ウソツキハドロボウノハジマリ
佐藤みゆり
すぐ終わるから見てみて
ウソツキハドロボウノハジマリ
佐藤みゆり
─それが始まったのはある日の帰りの会で先生が言った一言からだった
日直「最後に先生の話です。先生お願いします。」
先生「はい。」
そう言って先生は表情一つ変えずに席から立ち上がった。
始めはいつもの『先生の話』だった。
先生「えー明日の連絡をします。1時間目の数学はテストなので... ...なので体操服を忘れないようにしてください。いいですか?」
皆「はーい!!」
日直「起立」
先生「ちょっと待ってください。話はまだ終わってません」
宿題などの注意事項だろうと誰もが軽い話だと思った。しかし先生が放った一言は思いもよらないものだった。
先生「この教室の中にウソツキが一人います。」
一瞬でクラスのざわめきが無くなり、静まり返った。さらに先生は続けてこう言った。
先生「ウソツキさんが出てくるまで、帰りの会は終わりません」
冗談だ。そんな風に思った人もいただろう。しかし先生は5分経っても、10分経っても目を軽く閉じたまま、根っこでも生えたかのように教卓前の椅子から一向に動こうとしない。先生の突然の発言に沈着した教室だったがいつの間にか批判の声がしていた。
A君「俺スイミングあるのに~」
B君「俺だって今日は塾だぜ~?」
Cちゃん「今日遊ぶ予定だったのにねぇ?」
Dちゃん「そうだよ~先生、早く返してよ~」
A君「もう行こうぜ~」
一人の男の子が後ろのドアを開けようとしていた。
ガチャガチャ
A君「んっ?開かねねぇぞ?」
後ろのドアはカギがかけれない構造になってるはずなのにどうして...
クラスは一段と騒がしくなった。
が、先生は動こうとも、口すら開ける気配はなかった。。
─20分後─
生徒達の会話も徐々に変化していった。
先生に対する批判から、犯人は誰か。という話題へと。
E君「誰だよ!」
Fちゃん「あんた?」
Gちゃん「なわけないでしょ?」
H君「なぁ、みんな」
H君「この中に嘘ついてるやつなんていねぇんじゃないか?」
その一言で時が止まったのかかのように会話は止まった。
A.ハッピーエンド
B.バッドエンド
A.ハッピーエンド(?)
E君「どうゆうことだよ、説明してみろ!」
H君「そのままの意味だよ。先生はこの"教室"にウソツキがいるって言った。つまり俺らの生徒の中にウソツキがいないとするなら...」
全員の視線が先生へ向いた。
勇気のある者が教室のざわめきを突き抜ける針のように言葉を放った。
生徒「先生!わかりました。ウソツキの正体が!ウソツキの正体は先生あなた自身ですね?ウソツキがいるるという嘘をあなたはついた。」
先生「...」
先生は目を開け少し微笑んだ。そんな気がした
後方から用務員の声がした。
「やっと開いたぜ。お前ら大丈夫だったか?」
全員がドアの方を見た。後ろのドアには汗まみれの用務員が「お前らどうしたんだ?」という顔でこちらを見ている。すると、一人の女子生徒が叫んだ。
生徒「みんな、みんな!前見て!」
そこには先生の姿はなく黒板に一言こう書いてあった。
"ウソツキハドロボウノハジマリ"
それは確かに先生の字だった。
翌日、先生は空き巣の容疑で逮捕された。
B.バッドエンド
E君「どういうことだ、説明してみろ!」
H君「そのままの意味だよ。先生は俺らのことをモテ遊んでるんだ。ウソツキなんてあたまっからいない。つまり、"僕が嘘をつきました"と、言うしかないんだよ。」
皆「..............................................」
B君「先生!僕が嘘をつきました!」
先生はゆっくりと目を開け、30分ぶりに口を開いた。
先生「では、"B君以外"帰ってください。」
先生が言い終わると同時に後ろのドアが開いた。
A君「(ありがとな!)」
Cちゃん「(まじ、助かる!!)」
B君「(いいってことよ!俺も塾あんまり行きたくなかったし!w)」
この教室にいる皆がB君にありがとう。そう思っただろう。
B君「あの、先生、ほんとは嘘なんかついてないんです。あの中に嘘ついてる人なんていませんでした。あれって先生のいたずらですよね?」
先生「何言ってるんですか?よく考えてみてください。つい今さっき嘘をついた人がいるじゃないですか」
B君「あっ...」
先生「そうです。"嘘をついたという嘘をあなたはつきましたよね?"」
ニヤッと笑って先生はこう言った。
「ウソツキハドロボウノハジマリですよ?」
翌日、B君は空き巣の容疑で逮捕された。
END
ウソツキハドロボウノハジマリ 佐藤みゆり @sheep09190
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます