様ですかと言うと岬若葉ですと、前にあったときの姿の若葉が画面に映っていた。


「篁伊織様はいらっしゃいますか?」


インターフォンの向こうにいる若葉が伊織がいるかと聞くと、対応していた伊織は俺ですと言った。


「伊織様でしたか、お迎えに上がりました」


お迎えに上がる。そう言われた伊織は、後ろにいた愛奈に行ってくるよと笑顔で言う。


「気を付けてね! 何かあったらすぐに連絡してね!」


愛奈のその言葉を聞いて、伊織はありがとうと言って鞄の中に必要と思われるものを入れて家を出た。


「お待ちしておりました。 準備は大丈夫ですか?」


伊織は大丈夫です言う。その言葉を聞いた若葉は車の中に入ってくださいと伊織に言う。伊織はその言葉に従って若葉が乗ってきた車の中に乗車をした。伊織はどこに行くんですかと若葉に聞くと、若葉は秘密ですと言う。若葉は車中にあるある特別なボタンを押すと、後部座席の窓と若葉との間に黒い壁が出現した。


「ちょ、ちょっと! これは何ですか!?」


伊織が壁を叩いて若葉に言うと、若葉は声のみで返答をする。


「ここからは国としての秘密なので、そのままでお待ちください」


そう言われた伊織は、それなら仕方ないかと思うことにした。


「スマートフォンも圏外か。 どんな道を通っているのやら」


伊織は背もたれに身体を預けて到着するのを待つことにした。扉が出現してから数十分が経過すると、次第に車の速度が遅くなったことに伊織は気がついた。


「速度が遅くなった? もうすぐ到着なのかな?」


伊織がそう呟くと、車が停車してドアが開いた。ドアの先にいたのは若葉であり、その周囲に黒いスーツに黒いサングラスを付けている男性が三人立っていた。


「ここが国家防衛機構の本部となります」


そう言われた伊織は、ここが国家防衛機構なのかと呟いた。しかし地下駐車場のような場所に黒い両開きの扉が一つあるだけであった。


「ここがと言われても、中には入れてくれるんですか?」


伊織のその言葉を聞いた若葉は、当然ですと言って胸ポケットから一枚のカードキーを取り出して、扉の右横にある機械に通した。すると、扉が開いで若葉と共に黒いスーツの男性たちが扉を潜って行く。


「伊織さんも来てください。 こちらですよ」


そう若葉が言うと、伊織はその指示に従って扉を潜って中に入っていく。

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