第7話

 後輩と、ちょっとだけ口論になってしまった。


 早く告白したらどうだと言われて、耐えられなかった。


 目の前。女の後輩が、しゃがんで泣いている。


「失礼しまっす」


 男の後輩が、入ってきた。


 すぐに、しゃがんでいる後輩のところに寄り添う。


 そのしぐさも、耐えられない。


「いいわね。カップルはそうやってすぐ、傷の舐め合いができて」


 言ってしまった。


 いらいらすると、すぐこうだ。


 だめだな、私は。


 こんなだから、好きな人との距離も、一向に縮まらないんだ。


 くそっ。


「すいませんでした。こいつがなんか、気に障ること言ったんすよね」


 男の後輩。女の後輩を立たせる。


「ほら。清価。あやまるんだ。先輩をたてなさい」


「ごめさな、ごめっ、ごめなさい」


「ほら。泣くな泣くな。たかが部活で」


 男の後輩。こちらにも謝るようにという、無言の圧力。


「こっちこそ。わるかったわね」


 しかし、止まらない。


「あなたたちにはカップルがいちゃつく場所でしょうけど。私には違うの」


 言ってしまう。また、良くないことを。


「分かってますよ」


 後輩。涙を拭ってあげてる。


「分かるつもりっす。俺だって、離空先輩とあと半年で別れるのは、つらいっすから」


「なにを」


「でも」


 後輩。ふたりとも、真剣な顔つき。


「つらいからってうやむやにしたら、一生後悔しますよ」


「わたっ、わたしも。賀名せんぱいには、しあわせになって、ほし、ほしいです」


「なによ。ふたりして」


「今、離空先輩は男子更衣室です。行ってください」


 断れない雰囲気。なにより、ちょっと、はめられたような感じがする。


「わかったわよ。行けばいいんでしょ。行けば」

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