第44話 体育館シューズがない
私の今日の予定は、学校の大事な説明会に行くことである。
案内プリントや筆記用具など、必要なものを準備して、カバンに入れていく。
忘れ物がないかを念入りにチェックして、時計を見ながら、そろそろ出発する時間かと思い、家を出る。
私は、余裕を持って家を出るタイプなので、のんびり歩きながら学校を目指した。
いつも、目的地には五分前までには到着するように心がけている。
今日は、大事な説明会なので、いつもよりも早めに家を出てきたため、十分前には着きそうだった。
これだけ、余裕を持って行けば、何かが起きても十分対処できるはずだ。
そして、いつものペースで歩き、思った通り十分前には学校に到着した。
今日は、体育館で説明会があるということなので、体育館の入り口を目指した。
入り口に到着すると、十分前にもかかわらず、大勢の人で混みあっており、脱がれた靴や、今から履くと思われる体育館シューズがたくさん置かれていた。
体育館シューズは、みんな同じデザインなので、名前を書いておかないと、人と間違ったり、間違われたりする危険があった。
そのため、私も、きちんと名前を書いていた。
私は、体育館の中に入ろうと、目の前の床に体育館シューズを置いて、履いてきた靴を脱いだのだが、人が多すぎて隣の人とぶつかってしまい、よろけてしまった。
早く、体育館シューズを履いてしまおうと、置いたばかりの体育館シューズの方に視線を戻すと、信じられないことに、なくなっていた。
自分の名前を書いた体育館シューズが、この一瞬で、なくなってしまったのである。
他にも、たくさん体育館シューズが置かれていて、名前が書かれているものや、書かれていないものがあったが、まさか自分の名前が書かれたシューズが、こんな一瞬でなくなってしまうなんて、予想もしていなかった。
私は、すぐに自分のシューズを探した。
なくなってから、そんなに時間が経っていないので、探せばすぐに見つかるだろうと思っていた。
しかし、いくら探しても、自分のシューズは見つからなかった。
たくさん置いてある、他のシューズに紛れているわけでもなければ、周りのシューズを履いている人の足元を見ても、私のシューズを間違って履いている人はいなかった。
一体、私のシューズはどこに消えてしまったんだろう。
時計を見ると、説明会が始まるまで、あと五分となっていた。
それでも、私は、自分のなくなってしまったシューズが諦めきれなかった。
ふと入り口の奥を見ると、廊下が続いていて、そこにもシューズがいくつか置かれていた。
もしかしたら、あの中に私のシューズがあるかもしれない。
こうなったら、なんとしても自分のシューズを見つけ出そう。
そう思うと、私は履いてきた靴を袋に入れ、靴下のまま、体育館の中に入った。
そして、廊下にいくつか置かれているシューズを一つずつ、自分のものではないか確認し始めた。
だが、自分の名前が書かれたシューズは、全く見当たらない。
何となく自分のシューズに、雰囲気が似ているものがいくつかあったのだが、よく見ると、名前が書かれていなかったり、違う名前が書かれていたりした。
そうこうしているうちに、体育館の会場では、説明会が始まってしまった。
廊下にあるドアから会場に入れば、説明会の話を聞くことはできるのだが、私は、自分のシューズが気になってしまい、気分は説明会どころではなかった。
それでも、やはり説明会の話を聞きに来たのが目的であるから、私は仕方なく、靴下のまま会場に入り、説明会に参加することにした。
しかし、シューズのことが気になって、話の内容は全く頭に入らなかった。
何とか、最後まで話を聞き終えた後も、私は廊下に出て、またシューズを探し出した。
結局、廊下の突き当たりまで行ってみたが、そこまでに置いてあったシューズの中に、私のシューズはなかった。
気が付くと、説明会に来た人たちは、ほとんど帰ってしまい、体育館の中は静かになっていた。
私は、最後にもう一度、シューズがなくなった場所である体育館の入り口を探そうと思って、入り口まで戻ってみた。
人が帰った後なので、置いてあったシューズの数はかなり減っていた。
それでも、誰のものか分からないシューズがいくつか置いてあったので、それらのシューズを一つ残らず確認していった。
全てのシューズを確認して、私のシューズが見つかったかというと、やはり見つからなかった。
もう、これだけ探して見つからないのなら、諦めるしかなかった。
説明会の話も、ほとんど頭に入らなかったし、シューズもなくなってしまうし、今日は何のためにここへ来たんだろう。
そう思うと、悲しくなってきたが、ずっと引きずっていたところでシューズは戻ってこない。
私は、履いてきた靴を袋から出して、今度はその靴を履くまで、しっかりと目で確認した。
そして、私は、その靴を、無事に履くことができた。
しばらくは、靴を履くときに、靴から目を離さないでおこう。
そう心に決めて、家に帰るのであった。
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