第4話 契約
「さぁ、到着だ。私は学園の結界内には入れないから、ここで降りなさい。」
ルーンは、学園の前にドスンと着地し、低くしゃがんだ。
「ありがとう。行ってくるよ。」
「そうだ、キラ。ちょっと待ちなさい。」
学園に向かおうとする僕に、背後からルーンが呼びかけた。
「なあに?」
「キラ。私と本当に友になりたいか?」
ルーンが急に声を落として聞いてきた。
なんだか怖いな。
こんな真剣なルーンは、初めて見る。
「うん、友達になりたい。」
「生涯の友として、今後一緒に生きる覚悟はあるか?」
「も……もちろん!」
なんだ?
この質問責めは。
ルーンの考えが読めない。
「よし、キラの覚悟受け取ったぞ。」
ルーンが翼を広げると、突然、ルーンと僕のいる場所に魔法陣が出現した。
すると、瞬間的に周りが真っ暗になった。
「ど……どこだ?ルーン、どこにいるの?」
真っ暗で何も見えない。
一体何がどうなっているんだ。
「まぁ、落ち着きなさい。」
何が何だか分からない。
こんな時は無闇に動くべきではないよな?
黙ってその場に立ち尽くしていると、突然、ルーンの雄叫びが周りに響き渡った。
すると、辺り一面に炎の明かり灯った。
眩しい。
目を凝らして周りを見渡した。
どうやら、どこかの遺跡の中に移動したみたいだ。
僕は赤い絨毯の上に立っていた。
絨毯の左右には、お宝といえるような、剣や鎧、宝石などが乱列している。
赤い絨毯の行く先を目で追うと、階段があり、階段を登った先にルーンが座っていた。
「さぁ、キラ。契約の時間だ。私の目の前まで来なさい。」
状況が飲み込めない。
首筋に汗が流れるのを感じた。
でも、このまま立っているだけじゃ何も変わらないよな。
生唾を飲み込み、恐る恐るルーンのいる方へ、一歩一歩と歩を進める。
階段の頂上に辿り着くと、ルーンの大きな顔が目の前にあった。
いつもと雰囲気が違う。
纏っているオーラがいつもより大きいのか?
適切な言葉が思いつかない。
なんとゆうか、
「よく来たな。いい子だ。」
「これは、どういうことなの?僕達はどこにいるの?」
どんどん、色んな疑問が頭に溢れてくる。
分からないことばかりだ。
「色々と質問はあると思う。だが、悪いな。今のキラにはまだ早いんだ。今は教えられない。もう少し大きくなって、色んな経験をしたら、いつかここについて知る日が来る。それまで待っていてくれ。」
「そんな説明で分かったなんて言えるほど、僕は大人じゃないよ!」
「すまないな。でも、無理なんだ。どうか分かってくれ。ただ、契約を交わすにはここに来なければ出来ないんだ。」
どうしていいのか分からない。
説明もしてくれないルーンの言ってることを納得しろなんて、無理だ。
どうすればいい?
自問自答してみても答えが見つからない。
「キラ!生涯の友となってくれるというのに嘘はないんだよな?」
「僕に何も教えてくれないのに、友達って本当に言えるのかな……」
「キラ、信じてくれ。お前が生まれた頃から、私はずっと側にいた。キラを見守り続けてきたあの時間に嘘偽りはない。」
確かに、物心つく時からルーンとはずっと一緒にいる。
側にいるのが普通と思っていた。
今までルーンが僕を裏切ったことは一度もない。
これは紛れもない事実。
僕を理解してくれる唯一の存在とも言える。
僕は、ルーンを失えば誰一人側にはいなくなってしまう。
そんなのは嫌だ、怖い……。
僕が一番恐れるもの、それは『孤独』。
選択肢は一つだったんだな。
「分かったよ、ルーン。何も聞かない。君を信じる!ただ、契約については教えてくれるかな?」
「感謝する。契約は、私とキラが真の友となる契約だ。裏切りは許されない。裏切ったら最後、裏切り者の魂は消滅する。だが逆に、裏切りさえしなければ、生涯互いを助け合うことができる。キラは私の力が使えるようになり、私に力を求めたいときは、いつでも私を召喚できる。」
なんて契約だ。
だけど、僕にとっては喉から手が出るほど結びたいと思う契約じゃないか。
この契約をすれば、ルーンは絶対にどこにも行かない。
「わかった。契約を結ぼう。」
言葉に応えるかのように、ルーンが火を吐いた。
すると、火の中から一枚の紙切れが出現した。
「その契約書に、火の魔法をかけてくれ。」
言われるがままに、学園で学んだ通りの魔法を発動させる基本動作を行う。
手を胸の前で合わせ、心の中で炎をイメージする。
そのイメージを大きく膨らませていき、手の中に火がある感覚を覚えたら、手を広げていき、そのまま、前に手を突き出す。
火柱が紙切れを覆った。
「や……やり過ぎた。」
「ガハハハハ。大丈夫、上出来だ。」
火柱の消えた後、見上げると、紙切れは何事もなかったかのように、はらりと舞い降りてきた。
「次は私の番だ。」
ルーンが、大きく口を開けると、目の前が炎に包まれ、契約書も炎の中に飲み込まれた。
炎が消えても、やはり契約書は無傷のようだ。
そのまま契約書を見つめていると、床に落ちていた契約書が命を宿したかのようにふわりと浮かび上がった。
その瞬間、契約書が黄金色の光を放った。
「契約成立だ。」
ルーンの言葉が辺りに響いた。
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