第3話 恐怖の出現
伊織は寄りかかっている愛奈を見つけると、お疲れと声をかけた。愛奈は伊織に声をかけられると、お兄ちゃんお疲れ様と笑顔で返事をした。
「あ、朝の怪物出現の通知焦ったよね! 大丈夫だった?」
伊織と共に歩く愛奈は伊織に怪物のことを聞いた。
「凄い焦ったよ! 近くに出たかと思ったら、離れた場所だったんだね!」
伊織がそう言うと、愛奈はこっちも皆怖がってたと言う。
「怪物は出現してもすぐに国の機関が倒してくれるからいいけど、実際目の前に出たら怖いわよね」
愛奈が小さく笑いながら言うと、スマートフォンが大きな音を出して鳴り響いた。その音は周囲にいる学生や社会人全員のスマートフォンから鳴り響いており、その音は怪物の出現を意味していた。
「えっ!? なになになに!? 一体何なの!?」
愛奈が慌てて戸惑っていると、駅前にいた伊織と愛奈の前の空間に亀裂が入った。
「なんで……空間が割れてるの……」
愛奈は理解が出来ないという顔をし、一歩後退をした。伊織はどうすれば愛奈を守れるんだと、それだけを考えていた。伊織は後ろにいる愛奈に走れと叫ぶと、その伊織の声を皮切りに愛奈を含めた周囲にいる人々は悲鳴を上げて走り出した。駅に逃げ込んで電車に乗ろうとする人、商店街の方に逃げる人など様々であった。
「いいから走れ! 死にたいのか!」
足がすくんでいた愛奈は、伊織の怒声によって涙を流しながら駅に向かって走り出した。伊織はその愛奈の姿を見ると、自身もその場から離れようとした。しかし伊織も駅の方に走ろうとした瞬間、駅前の植木の側に小さな女の子が倒れていた。
「だ、大丈夫か!?」
伊織が駆け寄ると、お母さんと呟いていた。一緒に逃げている際に転んで逃げ遅れたのだろうと伊織は考えた。
「多分駅の中に入ったと思うから、一緒に行こう!」
そう言いながら伊織が女の子の右手を掴むと、割れた空間から黒い兜と鎧を着ている鬼の仮面を被った武者が出てきた。
「こ、こいつが怪物……写真では見たことあるけど初めて見る……」
伊織は怪物の威圧感と恐怖を感じていると、伊織は女の子に逃げろと叫ぶ。
「で、でも! お兄ちゃんが!」
そう女の子が言うと、伊織は俺のことは気にするなと笑顔で言った。伊織は女の子を駅の方に逃がすと、目の前にいる武者に対峙をした。伊織は戦う術がないので、自身も逃げようと武者を見据えながら後ずさりをし始める。
「俺も逃げなきゃ……」
そう伊織が呟くと、少し遠くにいた武者が一気に距離を詰めた。
「なっ!? いきなり目の前に!?」
そう伊織が驚いて声を上げると同時に、武者が左の腰に差していた刀で伊織の身体を左肩から斜めに斬った。斬られた伊織は、自身の身体に起きたことが理解できていない。
「え……何が起きた……」
伊織は左肩に激痛と燃えるような熱さを感じたので、右手で左肩を触った。すると右手に赤い液体が付着した。
「これは……俺の血?」
顔の前に血の付いた右手を持ってくる。その血を見て自身の身体を見ると、左肩から右下まで斬られていることに気がついた。
「痛い……斬られたんだ……」
伊織の意識が消えつつあると、武者が再度右肩から斜め左に伊織の身体を斬った。伊織はその攻撃を受けると血を大量に流しながら地面に倒れた。駅のホームからその姿を見ていた愛奈は悲痛な悲鳴を上げて伊織の名前を叫び続けていた。
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